落札価格は予想をはるかに超えたNSX-R GT
2024年2月29日、ボナムズが米国フロリダ州のアメリアで開催したオークションにおいてホンダ「NSX-R GT by Spoon」が出品されました。2008年のマカオ GP ロード スポーツ チャレンジに出場し、クラス3位でフィニッシュしています。今回落札された価格は、日本レースファンとしてもじつに誇らしいリザルトでした。
英国で広報車だったホンダ「NSX」に価値はあるのか? 整備は行き届いていても落札されなかったには理由がある!?
ホワイトボディから製作が進められたモデル
1989年に誕生した「NSX」は、ホンダ初のスーパースポーツであると同時に、日本を代表するスーパースポーツとして世界に大きな影響力を及ぼしたモデルだった。一般的な家庭用ハッチバックのような快適さとイージードライブを保ちながら、世界のライバルに十分に対抗し得るパフォーマンスを発揮する。このクラスに新たなスタンダードを打ち立てたことは、NSXの大きな偉業と評してもよいだろう。
NSXが開発のプロセスにあったとき、F1GPの世界はターボによるパワー戦争の最中にあった。しかし、ホンダはNSXのパワーユニットに3LのV型6気筒DOHC 24バルブの自然吸気を選択した。そもそもこのエンジンは、ホンダの最上級サルーン「レジェンド」用に開発された2.7L仕様がベースとなるものだが、排気量拡大のほかに可変吸気バルブシステムのVTECを採用したことなどで、最高出力は5速MT仕様で280psを発揮。最高速の268.8km/h、そして0-96km/h加速6秒以下という数字は、当時ホンダがライバルとして意識していたフェラーリの「328GTB」や、その後継車といえる「348tb」に匹敵するものだった。快適性や人間工学、ドライビング・ダイナミクス、またビルド・クオリティといった点で、NSXはまったく別の次元にあった。
だがホンダのパフォーマンスへの挑戦はそこでは終わらなかった。1992年にはエンジンをさらに高精度化し、軽量化を徹底した「タイプR」を発表。1997年にはエンジン排気量を3.2Lに拡大し、6速MTとの組み合わせも実現するなどの(AT車は3Lのまま生産が継続された)マイナーチェンジを実施。2002年には再びよりスパルタンな仕様の「NSX-R」を発売し、最終的には2005年まで初代NSXの生産は続いたのである。
車重は980キロという驚異的な数字を実現
今回ボナムズが米国で開催したアメリア・アイランド・オークションに出品されたNSX-Rは、2007年にホンダ・レーシングから直接購入されたホワイトボディから製作が進められたもので、それは日本のレーシングチーム、「スプーンスポーツ」のレース参戦20周年を記念して特別に製作されたモデルである。
スプーンスポーツ代表の市嶋 樹氏が東京を拠点に活動するスプーンスポーツは、ホンダ・ブランドに特化したモータースポーツのトップコンデンターであり、またチューナー界のアイコンでもある。その市嶋氏が2007年モデルのNSX-Rでレーシングカーを製作しようと考えるまでに、長い時間は必要なかった。
スプーンスポーツのカタログに掲載されているパーツをふんだんに使用し、初戦となったマカオGPでは自然吸気のまま参戦したが、その後3Lエンジンに換装しシングルターボを搭載して440psを発揮。軽量化と剛性アップも同時に進められ、車重は980kgという驚異的な数字を得るに至ったという。左右のドアやダッシュボードなどはすべて軽量なカーボンファイバー製。アジャスタブル式のコイルオーバー・サスペンションやエアロパーツは、もちろんすべてスプーンスポーツ製のものとなる。
スプーンレーシングのカラーリングが鮮やかなこのマシンを入手できるチャンスは、やはり限られているだろう。今回ボナムスが提示したエスティメート(推定落札価格)は24万ドル~28万ドル(邦貨換算約3580万円~4170万円)。
スプーンレーシングの名はすでに世界的に轟いており、その実力を反映してか落札価格は予想をはるかに超える、36万8000ドル(邦貨換算約5480万円)にまで高騰した。日本のレースファンとしても、これはじつに誇らしいリザルトといえるのではないか。
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みんなのコメント
何の記載もない。ノーマルの3LnoNSX-Rですら距離少なければ5000千万以上してるよ。