国内コンパクトカージャンルに、最強の刺客がやってきた――。プジョーは、2020年7月より、新型「208」、およびピュアEVの「e-208」の日本市場での発売を開始した。
プジョー208は、欧州Bセグメントジャンルで、ルノークリオやポロ、といったライバルと大激戦を繰り広げている、大人気コンパクトカーだ。今回の新型は、母国フランスでは、2019年10月に発売開始されており、今年3月には、欧州カーオブザイヤー2020を獲得しているモデルでもある。
新型スバルXV 4年目の大幅改良! デザイン刷新 走りも熟成!
今回、ガソリンエンジン仕様のプジョー208に、公道試乗することができたので、その詳細をお伝えしていく。
文:吉川賢一
写真:PEUGEOT、ベストカーWEB編集部/撮影:平野学
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プジョーの意気込みを感じる
前型のプジョー208は、モデル末期でも、欧州市場において、年間20万台レベルで売れていた、爆売れコンパクトカーだ。それだけに、今回の新型で、失敗することは許されず、プジョーの意気込みを感じる仕上がりとなっている。
ボディサイズは4095×1745×1445(全長×全幅×全高mm)、ホイールベースは2540mm 旧型208に対して全長は120mm伸び、全幅は5mm広がり、全高は25mm下がった
今回のモデルチェンジでの注目ポイントは、グループPSAの最新プラットフォーム「CMP」の採用だ。従来比で約30kgの軽量化と、空力抵抗の低減、静粛性改善に、大きく貢献したという。
EVの「e-208」は、最高出力136ps、最大トルク26.5kgmを発揮する電動モーターと、容量50kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載し、一充電の走行距離は340km(欧州のWLTPモード)。
一方のガソリンモデルは、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーで5年連続選出されている、ピュアテック1.2L直列3気筒ターボエンジンで、WLTCモード燃費は17.0km/Lを誇る、という、こちらもなかなか優秀なクルマだ。
日産キックスのように、全グレードをEVにはせず、同じデザインで、ガソリンのベーシックモデルを用意した点も、顧客のニーズをしっかり捉えた、手堅い戦術だといえる。
欧州市場での2019年販売台数トップ10(出典:JATO) プジョー208は欧州市場にて総合6位、Bセグではクリオ、ポロ、フィエスタに続いて4位につけている
こんなのなかった!! 「3D i-コックピット」
新型208では、旧型208の可愛さのあるフロントマスクから、ライオンの3本爪をイメージしたフルLEDヘッドライトや、ヘッドライトから下に伸びるデイタイムランニングライトによって、すっきりとシャープなイメージへと進化した。
リア周りも、3本の爪をモチーフとしたテールライトと、左右ライトを繋ぐようにブラックのラインが張られていて、シャープなカッコよさを感じられるデザインだ。
プジョーの上級セダン「508」と同じモチーフのデイタイムランニングライトを採用 ひとめでプジョーのクルマだと分かるアイコンだ
旧208よりもルーフが下がったことで、シャープでカッコいい印象
インテリアは、異形ステアリングホイールの上端から覗く位置にレイアウトされた、メーターが特徴だ。
2層構造のパネルによって、立体的に見えるように表示した「3D i-コックピット」は、これまであったようでない、秀逸なアイディアだ。プジョーによると、このシステムによって、ドライバーは情報に対して0.5秒も反応時間を短縮する効果があるという。
ただ、筆者には、プリセットされたメーター表示の中には「これはいい!」と、思ったものが見当たらなかった。VWやメルセデス、BMWのように、高精細なナビモニターである性能は不要だが、オーソドックスな針表示が欲しく感じるのは、筆者がおじさんだからだろうか。
極端な異形ステアリングホイールだが、小径で扱いやすく、操作は違和感なく扱える 画面奥のモニターの疑似3D表示は面白いアイディアだ
まさに「猫足」と呼ぶのにふさわしい
走行性能に関しては、新型208の素性の良さが感じられ、非常にクオリティが高い。
1.2リッター直列3気筒ターボエンジンは、最高出力100ps、最大トルク20.9kgmと、まずまずの性能だが、8速ATのEAT8と組み合わせたことで、信号待ちからのゼロ発進シーンでも、高速道路での合流シーンでも、あらゆる場面で過不足ない加速をする。
猫足を上手に乗りこなすには、ちょっとした運転のコツが必要だ
また、軽量なボディ(1160kg)のおかげで、ちょっとした踏力であっても、ブレーキがよく効く。重量級のクルマを強力なブレーキで止めているような感覚とは違い、新型208は、クルマが軽やかに動き、キビキビしていて心地がよい。
高速直進性も高く、強めの横風を受けても安定しており、コンパクトカーではよくある、頼りなさは感じない。また、路面の継ぎ目や段差を超える際には、サスペンションがしっかりとストロークをしてショックを吸収するので柔らかさを感じる。
ただ、コーナーでのロールやブレーキングでのピッチングは、比較的大きめとなるので、ドライバーはそのつもりで、急ブレーキや急ハンドルを避けないとボディモーションが大きめに出る。
とはいえ、その状態をうまくコントロールするドライビングは、運転好きにとって楽しめる要素だ。絶妙なバランスにセッティングされたこの足回りは、随分と使い古された表現だが、「猫足」と呼ぶのがふさわしく、トヨタヤリスにはない「プジョーの魅力」だ。
高速直進性も高い。運転支援も標準装備されており、快適なロングクルージングができる
気になったのは、小回り性能だ。新型208は、旧型に対して全長が120mm伸びたものの、ホイールベースは旧型と同じ2540mmであり、最小回転半径の5.4mは維持している。しかし、この5.4mという数値は、コンパクトカーにしてはやや大きめの回転半径であり、試乗中も何度か「あとひと曲がり欲しい」と感じた。
おそらく、タイヤ外径と、パワトレユニットの大きさが、悪影響していると考えられるが、サイズの近いVWポロ(最小回転半径5.1m)や、トヨタヤリス(最小回転半径5.1m)と比べると大回りの印象があり、この点は、新型208の数少ない課題のひとつだ。
割高だが、その価値はある!!
新型208のガソリンモデルは、Allureが259.9万円、GT Lineが293万円、となっている(※最廉価239.9万円のStyleは受注生産のため除外)。
ストップ&ゴー機能付きのアクティブ・クルーズ・コントロールや、レーン・ポジショニング・アシスト、レーン・キープ・アシスト、また、Apple Car PlayやAndroid Autoは標準装備だが、ナビゲーションシステム(23万6500円)いれると300万円目前、という価格となる。
日本国内でライバルとなる、トヨタヤリスのガソリンエンジンモデル(145.5~192.6万円)、マツダ2ガソリンエンジンモデル(145.9~190.3万円)と比べると、価格面では100万円以上差があり、とても勝負にはならない。燃費面でも、ヤリスもマツダ2も、WLTCモード燃費で19km/Lを超えており、新型208は、とても及ばない。
だが、新型208の小径ステアリングならではの軽快さと、加速フィールの良さ、柔らかめの足、これらを意のままに制御するドライビングに魅力を見いだせる方にとっては、推しの一台だといえる。最新デザインの欧州コンパクトカーを乗りこなすには、少しだけ運転スキルが必要かもしれないが、それだけに購入後の楽しみは増えるだろう。
左奥が「e-208」 e-208は389.9万円~423万円と国産EVと戦える価格設定となっている(ホンダeは451万円~495万円、日産リーフは332万円~499万円)
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