■スバルのクロスオーバーワゴンは「働くクルマ」から始まった
スバルの自動車生産は、1958年発売の「スバル360」から始まりました。そして、1966年発売の「スバル1000」で、初の水平対向エンジンを採用し、その後水平対向エンジン+4WDというスバルの確固たるブランドを確立。
現在では「シンメトリカルAWD」という4WDシステムが世界の市場で高い評価を獲得しています。
なかでもスバルの4WDステーションワゴン(以下、ワゴン)は、いまのクロスオーバーSUVの先駆け的存在で、長い歴史があります。
そこで、歴代スバル車のなかから、4WDワゴンを3車種ピックアップして紹介します。
●レオーネ
スバル1000から始まった水平対向エンジンですが、これにパートタイム4WDシステムを組み合わせた初のモデルが、1971年に製作されたスバル「ff-1・1300Gバン4WD」です。
このff-1・1300Gバン4WDは、当時、東北電力から冬場の豪雪地帯での設備保守用に、乗用車タイプの4WD車が必要というリクエストにより作られたといいます。
そして、1971年には新世代モデルとして「レオーネ」が登場。セダンを基本として、クーペとライトバンをラインナップし、全車FFでのデビューでした。
1972年にはライトバンの「エステートバン」に4WD車を設定。ここから正式にスバルの4WDワゴンの系譜が始まります。
1982年に2代目レオーネのラインナップに5ナンバーのワゴン「ツーリングワゴン」が追加され、「レガシィ」へと続くクロスオーバー4WDワゴンシリーズが誕生。
スバルの水平対向エンジン+4WDというパワートレインを確立したレオーネですが、1989年に初代レガシィと1992年に初代「インプレッサ」がデビューすると、レオーネは1994年に生産を終了しました。
ツーリングワゴンの系譜は、レガシィとインプレッサによって引き継がれます。
●レガシィ グランドワゴン
1989年に初代レガシィがセダンとワゴンのラインナップでデビューすると、スキーブームという背景もあり、ヒット作となりました。
とくに、高性能エンジンを搭載した4WD車のツーリングワゴンは、高速道路での安定した走りと雪道などの悪路走破性能、大容量の荷室を有することでオールマイティに使えるワゴンとして、高い評価を得ます。
そして、1993年に発売された2代目レガシィは、初代からのキープコンセプトとしながら、動力性能や走行性能を向上。
1995年にはツーリングワゴンをベースに最低地上高を上げ、外装をSUVのような意匠としたクロスオーバーワゴンの「レガシィ グランドワゴン」を追加ラインナップします。
アウトドア志向を強調しながら、本格的なクロスカントリー4WDよりも高速走行性能に優れ、これまでにないジャンルのワゴンとなっていました。
とくに北米市場で「アウトバック」の名で販売されると、大ヒットを記録し、北米でのスバルブランドの地位を高めることに貢献。
レガシィ グランドワゴンはクロスオーバーワゴンというジャンルを確立した先駆者として、他メーカーに大きな影響を与えました。
■数少ない大人のためのワゴンへ進化
●アウトバック
現在、スバルのラインナップにおいて日本ではレガシィ ツーリングワゴンの販売は終了していますが、クロスオーバーワゴンの「レガシィ アウトバック」をラインナップしています。
エンジンは2.5リッター水平対向4気筒自然吸気のみで、トランスミッションは「リニアトロニック」と呼ばれるCVTが組み合わされています。
また、レガシィ アウトバックは最低地上高が高いSUVスタイルを継承する一方、2019年9月の一部改良では、雪道や砂利道など滑りやすい道を走行するときに使用する「SNOW・DIRT」。
深雪やぬかるみといったタイヤが埋まってしまうような道を走行するときに使用する「DEEP SNOW・MUD」のふたつのモードが選択可能な「X-MODE」を採用し、これまで以上に悪路走破性を高めています。
さらに、シーンに合わせて3つの走行性能を自在に選択できる「SI-DRIVE」や、スバル独自の先進安全装備「アイサイト」も標準装備されており、ドライビングプレジャーと安全・安心を両立。
かつてのレガシィのような高性能なターボエンジンや水平対向6気筒エンジンは搭載していませんが、大人のための落ち着いたワゴンに仕上がっています。
なお、北米では2020年モデルの新型アウトバックが発売されていますが、国内モデルのモデルチェンジについては、スバルからアナウンスされていません。
※ ※ ※
現在、ワゴンは国内メーカーのラインナップでは少数派です。そうしたなか、スバルはレガシィ アウトバック、インプレッサスポーツ、レヴォーグと、複数のワゴンをラインナップしています。
SUV人気が続いているなか、走行性能に優れたワゴンが見直される傾向もあるようで、ミニバンからの買い替え需要も見込まれます。
すでにワゴンの生産から撤退してしまったメーカーもありますが、スバル伝統の4WDワゴンの系譜は、まだまだ続きそうです。
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