この記事をまとめると
■2015年に登場した「ETC2.0」の利用率は高速道路を使用する全車両の約3分の1にとどまっている
高速料金はかつて50円単位で10年前から10円単位に変更されたって知ってた? そもそも単位が変わった理由とは
■ETC2.0の導入が進まないのはスマホの普及や車載器が高価なことなどが大きく影響している
■今後は自動運転車との通信手段など、ETC2.0の役割も進化するかもしれない
全体では増加中も乗用車では普及が進まないETC2.0
ETC2.0が世に出たのは、いまから9年前の2015年。その時点では、「ETCが早い段階でETC2.0に入れ替わっていく」と思った人が少なくないのではないだろうか。ところで実際はどうなのか?
国土交通省によれば、令和6年(2024年)4月のETC全体での利用台数は、全国で1日あたり約822万台にのぼる。これは全通行台数の94.9%にあたり、残りは料金所で現金やクレジットカードで通行料金を支払っている。
そして、気になるETC2.0については、約293万台で利用率は34.0%と、ETC利用台数全体の約3分の1にとどまっている状況だ。普通車以下(軽・普通)では、24.8%と低く、また中型車以上(中型・大型・特大)では70.3%と高いのが特徴だ。
さらに詳しく、NEXCO東日本・中日本・西日本、首都高速、阪神高速、本四高速それぞれの全車で見てみると、首都高速が42.2%ともっとも利用率が高く、NEXCO西日本が29.3%でもっとも低くなっている。
また、令和5年度(2023年度・同3月末時点)のETC2.0車載器普及数(セットアップ件数)は累計で1142万7969台だ。
このように、ETC2.0は2015年の導入時点から基本的には右肩上がりで普及してきてはいるものの、普通車では普及がいまひとつ進まないのはなぜだろうか?
筆者は2015年のETC2.0導入の際、国土交通省の担当者らと、霞が関の同省からマイクロバスに乗って首都高速周辺でETC2.0に関する詳細な説明を受けた。また、その後も段階的に、ETC2.0の普及実態や、新しいサービス導入の時期に国土交通省を取材してきた。
そうした経験のなかで、ETC2.0普及の現状を考えると、もっとも大きな影響はスマートフォンにあると思う。
今後は自動運転車に対応した進化が期待されている
そもそも、ETCとは、エレクトロニック・トール・コレクションシステムのことだ。トールとは、通行料金を意味するので、ETCとは自動で通行料金を収受する仕組みである。そのETCに、料金収受以外の目的で、道路側とクルマとの通信であるさまざまな路車間通信機能を負荷したのが、ETC2.0だ。
ETC2.0のメリットとしては、さまざまある。
前方での事故や落下物、またトンネル先などで豪雨や積雪などに対する注意喚起。
東京や名古屋では、都市部の渋滞を避けて外環道などに迂回すると料金が2割引きになる。
一部の道の駅を利用した際、高速道路を降りて同じ方向で再び乗っても初期料金が発生しない。
といったものがあるのだが、本来はより多くの路車間通信を利用した機能を実装することが考えられていた。
ところが、クルマと道路という限定した通信ではなく、スマートフォンから社会全体とつながることでさまざまなサービスを車内で享受できるようになり、またスマートフォンと車載器との連携も可能となった。
さらには、車載器もAI(人工知能)を活用した音声認識技術が発達するなど、ETC2.0初期開発当時では想定していなかったような次世代のコネクテッド技術の進化がめざましい。しかも、ETC2.0車載器の本体価格はETCより割高だ。
一方で、高速道路で自動運転トラックの社会実装が近く始まり、それにより高速道路に設置される路車間通信機器から得た交通関連情報を、自動運転車では普通のクルマに対してもいち早く走行中の車両に伝える手段としてなど、ETC2.0の役割も今後、進化することが考えられるだろう。
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