ジムニーの約半年後に登場したバモスホンダ
1970(昭和45)年10月、ホンダから独創的なクルマが発売されました。その名も「バモスホンダ」。ドアを持たないオープンカー式の軽トラックモデルは、小さな軍用車のようにも見えました。
しかし同年の春、スズキからは超画期的な軽四駆「ジムニー」が発売されていました。日本の険しい山岳エリアや積雪地域でも、四駆を生かしてどんどん入っていける構造で絶大な支持を得て、今日まで続くロングセラーとなっています。
バモスホンダはジムニー登場の約半年後に、ジムニーと似たような実用性やレジャー性をウリに登場したわけですが、四駆モデルが存在せず、その個性的な見た目によってユーザーを限定させてしまう結果となり、わずか3年で生産終了に至りました。
ただ、この強い個性と遊び心によって、今なおコアな人気を誇っており、中古車市場では250万円オーバーで販売されている例も。筆者個人的にも、旧車の中では「一番乗りたいクルマ」です。
バモスホンダのボディタイプは1種のみですが、仕様としては2人乗りシートモデルの「バモス2」、4人乗りシートモデルの「バモス4」、荷台部分を幌で覆う「フルホロ」の3種があります。ボディにドアがなく、乗り降りするスペースにガードパイプが装備された姿は、まるでゴルフ場のキャリーカートか遊園地の遊具のようにも感じます。
また、特に運転席周辺のハンドル、シフト、アクセル周り、計器・スイッチ類は実にシンプルなもので、そして剥き出しです。小さなボディにして、なかなか無骨な1台でもありました。
なお基本シャーシー、エンジン、サスペンション、フロアバンは、ホンダが先立って生産していたTN360をそのまま流用しています。
これはあくまでも筆者個人の憶測ですが、ジムニーの登場に衝撃を受けたホンダが「負けてはなるまい」と、在庫のあったTN360の素材をベースに猛ダッシュでボディを作りあげ、ジムニーの約半年後にリリースしたのではないかとも想像してしまいます。
円谷プロの特撮ドラマに採用されたバモスホンダ
1972(昭和47)年から放映されたテレビドラマ『太陽にほえろ!』の中には、萩原健一演じるマカロニ刑事が若者らしいヤンチャな振る舞いで、初代ジムニーを乗り回すシーンがあります。
一方のバモスホンダは、円谷プロダクション制作の特撮ドラマ『ジャンボーグA』の劇中で、「バモスI世」「バモスII世」として、その名を残しつつ登場。ただし、一世を風靡する人気を誇った『太陽にほえろ!』に比べれば、円谷プロダクション制作とはいえ『ジャンボーグA』はどうしてもマニアックに映る作品であり、テレビでの採用がどれだけバモスホンダ自体にフィードバックがあったかは不明です。
バモスホンダの面影ゼロ 26年後の軽ワゴン「ホンダバモス」
生産終了から26年後の1999(平成11)年には、バモスホンダの系譜とは全く異なる新しいモデルとして、軽ワゴン「ホンダバモス」が登場します。一見ごく普通の軽ワゴンに見えますが、四駆仕様で5MTモデルもラインナップ。最新の安全装備をふんだんに採用する一方、RV志向のユーザー向けのオプションパーツなども用意していました。
このあたりは、かつてのバモスホンダの反省点を念入りに見直し、新しい軽ワゴンにできる限りの最新技術を全て取り入れたように映ります。結果的にホンダバモスは2018(平成30)年に生産終了になるまで、19年にわたって愛され続けました。
結果的に「ホンダ希代の珍車」
一般的には「珍車扱い」されるきらいもあるバモスホンダですが、この独創性や柔軟な遊び心は、まさに1960~1970年代半ばくらいまでの「ホンダ特有の遊び心」が反映されているように思います。
一方、近年のホンダは「モビリティの優等生」的な印象がさらに強くなり、他社には真似できないクルマやバイクを出す「ホンダ車ならではの楽しさ」は薄まっていると感じるのも正直なところ。
どうか、この時代にこそ、バモスホンダのような強い個性を感じる1台をリリースしてほしいというのが、古いホンダファンの筆者の強い願いです。それが初代バモスホンダのリメイク車だったりすると、さらに嬉しいのですが……。
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みんなのコメント
その頃は既にナンバープレートが大きくなった頃で昔の小さなナンバーってどうするんだろうと思っていた
すると昔の軽四輪に合わせて陸運局なども小さなナンバーが有るって初めて知った