日産のFR(前エンジン後輪駆動)車が、苦境に立たされている。現在、日産ブランドのFR車は、シーマ、フーガ、そしてスカイラインの3車種だが、どれもモデルが古く、一番新しいスカイラインでも、2014年2月登場と、すでに9年目に突入している。
フェイスリフトや先進安全装備のアップデートなどの小改良はなされてはいるが、インテリアデザインなどの基本設計の古さは否めず、定期的にフルモデルチェンジを行っているライバルメーカーとの戦闘力の差は広がるばかりだ。
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なかでも重症なのが、プラットフォームだ。日産のFRプラットフォームは、軽量化や動性能の面で、世代遅れとなっていると言わざるを得ない。新しいプラットフォーム開発が進んでいればいいのだが、筆者はそれも難しいのではないか、と考えている。本稿では、筆者が現時点予想している日産のFR車の今後について、お話していく。
文:吉川賢一
写真:NISSAN
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クラウンは6年おき、かたやフーガは12年目…
現在は、1980年代や90年代のように、4~5年おきにフルモデルチェンジを行う時代ではないが(軽自動車は別)、ライバル車は7~8年に一度はフルモデルチェンジをし、商品の鮮度を維持している。そう考えると、日産車のFR車のライフは熟成が極まった状況だ。
冒頭で触れたように、2014年2月にデビューした現行型スカイライン(V37型)は8年が経過。また、現行型のシーマ(HGY51型)は、2012年4月に登場なので、この4月で9年目に突入する。
2019年9月にビッグマイナーチェンジしたスカイライン インフィニティ顔からGT-Rにも似たフロントフェイスにチェンジしたことで、かつての日産らしさを取り戻したと言われる
日産のフラッグシップカーであるシーマも、(HGY51型)は、2012年4月登場なので、この4月で9年目に突入する
フーガにいたっては、2009年11月の現行型(Y51型)の登場から、2度のビッグマイナーチェンジを行いつつ12年目に突入。北米で販売されているフーガのインフィニティ版「Q70」は、2019年末に、とうとう販売終了となってしまった。Eセグメントの高級セダンが10年もモデルチェンジをせずに並べられていると、ブランド価値に悪影響を及ぼす、との判断からであろう。
インフィニティバッヂになったり、日産バッヂへ戻ったりと、あわただしかった現行フーガ
ちなみに、他社メーカーのモデルチェンジ状況と比較をしてみると、トヨタのクラウンは6年ごとにフルモデルチェンジを行っている。レクサスは、フルモデルチェンジこそ少なめだが、限りなくフルモデルチェンジに近いビッグマイチェンを4年おきに行ってきている。メルセデスやBMWも必ず、6年~7年でモデル更新をしている。
メルセデスは、Sクラスを起点にC、Eへと技術を落とし込んでいく流れが構築されており、次にどの車種がいつごろ登場するのか想像がつく
インフィニティがSUVに特化するワケ
インフィニティはこの10年、SUVに力を入れている。2016年にはミドルクラスSUVのQX50をモデルチェンジし、インフィニティブランドの稼ぎ頭に。2020年9月には3列シート7人乗りのSUV「QX60 Monograph(モノグラフ)」を公開。同11月には、2021年登場予定の「QX55」を発表、アメリカ、カナダで発売されたあと、他の主要市場へと導入される予定だ。
インフィニティのSUV特化については、世界的なSUVの流れに乗っている、ということもあるが、これには、「SUVであれば、古いFRプラットフォームではなく、比較的新しいDプラットフォームを使うことができる」という事情もある。
車体骨格剛性などに新たな知見を入れた新技術が盛り込まれていることに加え、エンジン縦置きFRのレイアウトと比べて省スペースで済み、海外にある現地工場でも製造ができ価格を抑えられるのだ(※FRプラットフォーム車は日産栃木工場がメインであり、そこから世界中へ輸出している)。
2021年登場予定の「QX55」、アメリカやカナダで発売されたあと、他の主要市場へと導入される予定だが、日本市場への導入の話は聞こえない
もはや新しいFRプラットフォームは必要ない!?
ここからは筆者の予想だが、日産は当面、既存のFRプラットフォームを流用し、戦っていくつもりであろう。そう考える根拠が「電動化への対応」だ。
現代のクルマにおいて、「電動化」による低燃費化とCO2排出量抑制は、もはや避けては通れない。現在のスカイラインは、3.0Lツインターボと、3.5Lガソリンエンジン+ハイブリッドグレードの2種類あるが、ハイブリッドであっても燃費は良いわけではない(WLTC総合燃費は12.4km/L、CO2排出量は161g/km)。
パワートレインを、例えば直列4気筒のVCターボに置き換えたとしても、ドラスティックな燃費改善は起こりにくい。
3.0L V6ツインターボエンジンは、走らせれば痛快な加速を得られるが、実燃費はひどいレベルだ
となると、欧州市場で2020年2月に発表となった新型キャシュカイのe-POWERターボ(1.5LVCターボを発電エンジンとした新e-POWER)のような、2021年のCAFE規制に対応できるパワートレインが必要になる。というか、そうしたパワートレインでないと通用しない。
スカイラインがFR車として生き残るには、「電動の後輪駆動車」となっていくしかないが、そもそも後輪をモーター駆動にしてしまえば、トランスファーやプロペラシャフト分のコストも不要となり、軽量化がなされ、さらなる燃費改善へとつながる。
つまり、トヨタミライの駆動方式のように、フロントで発電して(ミライは水素発電だが)、リアの駆動モーターを動かすほうが、合理的なパッケージングだと考えられる。フロントに駆動用モーターを追加すれば、4WDもたやすくできるはずだ。そう考えると、もはや新しいFRプラットフォームは必要ないのでは、という結論が見えてくるのだ。
欧州市場向けの次期キャシュカイ e-POWERターボとなり、環境性能と動性能は相当に高まるだろう
スカイライン、フーガ、シーマは電動後輪駆動車で!!
スカイライン、フーガ、シーマは、「大排気量のマルチシリンダーエンジンを積んで、なおかつ、後輪駆動でないとダメ」、と考える方もいるだろう。だが筆者は「電動の後輪駆動」になってもいいじゃないかと思う。日産らしく、電動技術を駆使して、古典的な後輪駆動のフィーリングを生み出せばよいのではないだろうか。
5年後、この3車種がそうした姿で生き残っているとしたら、日産車がより面白くなるのでは!? と考える。
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