純粋なモーターサイクルのEV(電動車)のみ・・・ではなく、ハイブリッド車そのほか様々な古今東西の「ローエミッション」な2輪車を紹介する連載企画。今回は日本でもヒットした前2輪、後1輪の3輪コミューター、MP3のハイブリッドバージョンをご紹介します。
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2021年5月26日に公開されたものを転載しています。
2006年のデビュー後、4輪免許で乗れるMP3は大ヒットしました!
近年はヤマハがトリシティやナイケンといった前2輪、後1輪のリーンする3輪車に力を入れていますが、このトレンドを生み出したのは2006年にイタリアの名門ピアッジオがデビューさせたMP3でした。最初に登場したのは125、250ccモデルで、2007年には400cc版も追加されています。
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2輪・平行四辺形構造のフロントエンドを持つMP3は、2輪車のようにリーンすることが可能で、2輪車を走らせる爽快さを転倒のリスクを減少して楽しむことができます。また低速時にロックすることで自立させることが可能なところも、大きな特徴です。
世界的に高い評価を受けたMP3は、日本でも2007年から導入され大ヒットしました。リーンする3輪車独特の走りの楽しさ、他の何物にも似ていない個性的なデザイン、そしてMP3シリーズのいくつかのモデルは4輪普通免許で乗ることができた・・・それらがMP3ヒットの理由でしょう。
日本でも250ccと400ccモデルが4輪免許で乗ることが可能な点が、多くのユーザーにウケた理由でした。しかし2009年道路交通法改正で、一部のトライクには2輪免許とヘルメット着用が義務付けられることに・・・。その一部のトライクに該当するMP3(および兄弟モデルのジレラフォコ)のセールスは、この改正によって減速することになってしまいました。
ヒット作MP3のハイブリッドは2009年にデビュー
現在もピアッジオのラインアップに残るロングセラーとなったMP3ですが、2006年デビュー以降125、250、300、400、500ccの各排気量版や、LT(ラージトレッド)やYourban、ツーリング、ビジネスエディションなどの派生モデルが生み出されています。
そんなMP3一族のなかで、2009年に登場した「ハイブリッド」は技術的に最も興味深いモデルでした。2008年のNYPD(ニューヨーク市警)による実証実験導入を経て2009年にデビューしたプラグインハイブリッドを採用する125モデルは、ガソリンモード、電気モード、そしてその両方を組み合わせという3つの走行モードを選択することが可能でした。
125cc版はICE(内燃機関)に、バッテリー駆動の2.6kW(3.5ps)の回生システム付き2.6kW(3.5ps)電気モーターを組み合わせていました。エンジンとモーター両方で走行した場合0~60mph(0~97km/h)加速は5秒と、125ccクラスながら250ccクラス並みの走りができるのことを、セールスポイントとして謳っていました。また電気のみの走行では、最高速度32km/hで18kmの航続距離となります。
300版も125版同様、ひとクラス上の走り・・・400ccクラスと同等の動力性能を発揮できるのがウリであり、なおかつICE版よりも燃料消費量とCO2排出量を50%削減できるという、環境に優しいプロダクトであることを、ピアッジオは強くアピールしていました。
ハイブリッドシステム採用のため、シート下の収納スペースが減少したのは難点でしたが、ヘルメットを入れることは可能です。また駐車に便利な電動リバース、先進のライド・バイ・ワイヤ、電動モード走行時に自車の存在を周囲に知らせる専用ホーンなどなど、充実した装備を誇る意欲作でした。
しかし周知のとおり、MP3ハイブリッドは後継機種が登場することなく廃盤となってしまいました。現実問題として、125cc版はガソリンエンジンだけで走ったときは、一般的な当時の同クラスのICEスクーターより走りが見劣りしました。ハイブリッド版MP3はハイブリッドシステムを搭載したことにより、ICE版のMP3よりもはるかに車体が重くなってしまったのです・・・。
確かにMP3ハイブリッドは環境に優しい乗り物でした。しかし多くの消費者は、環境よりもコストパフォーマンスを重視したわけであります・・・。2輪EVのオルタナティブとしての2輪ハイブリッドの研究は、現在もいくつかのメーカーが継続して行っています。もし今後ハイブリッド2輪車が商業的な成功をおさめたら・・・そのときには商業的には失敗したMP3ハイブリッドが、時代を先取りした先駆車として再評価されているかもしれません。
ピアッジオ MP3ハイブリッド300ie 主要諸元
内燃機関 水冷4ストロークOHC4バルブ278cc(ボア×ストローク 75×63mm)最高出力 18.2kW(25HP)/7,500rpm 最大トルク 27.5Nm(2.8kgm)/3,500rpm 電気モーター 同期式ブラシレス永久磁石モーター 電源電圧 空冷 三相交流 電動機制御 デジタル制御インバータ 電動機出力 2.6 kW (3.5 CV) 電動機トルク 15Nm 変速機 トルクサーバー付ツイスト&ゴーCVT エンジン制御システム Ride-by-Wire(ライド・バイ・ワイヤ)クローズドループ燃料噴射システム 排気装置 触媒コンバーター
シャーシ 高強度チューブラー・スチール製ダブルクレードル サスペンション 前 アーティキュレーテッド・クアドリラテラル ホイールアクスル 後 デュアルアクション油圧式ショックアブソーバー ブレーキ 前 240mm径ステンレススチール製ディスクx2 + 30mm径2ピストン2フローティングキャリパー 後 240mmステンレススチール製ディスク + 30mm径ピストンキャリパー リムサイズ 前 12x 3.00 後 14×3.75 タイヤサイズ 前 120/70-12 後 140/60-14
全長/全幅 2,140mm/760mm ホイールベース 1,490mm シート高 780mm 燃料タンク容量 12リットル(リザーブ1.8リットル含む)乾燥重量 257 kg
燃費 60km/ℓ(ハイブリッドモード2/3、電気モード1/3)CO2排出量 40g/Km(ハイブリッドモード2/3、電気モード1/3)排出ガス規制 Euro3
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
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