この記事をまとめると
■冬は日照時間が短いため長く日に当たっていたい■専用装備を満載するなどカブリオレは特別な1台■高級車など特別なクルマへのこだわりは1930年代から続く
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メルセデス・ベンツはセダン、ステーションワゴン、クーペ、そして最後にカブリオレでうまくモデルラインアップをまとめている。これは今日に限ったことではない。
今回はメルセデス・ベンツが何故、カブリオレ造りにもこだわるのかにスポットを当て紹介しよう。
ドイツの気候が大きく関係していた
メルセデス・ベンツは何故、「カブリオレ造り」にこだわり続けるのであろうか?
答えは「日光浴」。メルセデス・ベンツはドイツのシュツットガルト生まれで、日本の北海道よりも北に位置している。冬は日の当たる時間がとても短く、雪も多く降る。そこで、ドイツで長生きする秘訣は「日光浴」と言われている。太陽が出れば待っておりましたとばかり、冬の公園でも日光浴をしている太陽族をよく見受けられる。なるほど、ドイツでセダンのスライディングルーフ付きが多いのも当然と言える事実。しかも日本と違い、暑い夏でもフレシュエアーを楽しめる気候だ。
強いて、オールシーズンをオープンで楽しめるクルマを造るのがドイツ自動車メーカーの長年の課題だった。つまり、カブリオレこそがドイツ人生活に密着した「究極のクルマ造り」。結果、メルセデス・ベンツは昔からカブリオレが特命の「秘蔵っ子モデル」であり、専用カタログを必ず製作していた。
手元に、1950年代の170Sや220S/SEのカブリオレ(2トーンボディが特徴)のカタログがある。専属の有名な画家の特徴あるタッチでそのボディラインを鮮やかに、しかもカブリオレ専用のお洒落アイテムも描かれている。特筆は、セダンと違って、ドアを開けるとさまざまな隠しアイテムが満載されていること。
例えば、伸縮自在のシャフト付「ルームミラー」。オープン時には、分厚い裏地付幌がリヤに高く収納されるため、シャフトを伸ばして逆に立ち上げないとリヤが見えないからだ。加えて、クロームの枠で丁寧に囲い込んだ「サンバイザー」や「サイドウインドウ」、幌を開閉する粋な「ハンドレバー」、クロームのドアハンドル類とドアポケットのノブ、特徴あるクローム枠の3角窓(220S)など。この様に目に見えない部分のパーツに至るまで職人の匠で造られ、当時のオーナーは大満足。またその操作するスタイルが何ともお洒落で粋だ。従って、セダンとの差別化を果たす結果となった。
現在のメルセデス・ベンツカブリオレは、昔だったらオープンカーなら当たり前と我慢させられていた風の巻き込みを防ぐシステムにより「帽子が飛ばない」、「髪が乱れない」、「冬でも寒さ知らず」を実現している。
つまり、風の巻き込みを抑えるエアキャップを採用しウインドウ上部のディフレクターが空気の流れを上方に高く跳ね上げ、同時に後席後方のドラフトストップが後方からキャビンへの風の巻き込みを低減。ヘッドレスト下部から温風が吹き出し、寒い日のオープン走行も快適だ。
加えて、新素材や3層構造システムのアコースティックソフトトップが遮音性や耐候性性を向上させ、クローズ時の高速走行でもクーペ同等の静粛性を誇っている。
結果、メルセデス・ベンツのカブリオレは待望のオールシーズン・オープン走行仕様であることを鮮やかに演出し完成させているのだ。
高級クーペやカブリオレのクルマ造りの本質とは
元来、メルセデス・ベンツの高級クーペやカブリオレのクルマ造りの本質は、1930年代の黄金時代に花を添えた500Kや540Kだ(直8気筒、OHV、5Lと5.4L、ルーツのスーパーチャージャー付きエンジンを搭載し160hpと180hpを発揮)。そのクルマ造りには他社との差別化にあった。
当時、世界の高級車メーカーはエンジンやシャーシまでを自社で造り、ボディ・内装はオーナーのお好みに合わせて専門の「コーチビルダー」に再発注して架装させていた。しかし、メルセデス・ベンツは伝統的にボディのデザインから製造に至るまで一貫して自社ジンデルフィンゲン工場で造っていた。これこそがメーカーの「責任と自信」で、メルセデス・ベンツのクルマ造りの執念だ。
当時、最高級の540Kといえばダイナミックなフェンダーラインや流麗なテールラインが特徴で、厚い鉄板を手でなだめながら形造る手法は神業と言われた。加えて、特殊装備品は特別誂え品ばかりだ。内装やダッシュボードには、匠自らの手作業による「ウッドフェシア」が施してあり、シートは重厚な造りでドイツ特有の豊満な「ベロア生地」を存分に使用し、特別に織られた分厚い絨毯で豪華仕様! 世界中の富豪の要望に応えた正にメルセデス・ベンツビンテージの芸術品と言える。
事実、伝統的に時の上流階級に相応しいスタイル、構造、性能、装備品をつぎ込んで造られた。当時、高級なクーペやカブリオレのオーナーは生活にも余裕があり、セダンを含め何種類ものクルマをガレージ一同に並べ、用途に応じ使い分けをしていた。これこそ、オーナーの夢である。
また、使いこなすには乗る人もそれなりの「知識」、「マナー」、「装い」など、それ相当の覚悟が必要と言われてきた。
日本では「ベンツ」と呼ばれた昔、高級イメージが強かったが、今日ではメルセデスと呼ばれ、ファミリーカーを揃えた現モデルラインアップは一段と豊富になった。そこには昔のような格差はなく、多彩なファッションを着こなすライフスタイルに対応したモデルを導入している。
現在では言葉や動作などすべて自分の好みや学習をサポートする革新のインフォメーションシステムが主流となり、最適な移動を提供する「MaaS」でより豊かな生活が始まっている。その背景には、メルセデス・ベンツが2016年10月に発表したコンセプトであるインターネットとつなぐコネクテッド(C)、自動運転(A)、シェアリング(S)、電動化(E)がある(CASE)。こうした時代こそ脱炭素の流れを踏まえ、メルセデス・ベンツは最高の革新技術を融合させ安全でグローバルなモビリティサービスに積極的に取り組んでいるのだ。
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