佐渡島でメディア向けのプロトタイプ試乗会が行われたレヴォーグレイバック。参加したメディアのイベントに対する評判が非常によかった。ナンバーがついていない車両を公道で試乗させる企画はどう思いついたのか? また、その開催までの苦労についてその経緯をスバル広報担当者に聞いた。
文/ベストカーWeb編集部・渡邊龍生、写真/スバル、ベストカーWeb編集部
「スバルレイバック事前試乗会でどうわかりやすく乗り味を伝えるか?」佐渡島でプロトタイプ試乗会実現の立役者とは!?
■レイバック事前試乗会で乗り味をどうわかりやすく伝えるか?
佐渡島でメディア向けのプロトタイプ試乗会が行われたレヴォーグレイバック。その開催までの苦労についてその背景をスバル広報山内氏から聞いた
2023年の春、スバル社内向けにレヴォーグを嵩上げしたモデルの確認会が開かれた。車名は(レヴォーグ)レイバック。広報部員も数名参加して試乗を実施。参加した広報部員曰く、レヴォーグのスポーティさとSUVの大らかさといった特長を高い次元で両立した乗り味だったとか。
また、ほかにはない新たな価値を提供できるSUVになると確信したそう。それとともに乗り味のよさをメディアにどうわかりやすく伝えるか、がポイントになるなとも感じていたそうだ。
その後、スバルではそのレイバックの先行予約開始が同年9月7日に決定し、メディアの情報解禁も同日に設定された。それに向けて、事前のメディア試乗会を具体的に準備していくこととなった。
レイバックの広報担当は、今回インタビューした2017年入社で7年目の山内英人氏。広報部着任前は、新潟スバルに2年間セールスとして出向し、現場で培った経験やお客様の生の声を、広報の活動で活かしながら、現代の若者らしく「新たな発想」を大事にしながら日々業務にあたっているとのこと。
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■「従来(の試乗会)と同じことはやりたくない」
ボディカバーで覆われたレイバックのプロトタイプ試乗車。ナンバーがつけられないため、クローズドコースでの開催は必須だ
その彼を中心に、自動車メディア向け試乗会の企画が開始された。発表前の試乗会ではタイミングの都合、試作車でナンバーがつけられない車両を使うことが一般的だ。
スバルでも従来は袖ケ浦フォレストレースウェイや修善寺のサイクルスポーツセンターのクローズドコースを貸し切り、イベントを実施してきた。また、そのコースは整備が行き届いた路面コンディションのいい場所となり、メディアによっては公道とは環境が異なりすぎるために評価が難しく、あらためてナンバーが取得できたタイミングで公道試乗会を開催するのが通例だった。
ある時、山内氏が「レイバックの乗り味のよさは、袖ケ浦や修善寺では評価してもらえないのでは?」「もっとメディアにお客様と同じ環境・気持ちで試乗してもらえる場所を探したい」「これまでと同じ事はやりたくない」と上司に相談したそう。
これまでもクローズドコースとして使える場所がないか、散々各地を探してきたが「ない」のが実態だった。それも知っている彼が上司に提案した内容は、「公道で試乗会ができないか」であった。
スバルが公道で実施した前例はなく、業界でも費用を払えば貸切できる箱根ターンパイクを除けばあまり例がない。最初に聞いた時、その上司の感想は、「そんなことできないでしょ」であったが、これまで法的にできなかったのか、調整したことがないのかわからなかったため、とりあえず道路交通法といった関連法規や警察の情報、他業種やイベントにおける実績がないか確認するよう指示をしたそう。
■メディアに地域PRもお願いすることに
試乗会の準備を入念に行うスタッフ。ナンバーなしの車両で公道を占有するためには警察や自治体、地元関係者から地道に理解を得ないと前には進めない
そうして調べた結果、いくつかの条件を満たせば公道を占有し、ナンバーがない車両が走行できる可能性があることがわかった。ただし、警察や自治体といった地元関係者の理解がないと占有できないとのことで、どうやったら理解を得られるか、再び考える日々が続いたそう。
ちなみに都市部では、多くの交通を遮断するのは難しく、公道占有は実質不可能なこともわかったという。
数日後、彼は交通量がかぎられる地方はどうか? と上司に提案した。確かに物理的には可能かもしれないが、地元関係者の理解をどう得るかに対するアイディアを考えないといけない。彼は日頃の試乗会運営でお世話になっていた旅行会社に相談へ行き、地方特有の傾向と課題を確認。
観光における地域活性化の視点で、PRに力を入れているところが多いことがわかった。旅行会社から聞いた話を踏まえて彼は、試乗会で誘致したメディアに地域のPRをすることを条件に、公道占有させてもらう交渉を思いついたのだという。
試乗会に誘致するのは、自動車メディアが大半となり、自治体としてはこれまで接点のないメディアを開拓し露出することができる。また、観光PRとなれば、クルマと旅行の親和性もいい。その線で交渉することにしたという。
■各社ともに「すべてが初めての経験」
候補地のなかから選ばれたのは、世界遺産登録を目指し、近年PRに力を入れており、歴史もあって自然豊かな「佐渡島」だった
交渉の切り口は決めたものの、観光に力を入れている自治体は全国に無数にあり、どこに狙いを定めるかが悩ましかったそう。そこでレイバックが持つ世界感を表現できる場所、言い換えればレイバックを購入するユーザーが実際に行ってみたい場所を候補地にしようと決めた。
候補地を全国で10カ所ほどに絞り込み、旅行会社のネットワークを活用させてもらったうえで、各地域の観光協会に企画を提案して回った。そのなかで関心を持ってくれた観光協会は2カ所で、多岐に渡る交渉の結果、新潟県の佐渡島が最有力候補地になったという。
佐渡島は世界遺産登録を目指し、近年PRに力を入れており、歴史もあって自然豊かな、まさしくレイバックに乗って出かけてみたい場所にふさわしいところであった。
佐渡観光交流機構若手担当者の三條氏もスバル側の企画には興味を示しており、WEBやYouTubeといった露出効果も見込めるということから、実現に向けて協力してくれることとなったそう。
両社にPR会社も加えて具体的な検討を始めることとなったが、各社このような前例はなく、初めての経験であり、何をどこから調整しようかといった具合であったが、各社ともに若手担当者ということもあってか、手探りではあったが、コミュニケーションを深めながら実現に向けて徐々に進み始めた。
公道占有する場所については、佐渡観光協力機構の三條氏のアドバイスもあり、「大佐渡スカイライン」に目星をつけた。周辺に民家はなく、う回路もあるため、交通を一時的であれば遮断できる可能性があった。
そこで、佐渡観光協力機構の三條さん経由で、佐渡警察署に相談。佐渡警察署の担当者もやはり一企業が公道占有した前例はないとのことで、即答は得られなかった。
試乗会は8月末を予定していたため、回答のタイミングや結果によっては、ほかの会場で実施しないといけないことも考えると、代替地でやる準備も並行して進めないといけなかった。
レイバックのスバル開発陣。中央右がPGMを務めた小林正明氏
また、スバルでは試乗会実施の場合、メディア対応要員として、現場に開発責任者をはじめ多くの開発メンバーを帯同させる必要がある。メンバーのスケジュールも早めに確定しないといけなかったが、開発メンバーのスケジュールを取りまとめしている商品企画本部主査の夘埜敏雄氏に相談し、佐渡で交渉している旨を説明。
その夘埜氏から「新たな取り組みにチャレンジしているなら応援しているし、スケジュールはギリギリまで待つよ」と心強い言葉ももらうことができて、彼としてはさらなる励みにつながったという。
■やってみたらどうにかなるもんだ!
佐渡島の「大佐渡スカイライン」にてレイバックプロトタイプの公道走行の許可が下りたのがメディア試乗会実施の1カ月前だった
佐渡警察署もスバルと佐渡観光交流機構の取り組みに理解を示してくれたこともあり、安全に関係するいくつかの条件はあったものの、7月下旬に正式に「大佐渡スカイライン」を占有し、ナンバーのないプロトタイプを走行することを認めてくれたという。
ただし、道路の占有許可は警察ではなく、新潟県佐渡地域振興局が管轄という事で、そこであらためて正式な占有許可を取付けた。
試乗会予定日から1カ月前のタイミングでギリギリではあったが、このタイミングであれば準備は何とか間に合う。佐渡島で実施できる見通しが立ったことに広報部員は喜び、具体的な準備に取りかかった。
試乗会を前に続々とフェリーで佐渡島に運び込まれるクロストレックなどスバルの試乗車
彼はこの時、「どうにかなってしまうもんですね」とやや謙遜気味に言っていたようだが、その言葉の裏には、第一関門を突破したという達成感が強くあったのは言うまでもない。
■試乗会であふれ出た「佐渡パワー」!
フェリーで運ばれ、佐渡島に到着後はローダーで試乗会現地に運び込まれたレイバックプロトタイプの試乗車
スバル広報部の面々は途中8月の夏季休暇も挟みながら試乗会の準備を進めた。特に担当者の山内氏はせっかく実現まで漕ぎつけた佐渡試乗会を成功に終えるべく、直前まで細かなところまで目を配り、準備を率先して進めた。
そしていざ試乗会が本番を迎えた。メディアは、「ジェットフォイル」(約1時間の道中)で佐渡島の両津港から上陸。参加者の9割が初佐渡だったということらしい。1泊2日の行程で、レイバックの試乗の合間には、島内を自由に回ってもらいつつ試乗してもらおうと、インプレッサとクロストレックも持ち込んだ。
ベストカーWebで試乗記を依頼した国沢光宏氏もたらい舟を体験した
メディアからはたらい舟が特に人気だった。レイバックの試乗コースとした大佐渡スカイラインは、事前のロケハンで評価するにはふさわしいコースだと思っていたようだが、そこは狙いどおり、参加者の大半が道幅やコースティング、路面コンディションが非常にいいとコメントしてくれたのだという。
試乗会当日はスバルではおなじみのくじ引きで試乗車を抽選。ベストカーWeb担当の筆者(右端)とベストカー編集部担当の林(その左)もしっかり参加
「何よりレイバックの新たな価値となる乗り味のよさをしっかり体感してもらい、想定以上の評価をいただくことができた」とは山内氏の弁。佐渡というロケーションは、商品やスバルのブランドを引き立ててくれる非常に魅力的でパワーを持つ場所だということもメディアの様子を見てわかったそうだ。
大佐渡スカイラインではほぼ1週間、通行止めにしてレイバックプロトタイプ試乗会が無事に開催される運びに
9月7日にいよいよレイバックの情報解禁を迎えた。ベストカーWebでも記事を公開したが、読者の注目度も高く、レイバック関連の記事は軒並み高いアクセス数を記録した。今回の佐渡試乗会でスバル側が意図していた具体的なクルマとしての世界観、新しいブランド価値創出などについてこれまでとは違った形で読者は敏感に感じ取っていたのかもしれない。
情報解禁後、全国のスバルディーラー販売店では、佐渡の記事や動画を見て来店したユーザーが非常に多いそうだ。受注も好調に推移しているようで、「今回スバル広報として狙っていたことは、ある程度実現できた」と山内氏は語っていた。
今回、試乗会担当の大役を任されたのがスバル広報部の山内英人氏。広報部着任前は、新潟スバルに2年間セールスとして出向していた
また、彼(山内氏)をはじめ佐渡観光交流機構の三條氏や佐渡警察署の方々が互いに理解し合い、協力して、新たに挑んで実現できたこの試乗会は、今後のスバルの広報活動のひとつの指標になるだろう。
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みんなのコメント
ハリアーやcx5と言ったカテゴリは走りじゃなくて、見た目や内装の洗練さや、所有する歓びが重要かと。走りにこだわりたければハイスペックな輸入車もあるし。
スバルの得意な分野がいきるのは別のカテゴリーかと。実際、受注開始して1ヶ月経つけど予約台数発表されませんね。知り合いのディーラー曰く、狙っていた他社からの乗り換えはほぼなく、自社内の乗り換えで意図したことは実現出来ていないようですが。