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国産バイクの王道を歩んで30年! BIG-1が辿り着いた“極み”とは? ──ホンダ CB1300スーパーボルドールSP 30thアニバーサリー試乗記

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国産バイクの王道を歩んで30年! BIG-1が辿り着いた“極み”とは? ──ホンダ CB1300スーパーボルドールSP 30thアニバーサリー試乗記

「CB1000スーパーフォア」が今年、発売30周年を迎えた。記念モデル「CB1300スーパーボルドールSP 30thアニバーサリー」に河西啓介が試乗した!

4気筒エンジンは絶滅の危機?

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バイクの世界において“4気筒エンジン”というのは特別な価値がある。クルマに較べはるかにサイズや重量の制約が大きい二輪用エンジンに4つのシリンダーを備えるのには高い技術が必要であり、それを積むのは高性能モデルの証だからだ(6気筒エンジンというのも存在するのだが、二輪車に積むには少々大き過ぎるため希少)。クルマでいえば6気筒や8気筒エンジンに近い存在と言えるだろうか。

かつて日本は「4気筒バイク大国」だった。1960~1970年代、ホンダ「CB750」やカワサキ「Z1」に端を発した4気筒の高性能バイクは世界を席巻し、日本のバイクブーム絶頂となった1980年代には「4気筒でなければスポーツバイクに非ず」というほどの勢いで4気筒モデルを送り出していた。二輪の小さなエンジンに4つのシリンダーと精緻なメカニズムを詰め込むというのは、高い技術力を持つ日本車メーカーのお家芸だったのだ。

だがその4気筒モデルが今や“絶滅”の危機を迎えている。

大きな理由は当時より格段に厳しくなった排ガス規制だ。シリンダー数が多くなるほどエンジン内での爆発、燃焼は増え、そのぶん排ガスも増える。と、同時にそれを制御するのが難しくなるのは自明の理だ。

いっぽう技術の進歩により単気筒、2気筒でも充分な高性能を得られるようになったという事情もある。もちろんシリンダーが少なくなれば部品点数は減り、製造コストも抑えられる。

「プロジェクトBIG-1」から30年そうした時代背景の中、2022年に発売されたホンダのCB1300 SP 30th Anniversaryは、“あの時代”を知る者にとっては気になるモデルだ。

ルーツとなるのは1992年に発売されたCB1000スーパーフォア(SF)。ホンダが「PROJECT BIG-1」と銘打ち、「新しい時代にふさわしいホンダのネイキッド・ロードスポーツモデルはどうあるべきか?」という大きなテーマを掲げて開発された車両だ。

いかにもバイクらしい正統派のスタイルに998cc水冷4気筒DOHCエンジン。フルカウルの“レーサーレプリカ”人気が高かった当時、そのド直球なコンセプトと堂々感でライダー垂涎のモデルとなった。その後継として1998年、排気量を1284ccへと拡大して登場したのがこのCB1300SFだ。つまり30周年記念というのは原点であるCB1000SFのデビューから数えて、ということになる。

時代を経た今もその王道コンセプトやスタイリングは不変だ。30年にわたりじっくりコトコト煮込まれ、まさに熟成の域に達している。

とはいえそのCB1300もここ数年、「すわ生産中止か」という噂は絶えずあった。だからこそこの日本製バイクのひとつの“頂点”であるCB1300を、買えるうちに手に入れたいと考える人もいるだろう。ちなみに今回試乗したのはハーフカウルを備える「CB1300スーパーボルドールSP」の30th Anniversaryモデルだ。カウル装着に伴い角目ヘッドライトとなるが、車体構成は基本的にネイキッドモデルのスーパーフォアと共通だ

ビッグバイクのオーラを纏う跨ってみると、どっしりとした重量感があり、運転技術に自信のないライダーならその時点で気後れしてしまいそうだ。

現代のバイクがどんどん軽く、扱いやすくなっているのに対して、昔ながらのビッグバイクという“オーラ”を纏っている。その阿らないコンセプトこそ「BIG-1」なのだから、個人的には歓迎である。

とはいえ軽くて扱いやすいバイクにすっかり慣らされたこの身体、まずはおっかなびっくり走り出した。4 in 1の集合管が吐き出すフォーッ! と、乾いた勇ましい排気音とともに、低回転からモリモリとトルクが湧き出す。

フライ・バイ・ワイアで制御されるアクセル操作に対する反応は鋭く、1284ccの4気筒がシュン!シュン! と、小排気量エンジンのようにシャープにまわる。

正直言って、乗り始めてしばらくは、情けないほどギクシャク走っていた。

しかし徐々に気持ちと身体が慣れてくると、この大きな車体がライダーの意のままに動いてくれることが分かってくる。

パワースーツを着込んだような一体感強力なブレーキは絶大な安心感でスピードを殺し、腕の力を抜いて「えい!」と、体重移動すれば、バイクがすっと傾き、自ら曲がってくれる。

カーブの立ち上がりで躊躇せずアクセルを開ければ、太いトルクが瞬時に後輪に伝わり、そのトラクションが車体をぐっと起き上がらせる。

持て余すと思っていた大きな塊が、じつは巌のような安定感と繊細なコントロール性を兼ね備えた精密機械だと理解すると、一転して“操る”のが楽しくて仕方なくなってくる。軽いバイクをヒョイヒョイと走らせるのも楽しいが、出来のいいビッグバイクを走らせるのにはパワースーツを着込んで“強いオレ”になったかのようなカタルシスがある。

まぁ、たいして腕のないライダー(自分のコトです……)が調子に乗ったらロクなことがないのだが、やっぱりこの身体拡張感、一体感こそが二輪の楽しさだよなぁ、と、思わせてくれた。

今回の試乗は街なかのみで、ブレンボ製ブレーキやオーリンズ製前後サスペンションの性能を存分に試せたとは言い難いが、それらの専用装備がこの30周年アニバーサリーモデルに特別感やステイタスを与えているのは間違いない。

スーパーボルドールで税込み206万8000円という価格も(スーパーフォアは税込み195万8000円)、日本のモーターサイクルにおいてひとつの頂点を極めた記念モデルと考えれば、決して高くはないと思える。

文・河西啓介 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)

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みんなのコメント

4件
  • 昔、代車で乗ったことがあるけれど、初めて乗ってフルロックでUターンか出来るくらい乗り易かった記憶があります。
    "250ccのオフ車かよ…?"って思いました。
    ホンダのバイクらしく、優等生だなと思います。
  • ホンダの限定車や最終モデルのお約束、赤フレームに黄金の脚 その他ブラックエディションとか限定カラー
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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