AMGの“走り”を強化するためのハイブリッド
自動車メーカーが次々に電動化を見据えた将来のロードマップを示す昨今、メルセデスAMGからも同様の発表があった。AMGはすでにF1の技術をロードカーに置換したハイブリッド・ハイパーカー「Project One」を公開しているが、今回の発表は「E PERFORMANCE」と呼ぶAMG独自のハイブリッド機構とEQブランドの派生モデルの開発というふたつのトピックスが主な内容である。
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E PERFORMANCEドライブトレイン戦略は、AMGブランドの特徴であるドライビングパフォーマンスとドライビングダイナミクスをさらに向上させつつ、高効率な電動化ドライブトレインを有するという指針に基づいている。電気モーターを上手に活用することで、パフォーマンスと低排出ガス/低燃費/低消費電力を実現するそうだ。今回は、V8と直列4気筒のふたつのガソリンエンジンにモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドのパワートレインを発表した。
ベースはV8ツインターボもしくは直4ターボ
基本的な構造はV8も直4も同じである。エンジン+AMGスピードシフトMCTと4MATICを組み合わせたドライブトレインをベースに、モーター/電子制御式ディファレンシャル/電動式2速トランスミッションをひとつのハウジングに収めたユニットをリヤアクスルに置き、その上にリチウムイオンバッテリーを配置している。こうすることで前後の重量配分がほぼ50:50になったそうだ。
メルセデスはM176/M177/M178の3タイプの4.0リッターV8ツインターボを持っていて、M176はメルセデス、M177はAMGの63、そしてM178はAMG-GT(ドライサンプ)という差別化を図っている。今回のV8はM177をベースにしているが、GLEやGLSの「AMG 63 S」はすでにM177のISG仕様として電動化されている。
「ISG」ではなく「BSG」のワケ
ちょっとややこしいのだけれど、今回のM177はISGではなくBSG仕様。ISGとBSGの違いはザックリ言えば、ISGはATのトルクコンバータ部分をモーター/ジェネレーターに置き換えており、ベルトとベルト稼働補機類は存在しない。BSGはベルトがかかる部分にモーター/ジェネレーターを置いている。なぜISGにしなかったのか。それは湿式多板クラッチを採用するAMGスピードシフトMCTを使いたかったからだという。
GLEやGLSの63 Sはもともと、9Gトロニックを改良したトルコン付きのAMGスピードシフトTCTを搭載していたので、トルコン部分をモーター/ジェネレーターに置き換えることができたが、今回は変速スピードとダイレクト感で上回るスピードシフトMCTを使うことにこだわってBSG仕様としたのだろう。
最新ハイブリッドの第一弾は年内に発表
BSG部分は新たに設計したコンパクトなタイプで、三菱電機製とのこと。このV8ハイブリッドのシステム出力は600kW以上、トルクは1000Nmを超えることが可能で、車両によっては0-100km/h加速が3秒以下になるという。
現時点では詳細なパワースペックがまだ公表されていないが、GT 4ドアクーペに最初に搭載されることが決まっているそうで、早ければ年内にも発表される予定である。ノーマルのGT 4ドアクーペと重量を比較すると約200kg重くなるが。出力/トルクともに増強されるので、パワーウェイトレシオでは上回ることになる。
直4はまず“タテオキ”で搭載
直列4気筒のハイブリッドには、AMGのA 45に搭載されているM139のユニットを使用する。ただ、今回公開されたのは縦置き。M139は横置きでも縦置きでも使えるエンジンなのである。システムの構造はV8と基本的に同じ。
M139もBSG仕様で、V8と同じくトランスミッションはAMGスピードシフトMCT、リヤアクスルにモーター/電子制御式ディファレンシャル/電動式2速トランスミッションとバッテリーをレイアウトしている。
新型CクラスのAMGに搭載予定
このM139がA 45と異なるのは、ターボが電動化されている点である。本技術はF1から直接導入されたもので、MGU-H(Motor Generator Unit Heat)と呼ばれ、同じシステムが「Project ONE」にも搭載されている。排気ガスを採り入れるタービンホイールと外気を取り込むコンプレッサーホイールの間にあるシャフトに、わずか4cmという細さの電気モーターを直接組み込み、排気ガスがタービンを十分な速度まで回転させる前にコンプレッサーホイールを加速。こうすることで、アイドリングストップからエンジンのレブリミットに至る全回転域において応答性が大幅に向上するそうだ。なお、この電動ターボは駆動用バッテリーの400V電源を使って稼働する。
4気筒ハイブリッドではエンジンのみで330kW以上の出力を誇り、これに最大で150kWの電気モーターのパワーが上乗せされる。結果としてシステム出力/トルクはV8エンジン搭載の現行車と比較しても遜色のないレベルに達するそうだ。このユニットが最初に搭載されるのは、新型CクラスのAMGになる予定である。
F1から学んだ独自のバッテリー冷却方法
電動化戦略を進めていく上で、必要なコンポーネントはすべてAMGで開発すると当初から決まっていたという。その中心となるのが、ハイブリッドモデル用のAMGハイパフォーマンスバッテリー(HPB)である。リチウムイオンエネルギーの貯蔵システムの開発は2016年に開始され、メルセデスAMGペトロナスF1チームのF1マシンで過酷な条件下で実証された技術を参考に開発したそうだ。
注目すべきはその冷却方法。冷却には電気を使わず、独自の冷却水により560個のセルを常時冷却する。専用の高性能電動ポンプが約14リットルの冷却水をバッテリー全体を覆うように循環させ、充電や放電を繰り返しても常に最適な温度(摂氏45度)に保つ。これならば、ハイブリッドモードでサーキットを高速で周回し、加速(=放電)と減速(=充電)が頻繁に行われてもバッテリーに負荷を与えず、安定的に電力が供給できるそうだ。
400Vのリチウムイオンバッテリーは6.1kWhの容量を持ち、70kWの連続出力を発生するうえ、10秒間だけ150kWのピーク出力を維持する。重量は89kgで、1.7kW/kgの出力密度を実現。セルを直接冷却しない従来の電池と比較すると、約2倍の出力密度となっている。
電気だけで130km/hまで加速
AMG DYNAMIC SELECTドライブプログラムにはエレクトリック/コンフォート/スポーツ/スポーツ+/レース/インディビジュアルの6モードを用意していて、ハイブリッドはどのモードでも常にオンとなる。スタートボタンを押すとコンフォートがデフォルトで、発進時は主にモーター、場合によってエンジンと併用するが、エレクトリックでは停止状態から130km/hまでは電気とモーターのみで走行する。
基本的にEVモードでは後輪駆動だが、後輪が突然トラクションを失った場合などは、電気モーターのパワーはプロペラシャフトを介して前輪にも伝達されるという。バッテリーが空になると自動的にコンフォートに切り替わり、エンジンが始動して駆動力を引き継ぐ仕組みである。なお、回生ブレーキは4段階で調整できて、レベル0では最小限の回生しか行わず、レベル3では最大90kWのエネルギー回収が可能で、ワンペダルでの走行もできるくらいの制動力を発揮する。
ピュアEVにもスパルタンなAMGモデルを投入
そして、メルセデスのEVに特化したサブブランドであるEQでも、AMGの派生モデルが誕生することが発表された。エクステリアデザインは、縦型のルーバーを配したフロントグリルをはじめ、サイドスカートやスポイラーやディフューザーといったAMGの特徴的な要素を踏襲。インテリアも同様に、AMG専用のシートやステアリングやMBUXディスプレイなどが装備される。見た目だけでなく、AMG RIDE CONTROL+エアサスペンションやEV専用のAMG i-Boosterといった機能が追加され、操縦性や動力性能でのAMGのテイストをきちんと盛り込むようだ。
AMGは単なるスポーティブランドだけでなく、今後はメルセデスとEQのブリッジを果たすような役目も担うことになるのだろう。
REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)
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