災害級の豪雨にご注意を、なんて予報におどかされた週末でしたが、鈴鹿サーキットのアジア選手権は日曜のレース2まで無事終了しました。
日曜は朝から雨もなく、土曜の夜から夜中に降った雨が路面を濡らしていたくらいだったんですが、午後のレーススケジュール時刻ごろに降りはじめ、UB150(=アンダーボーン150)はスタートディレイから周回数減算、AP250(=アジアプロダクション250)はウェット路面+雨のレース、SS600では降雨がドッときての中断もありましたが、周回数を5周(!)に減算してレース続行。そしてメインイベントのASB1000は雨も止んで、それでもウェット路面でのレースとなりました。
UB150、AP250と日本勢の入賞なく進むなか、SS600は、赤旗前にも好スタートを見せた全勝男ピラポン・ブーンラット(ヤマハタイランド)が飛び出し、それを昨日のレース1を勝った南本が追走。レースは序盤からブーンラットが飛ばしに飛ばします。
開始直後はブーンラット→南本→佐野優人(バトルファクトリー)→カズマ・ダニエル・カスマユディン(ヤマハマレーシア)→アハマド・アフィフ・アムラン(ヤマハマレーシア)→奥田教介(MF&カワサキ)といったオーダー。
そこから奥田が2周目に3人抜きを見せて、ブーンラット、南本、奥田の順がトップ3。ペースの速い奥田がすぐに2番手に浮上します。
奥田がブーンラットを追い、やや後方から南本、という位置から、奥田がラスト2周でブーンラットの真後ろへ。しかし、やっぱり周回5周の短さゆえか、奥田も届かず、ブーンラット→奥田→南本の順でフィニッシュ。日本人ライダーがふたり、表彰台に上がったレースとなりました。
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そしてメインイベントのASB1000。SS600のリスタートのころから雨は上がり、空も明るくなっての決勝スタートとなりました。雨は上がって、路面はウェット、そんなコンディションでした。
好スタートを切ったのはザクワン・ザイディ(ホンダアジアドリームレーシング)。これをラタポン・ウィライロー(ヤマハタイランド)とブロック・パークス(ヤマハレーシングASEAN)、アズラン・シャア・カザルザマン(ONEXOX/BMW)が追う展開のなか、その後方に中冨伸一(ヒットマンRC甲子園ヤマハ)が好スタート! その2人くらい後方には、金曜のフリー走行で転倒、左足首を負傷して松葉杖ついて歩いていた伊藤勇樹(ヤマハレーシングASEAN)もいます。
すぐにウィライローがトップに立って、中冨が2番手へ。その後方には、ザイディをはさんでパークス、伊藤の姿もありました。伊藤、このくらいのタイミングでは、まだ痛み止めの注射が効いて、痛みが気にならなかったんだそうです。
それからは、伊藤がパークスをパスして3番手へ。翌周には、トップを走っていたウィライローを中冨、伊藤がパス! 伊藤はその勢いのまま中冨をもかわしてトップに浮上してしまいます! しかし、中冨もすぐに逆転します。
「前にはいかれたけど、後ろから見ていたらユウキもタイヤが苦しそうだった。だから自分のペースで走ろうと思って、すぐに抜いたんです」と中冨。
雨は止んで、ウェット路面が乾いていくコンディションのなか、レギュラーライダーたちは開幕戦セパン以来のレインタイヤ。中冨は、ダンロップタイヤのテストもやっていますが、完成品よりも開発中のタイヤをテストすることが多く、走行経験値の多さはアドバンテージにならないんだそうです。
レースはその後、中冨がやや後方を引き離しながら、伊藤とウィライロー、パークスが2番手争い、その後方にザイディ、というポジションでした。
その2番手グループからは伊藤が抜け出しますが、やはり負傷した足が痛いのか、後方からきたパークスにかわされてフィニッシュ。これで中冨→パークス→伊藤の順でヤマハYZF-R1勢が表彰台を独占。4位のウィライローまでヤマハでした。
中冨の優勝は、ちょうど2013年のアジア選手権・日本大会以来で、その時はSS600クラス、1000ccでの優勝となると「ちょっと覚えてないけど…WSBKに行く前、2005年のオートポリス以来じゃないかな…」ってことでした。
「スタートでうまく出られたのて行けるとこまで行こう、と思い切って行きました。路面もだんだん乾いてきていたんで、レインタイヤがずるずるがくるまで頑張りました! レギュラーライダーの勇樹のフォローをするなんて考えてなかった。勝つチャンスが久々に来たのて、これを逃したくなかったですね。ドライのセットも今朝のフリーでうまく出せていたんですが、雨でデータがないみんな同士、思いきって行きました。いやー、勝って泣いたの、ひさしぶりです。みっともない、もうおじさんなのにね」と中冨。
「スタートから数ラップは、まず集団を抜け出すのが大変だったよ。雨でスピンが収まらなくて、きょうはミッションを変えて1速ギアを使わずに走ったんだ。雨での走行は、今回きょうが初めてだったから、少しずつ慣れながら走ったんだ。それにしても、うちのチームメイト、ユウキはすごかったね。ケガしてあの走りはすごいよ」とパークス。
その伊藤は、疲労と負傷個所の痛みで、表彰台へも松葉づえで登壇。
「痛みがひどくて、体力的に負担の少ない雨をずっと願ってました。でも、雨でも痛いもんは痛いですね。中冨さんを抜いたくらいまでは痛み止めが効いていたんですが、その後はダメ。ブロックに抜かれてからもなす術なく、3位になれてよかったです」と伊藤。左足首はテーピングでガチガチ、左足全体でシフト操作をしていたから、もう左足全体が終了、というレースだったようです。
全体的に、アジア勢の強さとたくましさ、それに日本勢の地の利、特に雨の鈴鹿を走行した経験値が順位を左右した日曜のレース2となりました。
日本ではほとんどなじみのないアンダーボーン150、JP250よりはるかにレベルの高いAP250、衰退していくクラスながら全勝男のコンディションを問わない速さを見せつけられたSS600クラス、そして今シーズンからスタートしたASB1000は、国産4メーカーだけでなく、BMWやドゥカティまで出場しているにぎやかさがありました。
日本でも2020年からST1000がスタートします。このレギュレーションの近いストッククラスが、全日本からアジア選手権への架け橋になって、そこからWSBKへ――という流れができるといいな、なんてことを考えさせられたアジア選手権でした。
写真・文責/中村浩史
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