バイワイヤのブレーキに対する慣れの有無が原因
ハイブリッドカー、具体的にはトヨタ・プリウスを初めて(久しぶりに)運転したドライバーから「カックンブレーキで扱いづらい」という声が上がることは珍しくない。その理由はプリウスに限ったことではないのだが、回生ブレーキと機械式ブレーキを協調制御していることが理由だと考えられる。
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ハイブリッドカーの車両全体としての高効率には減速エネルギーをいったん溜めて、加速時に放出するという回生システムを採用することがおおいに貢献しているのだが、減速エネルギーを上手に回生するには、減速時に機械式ブレーキ(ディスクやドラム)を使うのではなく、モーターによる発電量をできるだけ増やして電気に変換してバッテリーに溜めることがポイントになる。そのためには、ブレーキペダルを踏むと機械式ブレーキが作動してしまうのはマイナスだ。
そこで協調制御ブレーキといって機械式ブレーキとモーターによる回生ブレーキをバランスさせる制御が用いられている。そのためハイブリッドカーでは、バイワイヤといってペダルの踏力やストローク量から演算して、必要な減速を行うように車両を制御する仕組みとなっていることが多い。
つまり、倍力装置(ブレーキブースター)を利用しているとはいえ、ペダルでダイレクトに油圧を生み出す仕組みのブレーキとは、根本的な構造が異なる。作り手としては違和感のないように仕上げているのだろうが、どこか人工的なフィーリングでうまく操作できないと感じるドライバーもいるのだろう。その症状として、踏み始めに想像以上に減速が立ち上がってしまうことや、停止直前に強くブレーキがかかったように感じることを「カックンブレーキ」という言葉で、不満を示しているというわけだ。
とはいえ、ブレーキの協調制御はプリウスに限らず、アクアからレクサスLSまでトヨタ系ハイブリッドカーにはおしなべて採用されている技術。かなり熟成され違和感は少なくなっているという評価もある。その意味では、プリウスに限って「カックンブレーキ」を指摘する声が目立つのは、初代・二代目プリウスでの、今から見ると未熟だった協調制御による悪いイメージ(先入観)が残っているため、とも考えられる。
なお、電動サーボブレーキを使って、回生と機械式ブレーキの協調制御を行うという手法はトヨタに限らず、ホンダや日産の電動車両も採用している。ただし、ノートe-POWERはワンペダル(アクセルペダル)で停止までカバーするという仕組みを持つこともあってブレーキペダルはオーソドックスな機械式となり、協調制御はしていない。
まとめれば、ハイブリッドカーのブレーキに覚える違和感というのは、倍力装置を使った機械式ブレーキとのフィーリングの違い起因するものと考えられる。ちなみに、倍力装置を持たないノンサーボのブレーキは、グッと踏力が必要となるもので、倍力装置付きになれた体には異なる感触となってしまうだろう。おそらく、その扱いづらさはハイブリッドカーの比ではないと感じるはずだ。現代の市販車ではマイクロカーなどでしか味わうことができないが、ノンサーボ・ブレーキこそダイレクト感にあふれたブレーキだ。機会があれば味わってみてほしい。
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