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血も涙もない三者三様の悲劇。地元富士で奮闘も、報われなかったLMGT3日本勢/WEC富士

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血も涙もない三者三様の悲劇。地元富士で奮闘も、報われなかったLMGT3日本勢/WEC富士

 9月15日に静岡県の富士スピードウェイにて開催された2024年WEC世界耐久選手権の第7戦『富士6時間耐久レース』。18台で争われたLMGT3クラスには、3人の日本人がそれぞれのチームからホームレースに挑んだが、望まぬ惨事に巻き込まれることとなった。

 ここではそれぞれに起きた災難を、各選手の言葉とともにお届けする。

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●チーム内バトルが分けた運命

 3番手グリッドから決勝をスタートしたのは、佐藤万璃音が名を連ねる95号車マクラーレン720S LMGT3エボ(ユナイテッド・オートスポーツ)。ジョシュ・ケイギルのドライブする95号車に僚機59号車も僅差で続き、ツー・スリーを確保していた時に事が起きた。

 若干ペースで勝る僚機59号車のジェームス・コッティンガムがストレートでバトルを仕掛け、2台はTGRコーナーで交錯。95号車はスピンを喫して大きく後退し、さらにその後もレースの神様からのしっぺが続いた。

「チームのマシン同士で当たってしまいました。幸い2台ともにダメージはなかったようですが、僕らの方は大きく順位を落としてしまって……」

「そのあと、遅れを取り戻そうと頑張っていたジョシュ(・ケイギル)は(セクター3で)スピンしてしまいました」

「その時に今度は小さいトラブルが起きて、そこで2ラップ分を失いました」

 出だしからひとつくじけてしまった万璃音組だったが、レースはまだ5時間以上残っていた。ただ、この2周遅れという差は、いかんともしがたいものであったという。

「ラップダウンにさえならなければ何とかなるのがこのWECだと思っていて、その後に出たセーフティカー(SC)の時には、ピットインのタイミングで遅れを取り戻すチャンスがありました」

「ただ1度目は、前に車が居たのでプッシュバックしないといけないタイミングでちょうどリーダーが通り過ぎたことでパスアラウンドをさせてもらえなくて」

「2度目も、ピットアウトしようとしたときにファストレーンにマシンが居たのを待たなければならず、そのタッチの差でリーダーがまた前に出てしまいました」と、レースが終始荒れ模様となったことから生まれたチャンスを、2度逃してしまった。

「(接触をした)ふたりは、お互いに譲れるところはあったのでは、とは思います。ただ、次に向けてふたりとも勉強になったんじゃないでしょうか。僕が乗った時もペースはなかったですし、今日は、なにとってもうまくいかずでした」

 こうして17位でWEC初の母国戦を終えた佐藤。一方の59号車は中盤にはトップ争いを繰り広げ、最終的に8位完走。序盤の接触で運命が分かれた万璃音組の狂いは、施しようのない深い傷となっていた。

●期待を背にダブルスティントを任されるも、無情の不始動

 予選で悔しい7番手となり、追い上げをかけてスタートドライバーを務めたのは、82号車シボレー・コルベットZ06 LMGT3.R(TFスポーツ)に乗る小泉洋史。

 スタート後は驚異的な追い上げと力強いオーバーテイクを見せ、6番手で1度目のルーティンピットインへ。チームも小泉に期待を寄せたのか急遽プランを変更して第2スティントへ向かおうとした小泉だったが、エンジンがかからずにガレージに収まることとなった。

「富士は知っているコースなだけあって、レースはできたかなぁと思っています。第一スティントでは6番手くらいまで上げることができました」

「そこから、チームからのオペレーションがあって予定変更で2スティント目に出ようとしたら、『スターター』が反応しませんでした」と状況を振り返る。

 メディアセンターから確認できた一部始終でも、チームクルーがロリポップを上げても小泉の乗る82号車は10秒ほど進まず。その後も、ロリポップマンはボードを上げ下げしたが、マシンが進みだすことはなくガレージに戻されてしまった。

「ステアリングに備わっているスターターのボタンが反応しない時には、センターコンソールのものを使用するのですが、それも駄目でした」

「もう、何をやってもうんともすんとも言わず、20~30分ほど修復にかかりました。もうそこで、レースは終わってしまいました」

 自身2度目の地元戦となった今回は、これまでよりもライバルとのスピード差が狭まり、攻めの姿勢が出た追い上げに会場のファンも湧いた。それでも小泉は、さらに上を目指す心意気を言葉にし、リタイアで終えた第7戦富士を後にした。

「そうは言っても予選は7番手で、追い上げは6番手でした。そういう意味では、まだまだ自分のスピードやスキルが足りないなと感じます」

「これまでマイレージを稼いできたサーキットでもあるので、理想は最初のスティントでもっと順位を上げてくるべきでした。確かに収穫はありましたが、悔しい想いも大きいですし、まだまだだなと思います」

●「あれ?自分のせいかな、と思ったけど……」

 前日の予選ではトラフィックの影響でハイパーポール進出を逃してしまった87号車レクサスRC F LMGT3(アコーディスASPチーム)の木村武史。

 フリープラクティスでの感触から見るに追い上げは可能、との希望を胸にスタートした決勝では、有言実行の走りでまずは1ポジションアップを果たした。

「序盤は、昨日話した通りの追い上げができて、クラス4~5番手あたりを走れた時もありました」

「自分としても速さを見せることもできたと感じ、前日に想定していたことの証明ができたかなと思います」

 しかしその実、1時間半目から1時間分走った第2スティントでは、87号車の行く末に暗雲が広がり始める。

「ただ、第2スティントでは、僕の前のエステバン(・マッソン)がハイパーカーに挟まれるかたちで接触してしまっていました」

「その影響でフロントバンパーがダメージを負ってしまっていて、それでエアロバランスが崩れたのか、最初はキマっていたのに、それ以降はクルマが変わってしまいました」

「タイヤが良い3周くらいはまだよかったですが、それ以降からすごいアンダーステアが出始めてしまって。あの時は『あれ?自分のせいかな』と思ったのですが、42秒台を出せると思いながら走っても44秒台しか出ない状況でした」

 そんななかでも、木村の耐える走りが実を結びクラス7番手でレースを折り返した87号車。しかし、後半以降を担当したホセ-マリア・ロペスのドライブ中に、2度のドライブスルー・ペナルティを課されてしまった。

「最初のペナルティは、トラックリミットでした。それでその次は、1時間前の審議を経てフルコース・イエロー(FCY)中の手順違反でやられてしまいました」

「ただまぁ、(全部で)約1分ほどのロスとなってしまったなかでのこの結果(首位と50.046秒差の12位)なのでまあまあかなと」

 決勝での強さに賭けて戦っただけに、チグハグしてしまった戦いに悔しさを感じている様子の木村だったが、最後には「自分のホームコースで決勝ではそれなりに速く走れるという手ごたえもありましたし、レクサスの速さも見せることができたので良かったかな」と、前向きな言葉で自身3度目の地元戦を締めくくった。

 さらに、クラス唯一の日本国籍チームである777号車アストンマーティン・バンテージAMR LMGT3(Dステーション・レーシング)も、SCのタイミングを味方につけて表彰台も見える位置まで順位を上げてきていたが、エルワン・バスタードのホワイトラインカットを理由にドライブスルー・ペナルティを受けるなど、上下あるレースを戦い、最終的にクラス7位でポイントを獲得した。

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