メルセデス・ベンツの新型Cクラス(W206)発表の場で、開発担当重役のマルクス・シェーファー氏がもっとも力を入れて紹介したモデルが「C300e」、「C300de」と名付けられたPHEVだった。今回は、発売間近のC300eに同乗試乗する貴重なチャンスを得た。(Motor Magazine2021年6月号より
ガソリンとディーゼルを用意。PHEVシステムはコンパクト
私が最初に乗ったプラグインハイブリッド車(PHEV)はもう10年近く前、トヨタ プリウスのPHVプロトタイプで、そのEV航続距離はわずか10数kmだった。その後、量産車では鳴り物入りで登場したメルセデス GLE500eだったが、17kmEV走行しただけで、エンジンがかかってしまった。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
しかし電池の性能が上がるに従いEV走行距離は伸び、2019年に登場したフォルクスワーゲン パサートGTEは55km、BMW 330eは54kmへと改善されてきた。今回紹介するメルセデス・ベンツ C300e(またはC300de)はその航続距離を倍増、なんと100kmを達成しているという。
メルセデス・ベンツの開発センターからやってきたのは、外観はなんの変哲もないCクラスセダンである。しかも、まだ開発途中なのでドイツのPHEVが取得できるEナンバーも付いていない。
ただしパワートレーンはガソリン仕様の300eには204psを発生する2L 4気筒(開発コードM254)、そして300deには200psの2L 4気筒ディーゼル(開発コードOM654)がそれぞれ搭載される。そしてPHEVの心臓にあたる電気モーターは95kW(129ps)、これを駆動するバッテリーは25.4kWhのエネルギー容量を持っている。
今回同乗したのは後輪駆動で、下の図からわかるようにパワーエレクトロニックとスターターをギアボックス内に収めるなどのソリューションによってPHEVシステムをコンパクトにすることで4マティック(4WD)との組み合わせも可能にした。もちろんワゴンも用意される。ただし、トランクルームへの影響はゼロとはいかず、セダンでは455Lから315Lに、ワゴンは490Lから360Lに減少する。
最大100kWの回生能力。ワンペダル走行も可能
95kWの最高出力と440Nmの最大トルクを発生する電気モーターにより、EV走行時の最高速度は140km/hとドイツの高速道路でも問題のない性能を発揮する。搭載されるバッテリーはメルセデス・ベンツ内製で96個のパウチセルで構成され、インテリジェントクーリングシステムで常に最適な作動温度に保たれている。さらに充電に際してもサーモマネージメントが監視、55kWの交流電源で分あればフル充電が可能である。また家庭でのウォールボックス対応のために11kWのオンボードチャージャーも用意されている。
インテリアもスタンダードなクラスとまったく同じだが、モニターメニューには当然PHEV独自の電池残量や充電関連のインフォメーションが表示される。バッテリーがフル充電だったのでまずEV走行でスタートする。実にスムーズで、PHEVシステムによる合計250kgもの重量増加にものともせずにグングンと加速し、あっという間に一般道路の巡航速度100km/hに達する。乗り心地はややソフトでちょっと気になったが、ハンドルを握る開発担当のフリュ氏によれば、これはソフトウェアの問題で市販車では解決されていると説明していた。
一方、回生システムは航続距離を確保するために重要な要素になるが、300eは最大で100kWの回生能力を持っており、ハンドルから伸びるパドルでD+、D、そしてD−の順に回生力は変化させることができる。すなわちワンペダルドライブが可能になる。
確かにニューC300eはとくに航続距離においてこれまでのPHEVの常識を覆すほど素晴らしかった。現状ではPHEVは中途半端、あるいは電池が空になればタダのガソリン(あるいはディーゼル)車とも一部では言われているが、上手く使用すればローカルエミッションフリーに貢献することができる。
また内燃機関と併用することで総合的な航続距離は800kmを超えることができるので、F−CELL搭載車がまだまだ高価な現状ではPHEVは意味のある解決策だと言える。さらにこのレイアウトはハイパワーなスポーツバージョンへの進化も可能で、メルセデス・ベンツはAMGバージョンとしてPHEVを活用していくはずだ。乞うご期待!(文:木村好宏/写真:キムラ・オフィス)
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