2019年11月に明らかになったマツダの中期経営計画。FR駆動の直6エンジン搭載車の投入が盛り込まれたのは記憶に新しい。
さらに2021年10月、そのプランの進捗とも言える発表があった。2022年から23年にかけて、SUVモデルを5車種投入するという。
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マツダが目指すものと、ユーザーがマツダに望むものとは?
文/佐藤篤司、写真/MAZDA
[gallink]
■2022年以降のSUV商品群の拡充計画を発表
2020年11月の決算説明会で公開されたマツダのラージ商品群エンジン。左がガソリン直列6気筒ターボ、右がディーゼル直列6気筒ターボ、中央は直列4気筒+PHEVのパワーユニット
2019年11月に明らかになったマツダの中期経営計画。2019~2024年度の6年間に「ブランド価値の向上」と「価格カバレッジ(範囲)の拡大」を推進。そのため期間中に後輪駆動プラットフォームに直列6気筒エンジンを搭載するラージ商品群を投入する。
そして最終年度には(24年度)販売台数は約180万台、売上高約4.5兆円、営業利益率5%を目指すと発表した。この時には、利益幅のより大きな高級化路線を充実させていく、ということで理解した。
一方で「FFアーキテクチャが主流となっているのに、なぜFR?」とか「6気筒エンジンよりもEV化を急ぐべきだろう」とか、中には「あの多チャンネル戦略の失敗を繰り返すのか」という声まであった。
さすがバブル末期とはマツダの企業対応力も、そして社会情勢も変わっているので、今回の高級化路線を当時と同列には論じられないと思う。
マツダが2022年以降導入予定のクロスオーバーSUV商品群
そして今回、そのプランの進捗とも言える発表があった。FRプラットフォームを採用したラージ商品群のSUVモデルを22年、23年にグローバルで4車種投入するというのだ。
その新型SUVラインナップの振り分けは、日本や欧州向けに「CX-60」と「CX-80」、北米向けに「CX-70」と「CX-90」だという。
そしてラージ商品群、つまりプレミアムと呼ばれるラインナップの第1弾モデルは、国内の防府第2工場で生産し、22年1~3月期に投入予定。さらに北米では、トヨタと共同で建設したアラバマ新工場で、年15万台(トヨタも15万台)と言うSUVの生産も始まり、プレミアムへのシフトが加速していくことになりそうだ。
■直6エンジン、FR投入、EV比率増加……ユーザーの思いは
マツダ RX-VISION。マツダが考える最も美しいFRスポーツカーとして造形されたコンセプトカーだ。ユーザー的には中身にこだわらず、かっこいいデザインであればいいという層も多い
マツダには中期経営計画の着実なる実行しかない。20年度の通期業績を見れば、パンデミックという不確定要素の中でグローバル販売台数は対前年9%減の128万7000台。売上高で前年比16%減の2兆8821億円、営業利益は88億円で、前年比80%減、当期純損失317億円という現実がある。
こうした状況も影響し、中期経営計画の達成は25年度まで1年延期された。さらにパワートレーンに関するEVも混流生産できる マツダ工場改革を急ぎ、25年にEV専用プラットフォームを導入、2030年のEV比率を25%にするというプランなど、具体的に積極策を示している。
ここに来て正念場を乗り切るための最善の打開策を本格始動させているのだ。
当然のようにマツダが示したプラットフォームの棲み分けや、EVも含めたパワートレーンの話などについて、メディアもかなり賑やかである。だが少々乱暴な言い方をすれば多くのユーザーにとってプラットフォームの話やエンジンなどの議論は、あくまでも内輪のことである。
マツダにとってもっとも効率的な方法を選択し、少しでも魅力的な商品力を持った車を提供してくれればいい、という事なのだ。
だが、こうしたハード面のことを理解した上でマツダ車を選択する人たちは、実はそれほど多くはない。それ以上に、魂動デザインに魅力を感じ、「カッコいいから」を選択理由にしているユーザー層が相当数いるという、現実がある。
これまでクルマ好きたちの想いを中心に支えられてきたマツダは、ご自慢の「人馬一体感」が、そうした支持の根底にある。当然、エンジニアたちが追い求めてきた走りの感覚は、マツダ車の魅力の根幹を成す物であり、決してなくしてはいけないもの。今後も日々進化させるべき要素だ。
一方で、マツダをデザインで選択した人にとってFRとFFの違いは、あまり大きな問題ではなく、ひょっとしたらその違いすら分からないかもしれない。当然、スモールとラージで駆動方式も変えましたと説明したとしても、タイヤチェーンを装着するとき以外にそれを意識することはないかもしれない。
だが、以前から「世界シェアは2%。私たちはスモールプレーヤーである」と自認してきたマツダが、さらなる発展を遂げるためには、そうした、ごくごく普通のユーザーの獲得増が不可避だ。
■分かりやすいラインナップ整理はマツダの急務
現行型マツダ6。直6エンジン搭載のFRスポーツセダンにモデルチェンジされるという情報もある
そのためにも、もう少し分かりやすくラインナップを整理して欲しいと思ってしまう。
現在「マツダ+一桁数字」が、コンパクトカーやセダンのことであるというのは、一般のユーザー層にも取りあえず浸透してきた。
今後、新型マツダ2に高効率エンジンである「SKYACTIV-X 1.5+マイルドハイブリッド」や直列3気筒ディーゼルターボエンジン「SKYACTIV-D 1.5」などを搭載して登場すれば、さらにモデルの特長が際立つであろう。
そしてラージモデルとなるマツダ6が、直6エンジン搭載のFRスポーツセダンとして登場すれば、さらに差別化や理解度は進むはずである。
問題は、今後より力を注ぐことになるSUVである。国内投入モデルを見てみると、現段階では「CX+一桁数字」と「CX+二桁数字」が混在し、ラインナップを理解出来ない人たちもかなり存在する。
今後、CX-3がしばらく延命し、そこに新型CX-5投入となれば、話は少々ややこしい。CX-30、CX-60、CX-80などの二桁数字モデルとの混在による分かりにくさは、解消されないままだからだ。ブランド価値をより向上させるためにも、SUVの明確なラインナップ形成は急いで欲しいと思うのはそれがあるからだ。
かといって、これまで売り上げに大きく貢献し、知名度も高いCX-3、とくにCX-5と言うブランドを一気に変更することも、相当に難しい決断ではあるが……。
■100年間で培われたマツダのイメージとは?
現行型ロードスター。マツダのイメージは『クルマを手足のように自在に操り、走ることを追求する』というスポーティさではないだろうか
昨年1月に創業100周年となったマツダ。一世紀の間に培われたブランドイメージとはなにか?
ロータリーエンジンが創り上げ、ファミリアやロードスターによって定着したスポーティイメージ。愚直なまでに走ることの楽しさを追求し、それを独自のデザインと手にしやすい価格戦略で表現してきたメーカーだったと個人的には思っている。
膨大な時間と数々の戦略によってブランドイメージが確立することは、もはや説明の必要はないだろう。だからこそ世間から「高級路線への転換」と安易に受け取られてしまうことに、少しばかりの危惧を感じるである。
同時に生前の徳大寺有恒氏が「マツダはスポーツカーメーカーを目指せるメーカーだよ」とおっしゃられていたことを思い出した。単にRX-7などのスポーツカーの復活を言っているのではないのだと思う。
コンパクトハッチでもSUVでもBEVでも、スポーティなテイストをどんどん進化させる。そして新世代の魂動デザインでそのパフォーマンスを包み込み、だれもが手を出せるコスパのよさで勝負する。これだけでもマツダブランドのプレミアム感は自然と確立していくような気がするのだが……。
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みんなのコメント
一時期のメルセデスみたいだか、GL●に統一してから分かりやすくなった。
マツダも早めに修正してほしい。、
でもそこはなろうとしてなれるものでなく消費者がイメージを作り上げていくもの
ちょっとずれている