ロシア製小型オフローダー、ラーダ「ニーバ」は今? 小川フミオが解説する!
未だ生産され続けている長寿モデル
いっぷう変わったクルマを探しているひとに、ちょっとお勧めしてみてもいいかな、と思うのがラーダ「ニーバ」だ。全長3.7mのコンパクトな車体の4輪駆動車。
いかにも頑丈そうな機能主義的なボディもまた、現代のクルマに飽きたかな、と、思っているひとにウケそう。いや、実際にウケている。
フィアットの初代「パンダ」ともどこか共通する、事務的なスタイル。必要なものしかついていないいっぽう、設計者がどんなクルマを作りたかったかが、手にとるようにわかるモダニズムデザインは、時代を超えた魅力を持っている。
ディフェンダーの廉価版などと自動車史では評されているように、クルマ好きの興味を惹くコンセプトなのだ。
オリジナルはジグリ「VAZ2101」として、ソ連自動車公団(当時)が、1976年に開発したもの。ベースはフィアット「124」という実用車。背景には、西欧に輸出する工業製品を多く手がけ、外貨獲得とともに内需を刺激したいとする、当時のアレクセイ・コスイギン首相(在職1964年~1980年)の考えがあったともいわれている。
ニーバは250万台が生産されてきており、うち53万台が西欧に輸出されている。過去形でなく、現在も、であるところがすごい。2017年1月にラーダがルノーグループに入ってからは、一時はニーバのフルモデルチェンジとともに、オリジナルの生産を中止する計画だった。
しかし、市場での人気がルノーの考えていた以上に高く、2021年には「ニーバ・レジェンド」として、新型ニーバと並行して販売されている。なんとも長寿ではないか。
昔のままが魅力的!
現在でも並行輸入のかたちで、オリジナル・ニーバは日本に入ってきている。じっさいに市街地で、若い女性がうれしそうに乗っているのを目撃したりする。
私がこのクルマに乗ったのは1980年代も終わりのころだ。ポンポンはねる硬めの足まわりと、あまりまわらないディーゼル・エンジン(どこの設計だったのだろう)で、「こりゃあ古い!」と、驚いた記憶がある。ニッサン「スカイラインGT-R(R32)」が出たのとほぼおなじタイミングだったので、そりゃあ古いと思うわけだった。
現在のニーバ・レジェンドは、1690c直列4気筒ガソリンエンジンを搭載し、61kW(83ps)の最高出力と、129Nmの最大トルクを発生する。数値はだいぶ控えめだ。変速機は5段マニュアルのみというのも、時代が止まった感がある。
でも、いまでも東京を元気に走っている姿をみると(目立つ)、クルマとはコンセプトさえしっかりしていれば、いつまでも魅力を失わないのだと知れる。
オリジナルのパンダ4x4も、エンジンがランオン(ディーゼリング)を起こし、キーをオフにしても停止しなかったものだ(燃焼室内部の汚れなどが原因)。4WDに切り替えるには、たしか、ごくごく低速にスピードを落とす必要があったような……。
それでも、いま、BMWの最新の3シリーズから、当時のパンダ4X4に乗り換えた知人までいる。「いいクルマで湘南を走っているとホンワカします」なんて聞くと、ますます、クルマの進化と、市場のニーズのズレを感じたりしてしまう。
日本では、ニーバ・レジェンドを正式なディーラーから買うことは出来ない。欧州では10ものバリエーションがあって、商用車もあれば、リモート操作できるキーのシステムや、USBが使えるインフォテイメントも搭載するコンフォートパッケージを組み込める仕様もあるそうだ。
ボディ仕様も、2ドアと、ロングホイールベースの4ドアの2タイプ。4ドアは使い勝手はよさそう。でも、やっぱり小粋なかんじは2ドアだ。
そのうち、パワープラントは、日産「ノート」のe-powerユニット(シリーズハイブリッド)を組み込んで、なんてことになるのだろうか……夢が膨らむ。
文・小川フミオ
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