国土交通省から自動運転レベル3(以下、レベル3)の型式指定を取得した、自動運行装置搭載のホンダ『レジェンド』が、2021年3月までに発売される予定だ。従来のレベル2に準拠するテスラなどのクルマとはいったい何が違うのか? またレベル3の画期的な点は何か? 国際自動車ジャーナリストの清水和夫さんに聞いた。
国際自動車ジャーナリスト
清水和夫さん
1972年からプロドライバーとして活躍する一方、モータージャーナリストとしての活動。自動車国際産業論に造詣が深い。著書には『クルマ安全学のすすめ』(日本放送出版協会)などがある。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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自動運転の法整備に関しては日本が〝トップランナー〟
自動運転レベルは、アメリカ自動車技術学会(SAE)が定義し、欧米や日本で採用されている。清水さんによれば、この自動運転レベルは、自動運転車の優劣を決めるものではなく、自動化のカテゴリーを決めたものだという。
「『レベル2よりレベル3のほうが上』のように思われるかもしれないけれど、レベル2よりもレベル3の自動運転車が優れているとはいえません。そのため、例えばスバルのように、レベル2の技術に磨きをかけることに注力しているメーカーもあります。ドライバーの使い勝手も含めて、必ずしもレベル3が有利とは限らない。つまり、自動運転レベルは、自動化の定義に過ぎないのです」(清水さん)
また、多くの人は「他国に比べて、日本における自動運転の実用化の動きは遅れている」と考えているかもしれない。だが実際には、法律の整備において、日本は外国よりも一歩先んじていると清水さんはいう。
「日本では世界に先駆けて法制度がいち早く整いました。クルマの保安基準を定める『道路運送車両法』とドライバーの責任を定める『道路交通法』の改正法が、2020年4月1日に施行され、一定の条件下であれば、レベル3で走行できるようになったのです。一方、諸外国では2021年の1月から同様の法律が施行される予定なので、日本は8か月も早かったことになります」(清水さん)
内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室が作成した「自動運転システムの市場化・サービス実現のシナリオ」。
自動運転レベル2とは段違いの安全性が求められる「レベル3」
世界初となるレベル3は、従来のレベル1やレベル2とは求められる安全レベルが大きく異なるという。
「自動運転は、まずレベル1で『前後の加速』、レベル2では『ハンドル操作』が自動化されます。それらはあくまでも運転支援なので、事故などが起こった際の責任はドライバーにあります。それがレベル3では『システムの前方監視』が含まれるため、一定の条件下での事故時には、自動運転システムが責任を問われます。そのため、より完璧なシステムがメーカー側に求められるわけです。英語ではリダンダンシー(Redundancy)といいますが、例えば、自動運転中に電源を喪失することに二重、三重で対処ができて、事故を起こさないシステムでなければなりません」(清水さん)
レベル5/運転の完全自動化
レベル4/条件付き運転自動化(人に運転義務なし)
レベル3/条件付き運転自動化
レベル2/一部の機能が自動化される運転支援(ステアリング制御など)
レベル1/一部の機能が自動化される運転支援(自動ブレーキなど)
レベル1と2が実用化済み。これらは運転支援なので、事故時の責任は運転者にある。一方、レベル3以上ではシステムが前方監視などを行なうため、事故責任も問われる。
ホンダ『レジェンド』の自動運転システムが作動する条件は?
日本で定められた法律上では「高速道路」において「60km以下」の速度に限り、レベル3での走行が認められた。自動運転車を販売するホンダではさらなる安全性などを考慮し、独自の自動運行基準を策定。具体的には、渋滞時に速度が30km以下になったらレベル3の自動運転走行に切り替わり、ドライバーに代わって自動運転システムが運転を担当。その後、50kmまで速度が上がったら、再びドライバーへと運転権限が移譲されるというわけだ。
「自動運転システムからドライバーに運転権限の移譲が行なわれる時、例えば、ドライバーが寝てしまっていたり、スマホに集中して気が付かなかったりするケースも十分に考えられます。そんな、ドライバーに運転を引き継げない危険な状態に備えて搭載されるのが『ミニマム・リスク・マヌーバー』(MRM)という機能。権限移譲を要請されて10秒以内にドライバーが運転操作を行なわない時、自動的に緊急停止する仕組みです。レベル3では、そのような安全措置を施しておかなければなりません」(清水さん)
また、走行が認められた具体的な高速道路は、NEXCOの東日本・中日本・西日本。これらに該当する東京・名古屋・大阪・福岡の都市高速道では、自動運転化に必要な高精度地図がすでに用意されている。
なお、自動運転に切り替わる際には、気象条件も加味されるという。例えば大雪や大雨、濃霧など、センサーが正常に働かない場合、ドライバーに運転を戻される可能性が高くなる。
「現在実現しているレベル2でも、車線の白線が薄くなった際には、運転支援システムが働かなくなりますよね。レベル3でも同様に、それぞれのセンサーが正常に作動しないと判断した場合、ドライバーに運転を引き継ぐことになるでしょう。どのくらいの雨や雪、霧まで自動運転できるのかというのは、カメラやレーダーなどの性能に左右されます。そのような運転譲渡に関する安全性能は、今後、メーカーが競争する領域になるでしょうね」(清水さん)
ホンダ『レジェンド』で想定されている自動運行装置の構成。センサー類では、カメラとミリ波レーダーだけでなく、光によって遠距離の物体を検知・測距するLiDAR(ライダー)が必須になる。さらに、そのLiDARと合わせて、高精度地図(ダイナミックマップ)も欠かせない。ほかにも、ドライバーモニタリングシステムの装備や、様々なデータの記録・保存ができることも求められる。
自動運転で必須となる自己位置推定に関しては、LiDARで得た情報と高精度地図をリアルタイムに突き合わせることで行なわれる。つまり、準天頂衛星システム「みちびき」やGPS(衛星測位システム)を使うわけではない。そのため、それらからの位置情報が届かないトンネル内でも、自動運転システムが安全に稼働できるという。
以上のような安全性の確保が求められることから、当然コストも高くつく。「レベル3の車両価格は、1000万円以上になるだろう」と清水さんは予測する。
ホンダ『レジェンド』の次は、どのメーカーがレベル3を販売するか?
レベル3に準拠した初のクルマが、トヨタではなくホンダから発売されることに、驚いている人もいるかもしれない。また、ホンダ以外のメーカーの動向も気になるところだろう。
「ホンダが他に先駆けてレベル3の自動運転車を販売するということに、私はそれほどの驚きはありません。同社の歴史を振り返れば、日本初や世界初といった技術やチャレンジは多いですからね。レベル3のクルマに関しても、以前から『2020年度には販売し、世界初を狙う』という意識は高かったですよ」(清水さん)
ほかのメーカーは様子見が続くのでは?と清水さんは予測する。
「誰が最初に生ガキを食べるか? という話だと思います。見た目がグロテスクで、あんなものを最初に食べてみようって試した人は、相当の勇気があったはず。それと同様に、レベル3についても、ほかに先んじて投入するのは怖いはずです。そんな中、他に先駆けて販売を開始するホンダのチャレンジングスピリッツは、たたえられるべきでしょう。そして、ホンダの『レジェンド』がうまくいったら、トヨタやメルセデスなどもレベル3のクルマを出してくると思います。当然、彼らも同等の技術力を持っていますからね」(清水さん)
ホンダの次にレベル3に名乗りを挙げるのは、トヨタもしくはメルセデス・ベンツで、アウディも続くのではないかと、清水さんは見ている。ただし、新型コロナウイルスによる影響で、いずれも開発に遅れが生じているのではないかとも予想した。
トヨタの新型自動運転実験車『TRI-P4』。ベース車はレクサスブランドの『LS 500h』で、レベル4の実験も想定された車両。
メルセデス・ベンツのフラッグシップセダン『クラス S』の新型。2021年の後半からは、レベル3を実現するシステムを搭載した同型モデルが投入される模様。
「いずれにしても、現段階でレベル3に準拠したクルマは、少なくとも車両価格が1000万円はかかるはず。トヨタなら『レクサス LS』、メルセデス・ベンツであれば『クラス S』を適合させることになるでしょう」(清水さん)
自動車メーカーは、自動運転技術の開発だけにリソースを集中しているわけではない。特にヨーロッパでは、電動化が待ったなしの状況であり、若い世代を取り込むためには様々なメディアやデバイスにつながる〝コネクティビリティー〟という要素も必須だという。そんな中、世界初として登場するレベル3のホンダ『レジェンド』が、安全性や利便性の高さを実証でき、ドライバーの支持を得られるかどうか。ホンダによる史上初の試みに、世界中から熱い注目が集まっている。
取材・文/河原塚 英信
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記憶には残らない商法。