■石川真禧照のK-CAR徹底解剖
2012年に初代の「N-ONE」がデビューした時、そのスタイリングはちょっと話題になった。とくに1960年代後半にクルマ好きだったオッサンにはグッとくるものがあった。というのもそのボディデザインが1967~70年に販売されていた「ホンダN360」をオマージュしていたからだ。「N360」は当時の軽自動車のなかではとくに若者に人気のKカーだった。丸目のヘッドライトとそれを囲むようなグリルのデザインが可愛く、愛嬌があった。
「N-ONE」はそのイメージを引き継ぎながら2020年11月にフルモデルチェンジをはたし、2代目へと進化した。さらに2022年8月には新シリーズの「N STYLE+(エヌ・スタイル・プラス)」という新シリーズを設定し、マイナーチェンジされている。
今回、試乗したのは最新の「N STYLE+URBAN(エヌスタイルプラスアーバン)」。「N STYLE」シリーズはノーマルでは飽き足らず、個性を求めるユーザーのためにつくられてたシリーズで、この「URBAN」は、都会的なシックをイメージしているという。グリルにグロームメッキを飾したり、インテリアはウッド調のインパネやツートーンの配色を採用、フロントシートは両席ともシートヒーターを標準装備している。パワーユニットは自然給気の0.658L+CVTで、FFと4WDが選べる。
ちなみに「N-ONE」シリーズはこの特別仕様車のほかに、Original/Premium/Premium Tourer/RSが用意されている。パワーユニットはPremium TourerとRSはターボ、RSはFF+6速MTが組み合わされるという設定だ。
試乗車は唯一の標準色として設定されているガーデニグリーン・メタリックという明るいグリーン系のボディ。室内はインパネは木目調のパネルを用い、シートもブラウンとブラックの2トーンを採用しているが、後席はブラック1色というのはちょっとさみしい。
後席も床はフラットで、高めの座面も頭上の余裕は身長170cmクラスでもOKという実用性があるので、シートも前席と同じパターンにして4名乗車時の差を少なくしてほしかった。後席の背もたれは1/2分割で可倒式。レバーを引くだけで半分ずつスライドダインさせたり、うしろヒンジでハネ上げることもできる。
ホンダが考案した独自の燃料タンクを前席の下に収めるセンタータンクレイアウトによる後席のシートアレンジは、他社の軽自動車にはない特徴でもある。リアのラゲッジスペースは奥行が約920mm、左右幅は約880mmを確保している。さらに床下にはサブトランクもあり、こちらは上下高が約120mm。左にタイヤパンクコンプレッサーが収納されている。ここには傘や靴などを置いておくことができる。開口部も低い。
CVTのシフトレバーはインパネから生えている。走行モードはDとS。Dを選択し走り出す。直列3気筒エンジンは2500回転あたりからアクセルレスポンスがよくなる。Dレンジ、60km/hは1900回転なので、加速には余裕がある。運転席の前のエンジン回転計は8000回転まで刻まれ、7500回転からレッドゾーンの表示だ。ホンダのエンジンは軽自動車でも相変わらず高回転型だ。
試乗車は自然給気の実用志向のモデルなので、パドルシフトはない。Sレンジにシフトすると、使用するギアが低くなり、レスポンスも鋭くなる。ただし、エンジン音は3000回転あたりから大きくなる。その音質は、やや耳障り感がある。これで100km/h巡航はちょっとつらいかもしれない。
一方、街中走行での「N-ONE」はとても扱いやすく、使い勝手がよい。ボディサイズは全高が1545mm(FF車)なので、都会の立体駐車場も利用できる。これだけの全高を確保しているので、室内も広く感じる。外から「N-ONE」が走っているのを見ると、昼間でもヘッドライトの外周がリング状に光っている。これはデイタイムランニングライト。輸入車に採用され、最近では国産車も普及しはじめたが「N-ONE」は軽自動車として初めてデイタイムランニングライトを採用した。こういう先進的というか輸入車的なところも「N-ONE」ユーザーの心をくすぐる。
快適装備も充実している。例えばブレーキ関係だが、信号待ちでのオートブレーキホールド。HOLDボタンを押しておけば、信号待ちで車両を停止させたとき、強くブレーキペダルを踏みこむとオートブレーキ機能が作動する。これでブレーキペダルから足を離しても自動的にブレーキがかかった状態になり、車両は停止している(ブレーキランプも点灯したまま)。
再び走り出すときは、アクセルペダルを踏みこめば、ブレーキは自動的に解除され、走り出す。これまで上級車には装着されていた装備だが、軽自動車にも装着されるようになった。パーキングブレーキもインパネの「P」スイッチを指で引くだけで、操作できる。さらにキーを携帯していれば、クルマから離れるだけで、自動でキーロックされる機能も付いている。
安全性に関しては11項目の先進安全運転支援システムが全モデルに標準装備されているので安心感がある。ハンドリングは直進性が強く、切りこんでいくときにやや抵抗感がある重めの動きが基本。カーブでもやや重めで、抵抗感のある動きがある。スポーティな動きをしても、ハンドルはロック・トゥ・ロックが3.5回転なので、キビキビした感じよりも、ゆったりと走るほうが似合っている。
このクルマでキビキビさを求めるなら、ターボエンジンを搭載したRSを購入したほうがよい。RSには6速MT車も用意されている。車両本体価格はRSは199万9800円~。STYLE+URBANは167万9700円(FF)~から、4WDは181万2800円~となっている。
■関連情報
https://www.honda.co.jp/N-ONE/styleplus_urban/
文/石川真禧照(自動車生活探険家) 撮影/萩原文博
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