■機能的なエアロパーツを装着したスポーツカーを振り返る
クルマ好き、走り好きにとって、速く走ることに特化したスポーツカーやスーパーカーは、いつの時代も魅力的な存在です。
スポーツカーやスーパーカーは高性能なエンジンを搭載し、優れた足まわりとブレーキシステムを採用することによって走行性能の向上が図られていますが、さらに見た目にもスピード感あふれるデザインとなっているのが一般的です。
そして、外観で重要なのが空力性能で、空気抵抗の低減や車体を路面に押し付ける力であるダウンフォースの向上を図るため、外装にはエアロパーツが装着されるケースも多く見られます。
エアロパーツの効果は公道で許される速度域で発揮できるとは限りませんが、サーキット走行も視野に入れたモデルでは重要なアイテムです。
そこで、市販車ながらアグレッシブなエアロパーツを装着したクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
●スバル「WRX STI tS TYPE RA NBRチャレンジパッケージ」
1992年にデビューしたスバル初代「インプレッサ」は、使い勝手の良い手頃なサイズのセダン/ステーションワゴンとして開発されると同時に、世界ラリー選手権に参戦するための高性能グレード「WRX」を設定。
その後、1994年にはSTI(スバルテクニカインターナショナル)製のコンプリートカー「WRX STiバージョン」が登場し、以降はラリーで活躍するとともに改良されながら代を重ねました。
そして、2010年にインプレッサでは最後の高性能モデルとなった、4ドアセダンのインプレッサ WRX STI(後にスバル「WRX STI」が俗称となる)が登場。
その究極の進化形モデルが「WRX STI tS TYPE RA NBRチャレンジパッケージ」で、2013年に発売されました。
NBRチャレンジパッケージは、WRX STI スペックCのシャシまわりを中心にチューニングしたコンプリートカーのWRX STI tS TYPE RAに、さらに角度2段調整式のSTI製ドライカーボンリアウイング、BBS製18インチホイール、レカロ製バケットシート(装着車を設定)などが装備されたハイパフォーマンスモデルです。
その名のとおりWRX STIが参戦した「ニュルブルクリンク24時間レース」用のマシンをモチーフにデザインされました。
ほかにも、エンジンは最高出力308馬力を誇る2リッター水平対向4気筒ターボを搭載し、ギア比11:1のクイックステアリングギアボックス、ブレンボ製6ピストンフロントブレーキキャリパーを装備するなど、TYPE RAの名に恥じない走りのモデルとなっていました。
WRX STI tS TYPE RA NBRチャレンジパッケージはわずか200台数限定とあって、当然ながらあっという間に完売しました。
●ホンダ「S2000 タイプS」
ホンダの創立50周年記念事業のひとつとして誕生したのが、1999年に発売された「S2000」です。
FRの2シーターオープカーとしてシャシ、パワートレインともに新開発され、エンジンは2リッター直列4気筒自然吸気ながら最高出力250馬力(前期型)を誇るなど、まさに究極のFRスポーツカーといえました。
その後、改良が重ねられてバリエーションも増え、そのなか1台が2007年に発売されたホンダ「S2000 タイプS」です。
タイプSの最大の特徴は外観で、カナード状に左右に大きく張り出したフロントスポイラーが装着され、高速走行時のダウンフォースだけでなく、ボディ下面に流入する気流をコントロールする効果がありました。
さらにリアには中央部を湾曲させた形状の巨大なリアウイングを装着。これもダウンフォースを得られるだけでなく、シート後方の乱流を積極的に整流する効果を発揮しました。
また、足まわりはステアリング操作の応答性を追求したチューニングが施されるなど、サーキット走行を重視した「タイプR」シリーズとは異なるベクトルで仕立てられています。
そして、S2000は2009年に生産を終了。タイプSはシリーズ最後に追加されたバリエーションとして、今では貴重な存在です。
●レクサス「LFA ニュルブルクリンクパッケージ」
2010年にトヨタは、当時の同社が持てる技術の粋を集めて開発されたFRスーパーカーの、レクサス「LFA」を発売しました。世界限定500台の販売で、日本での価格は3750万円からに設定するなど、世界基準のスーパーカーと肩を並べたモデルです。
ボディは高性能FR車ならではのロングノーズ・ショートデッキのフォルムを採用し、デザインは最新の空力理論を取り入れていました。
シャシはカーボン製モノコックで外装もカーボンとアルミを多用し、ブレーキもカーボンセラミックが装着されるなど、1480kgと軽量な車重を達成。
エンジンは10連独立スロットル、チタン製コンロッド、チタン製吸排気バルブなど、F1で培った技術がフィードバックされた4.8リッターV型10気筒DOHC自然吸気で、最高出力は560馬力を8700rpmで発揮しました。
このエンジンはレッドゾーンを9000rpmに設定し、甲高く澄んだエキゾーストノートは「天使の咆哮」と呼ばれたほどです。
トランスミッションはリアデファレンシャルギヤと一体となったトランスアクスルで、シングルクラッチの6速AMTを搭載。前後重量配分は48:52というFR車では理想的なバランスを実現しました。
そして2012年には、アップデートオプションの「ニュルブルクリンクパッケージ」を設定。大型でカーボン製の固定式リアウイングや、フロントバンパーには本格的なカーボン製カナードが追加され、足まわりの強化と、エンジンも最高出力571馬力までチューンナップされました。
なお、ニュルブルクリンクパッケージの当時の価格は4550万円で、限定50台のみのデリバリーでした。
LFAは予定どおり2012年12月に500台目がラインオフして生産を終了。ニュルブルクリンクパッケージは希少なモデルということもあり、現在は1億円以上の価格で取引されています。
※ ※ ※
エアロパーツは本来、機能的なパーツとして開発されたものですが、ドレスアップパーツとしても人気があります。
一方で、機能を期待してエアロパーツを装着するのはかなりハードルが高く、ダウンフォースを得るよりも空気抵抗が増えてしまったり、空力の前後バランスが崩れてかえってタイヤのグリップ力を失うケースもあります。
コンピューターによるシミュレーションや風洞実験をおこなって、エアロパーツを開発するのが当然なのですが、市販のものではなかなかそこまでするのは難しいでしょう。
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みんなのコメント
効果が無くてもカッコ良くドレスアップした車を所有してるだけでも満足度が高い。