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好調マツダCX-8の「目標の10倍を受注」の数字を鵜呑みにできない事情とは

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好調マツダCX-8の「目標の10倍を受注」の数字を鵜呑みにできない事情とは

「ヒット車」は間違いないが「10倍」の数字はインパクト狙いか

 よく新聞やネットニュースなどで、「発売後1カ月間での受注が目標の3倍」などといった、新車販売が好調な様子を報じているのを目にすることがある。最近ではマツダCX-8が、月販目標台数1200台に対し、発売後約1カ月時点での累計受注台数がその10倍の1万2000台になったことが話題となっている。

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 しかしこのCX-8に限らず、ほかのメーカーでもこの手のトピックスを強調する傾向にある。これは消費者に対して、「そんなに売れているんだ」という印象を与えるのに効果的なので、メーカーとしても積極的にPRに使っているのである。

 前述したCX-8に関するニュースリリースはマツダが2018年1月19日付けで発信している。しかしそれより以前となる2017年12月14日にマツダは「予約受注が好調」というリリースを発信している。それによると、2017年9月14日から同年12月10日までの3カ月の間に7362台の予約受注台数を確保したとしている。

 つまりこの7362台を単純に3で割ると、月平均予約受注台数は2454台となり、月販目標台数の2倍程度となっているともいえるのだ。ちなみに予約受付開始から2018年1月15日時点での累計受注台数が1万2042台ということなので、2017年12月10日から2018年1月15日までの約1カ月間での予約受注も含む新たな受注台数は4680台だったということになる。ちなみに自販連(日本自動車販売協会連合会)の統計によると、1月は2938台、2月は3032台を販売(登録できた台数)し、いずれも月販目標台数の約2.5倍となっている。

 ここまでで何が言いたいかといえば、単純に「累計受注台数が発売1カ月後で約10倍」と情報発信されても、予約受注は2017年9月15日から始まっており、約4カ月分の累計受注台数を月販目標台数と比較することに違和感を覚えるとともに、公表されている数値をベースに分析すると、月販目標台数の2倍もしくは2.5倍で推移しているのが実状ともいえる状況になっている。

 さらに月販目標台数1200台という設定にも疑問が湧いてくる。マツダはビアンテとプレマシーといったミニバンのラインアップを取りやめ、その代替え車種としてCX-8をラインアップし、各メディアもそのようなことを加味して車両紹介をしている。

 そこでビアンテの月販目標台数を調べてみると3000台であった。ビアンテのライバルであったモデルとしてトヨタ・ヴォクシー、ノア、エスクァイアの月販目標台数をみると、ヴォクシー5000台、ノア2700台、エスクァイア2300台となっている。

 ニュースリリースをベースに考えれば、累計受注台数が月販目標台数の10倍となるほど大ヒットとなっていれば、2018年1月から本格納車が始まっているので、1月と2月はバックオーダーを減らすべくフル生産体制となるはず。奇しくも1月と2月の自販連統計による販売台数が3000台前後でほぼ同じところをみると、このあたりがフル生産のマックスレベルと考えられる。このようにかつてのビアンテのライバル車の月販目標台数や、自販連統計などと照らし合わせると1200台という月販目標台数は過少設定ではないかと考えられるのだが……。

 仮に「目標の10倍……」というものをそのまま受け止めたとすれば、メーカーであるマツダが完全に需要予測を見誤っているようにも受け取れる。つまりきちんと需要予測ができていれば、自ずと月販目標台数も増えて生産コストの計算も変わり、もっと価格設定を安くすることができたかもしれないのである。

 CX-8があてはまるかどうかは別として、近年は月販目標台数をあえて少なめに設定し、「フタ(発売)を開けたらこんなに売れました」というように販促ツールとして活用する動きが目立っている。発売数カ月前から予約受注をとるのはバックオーダーを溜めるだけではなく、売れ筋仕様を確定させるデータ収集の役割も果たしているのだ。“人気のボディカラー”、“よく選ばれるオプション”などを予約受注の内容から判断し、生産車種の絞り込みを行い、より効率的な生産活動をしようというものである。

 ただ予約受注の段階や発売直後では、値引きなどもまだまだ伸び悩んでいるので、値引き条件ではなく、そのクルマを気に入って購入するひとが多い。それゆえ、上級グレードやそのモデルの目玉オプションやイメージボディカラーが選ばれることが多いのだ。

 そのような受注傾向を反映して生産計画を立てて、いざ発売してみると売れ筋が変わってくるということも発生する。しかし今どきは滅多なことでは生産計画の変更は行わない傾向が目立つので、納期遅延が顕在化したりすることもある。軽自動車などでは、ラインオフ後にそのまま未使用の状態でナンバープレートをつけて、“届け出済み軽未使用車(未使用中古車)”として流通させてしまうこともある。

 CX-8のケースでも、確かに自販連統計で月販3000台前後を販売していれば、スタートダッシュに関しては正真正銘のヒット車といえるレベル。ただそれだけではインパクトに欠けるのも確かである。リリースに登場してくる数値をどのように見せるかで受ける印象は大きく異なるので、そのあたりは自分たちでかみ砕いてチェックするようにしてもらいたい。

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