子どものお世話に家事に仕事にと、時間に追われるママにとって、ミニバンは自分の手足となってくれるお助けアイテム。でも、大きすぎて運転しにくかったり、使い勝手のよくないミニバンは、かえってストレスを増やすだけの存在になってしまう。
<レポート:まるも亜希子/Akiko Marumo>
先代フリードは、そんなママの心をガッチリつかんだミニバンだった。購入者の実に半数以上が子育て層で、中でも女性比率が高いというデータからも、それがうかがえる。
そこで新型フリードはメインターゲットを子育て層と明確に打ち出し、とくにウィークデーのユーザーとなるママのシビアな要求を満たすべく、地道なヒアリングと改良を重ねてきたという。だから、あっと驚くような大変身や飛び道具の投入はない代わりに、目に見えない細かな部分を確実に進化させてきた。
ちなみに2列シート5人乗り仕様となるフリード+(プラス)は、最も多いユーザーが子離れ層。続いて独身世代や子育て層のユーザーも多く、広大で多彩に使えるラゲッジが重宝されていることがわかる。それを踏まえ、フリード+がさらにラゲッジの使い勝手を熟成させてきたことにも注目だ。
■細やかな気配りがあるインテリア
室内をチェックして、まず目に入ったのはまるで北欧家具のように温かみを感じるインパネと、ドアポケットを二段にするなどコワザの効いた収納スペースだ。グズる子どもをやっとの思いでチャイルドシートに乗せ、荷物を積んで運転席に座った時、ホッとする癒しで心を落ち着かせてくれるインテリア。
そして、チケットやリップやミニタオルといった小物が入れやすいポケット、ドリンクだけでなく小物入れとしても使えるカップホルダーは、とにかく持ち物の多い女性の味方。どちらも、毎日乗るママにとって嬉しいポイントだ。
1列目、2列目、3列目と順に座ってみると、そのスペース配分がバランスよくなり、とくに3列目へのアクセスや居住性がアップしていることに気づく。「3列目なんて滅多に使わない」という人はとっくにミニバンから去っており、祖父母や兄弟や友人を乗せるために3列目を必要とするライフスタイルを送るのが今のミニバンユーザーだ。
新型は1~3列目までの距離が先代より90mm広がったというが、7人フル乗車を試すと、2列目の中央席はややタイトなものの、3列目は大人2人が余裕で座れるスペースが確保されていた。
さらに、2列目シートには先代より150mm増えた360mmのロングスライドがあり、人と荷物の状況によってアレンジしやすいのも便利だ。 また、2列目がキャプテンシートとなる6人乗りモデルでは、センターウォークスルーの幅が広がったのにも感心した。実は先代のウォークスルーでは、女性の私でも身体を斜めにしないと通れなかった。
それが新型では、アームレスト有りの状態でも1列目が50mm、2列目が25mm拡大し、正面を向いたまま通れるようになっている。雨の日などに、運転席から車外へ降りずに子どものお世話をしたり、荷物を取りに移動できるのもママにはありがたい機能だ。
そしてラゲッジを見てみると、まずは開口部の底辺(掃き出し口)の横幅が広がり、ほぼスクエアな開口部となったことが大きな改良点。先代では重たく大きな荷物をすべらせて積みたいと思っても、底辺の横幅がすぼまっていたため、持ち上げないと積み込めない場合があった。新型フリードは760mmと余裕の横幅で、最大幅は1270mm、高さは1365mmという開口部の広さ。
2列目までの奥行きも1035mmあり、ゴルフバッグ4つを縦積みできる実力というから、ベビーカーなら折り畳まなくても入るはずだ。さらに、先代より185mm低くなって地上からわずか335mmというフロアは、ホンダ得意の低床を通り越して、超低床。フリード+ではそれを活かし、2列目を折り畳んで付属のユーティリティボードを置くと、セミダブルサイズのマットレスが敷けて車中泊も快適だという。
ユーティリティボードは耐荷重200kgで、起毛面とワイパブル面のリバーシブル。下段には荷物の収納スペースもできるというのが実用的だ。ただ、ラゲッジには難点もある。ひとつは開口部が広大なのと引き換えに、リヤゲートの振り出し幅も大きくなってしまうこと。屋根付き駐車場など、狭い場所では全開にしにくいし、閉める時の重さも女性には気になる。電動開閉機能か、ステップワゴンのようなサブドアが欲しくなってしまった。
それともうひとつの難点は、3列目シートの跳ね上げ格納が重たく面倒なこと。これは開発主査の田辺氏に聞くと、ステップワゴンのように床下格納式なども検討したというが、最終的に跳ね上げ式となったとのこと。でもできる限りの軽量化を図り、先代より格納時の張り出しも抑えられたのだと教えてくれた。解決策は、「3列目の格納はパパに頼む」でキマリだ。
■ちょうどいいサイズ
さて最後に、1.5L・直噴ガソリン+CVTモデルと、1.5L・ハイブリッド+7速i-DCTモデルが用意された新型フリード/フリード+の走行性をチェック。
ママとしてはパワーがどうの、加速がどうの、というより先に、狭い街中での運転しやすさや安心感がとくに気になるポイントだ。田辺氏によると、実際に先代のユーザー宅へ行き、ボディサイズがどれくらいの拡大までなら運転しやすさが損なわれないか、という実験をしたところ、80mmアップが境界線だったという。
新型は全長50mmアップにとどめ、さらにメーターの薄型化やサイドクォーターウインドウの拡大、Aピラーを細くするなどの工夫で、前方視界を大きく改善。サイドミラーによる死角エリアの低減や、視線移動量の少ないミラーレイアウトなども施した結果、運転席に座ると前後左右の車両感覚がつかみやすく、試乗会場の地下駐車場から地上へ出る狭いスロープで早くも、見切りの良さを実感することができた。
ガソリンモデルは、低速時のエンジン音がやや大きめに感じるものの、軽やかで自然な加速フィールが中速域まで続く。発進・加速を繰り返してもキビキビとして、重さやもたつきを感じることがなく、これならコンパクトカーから乗り替えても違和感がないだろうと思えた。
そして高速道路に入ると、カーブやレーンチェンジでのグラつきのなさ、直進でのガッシリとした安定感に感心する。ステアリングフィールはもう少し落ちついた手応えが欲しいと感じる場面もあったが、巡行時のリラックス感を考えるとこれくらいでいいかもしれない。
ハイブリッドモデルでは、発進直後から余裕のある加速フィールが印象的だった。街中の走行でも上質感やなめらかさが感じられ、決してスポーティな味付けではないところがママ想いだ。2列目、3列目にも乗ってみたが、乗り心地はどちらもほとんど変わらず、カーブでも身体が大きく揺られることなく、おおむね快適。ハイブリッドモデルの方がより穏やかで、やはり静粛性が高いと感じた。
■安心感たっぷりの新型フリード
田辺氏はオデッセイの開発にも携わっており、新型フリードは走行性能の向上にも力を入れたとのこと。新設計の骨格やシャシーを採用し、とくにリヤサスのねじり剛性が先代比100%アップというのは驚きだ。女性は高速走行が苦手な人が多いが、それはボディのグラつきからくる恐怖感が大きな原因。それが改善された新型フリードは、安心感というママへの思いやりを手にしたといえる。
また、コンパクトミニバン初搭載となる安全運転支援システム「Honda SENSING」がベースグレード以外に設定されたのも見逃せない。発売後約1ヶ月の受注状況を見ると、購入時の評価ポイントのトップがこのHonda SENSING。やはり、これからのミニバンにはこうした先進安全装備を含めた安心感が、欠かせないものとなっていると感じる。
家族の笑顔こそが、ママの毎日の願い。そのためには、ママ自身が笑顔でいることも必要だ。新型フリードの進化は、そんなママのお助けアイテムとなる細やかな思いやりでできていると実感できた。
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