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「小海30周年」でシーズンインしたヒストリックカーイベント

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「小海30周年」でシーズンインしたヒストリックカーイベント

長い伝統をもつ「コッパディ小海」。愛好家たちが集い、独特の心地よい雰囲気が漂うヒストリックカーイベントだ。そんな、標高2000mの高原で開催される“ヒストリックカーのユートピア”は如何にして始まったのであろうか。

ヒストリックカーレースの始まり

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海外でヒストリックカーのイベントが盛んになってきたのは、1970年代の終わり頃からのことだった。最初はサーキットでのレースが中心だったが、イタリアで1982年にミッレミリアが復活して、1986年から毎年の開催になると、俄然、公道を走るクラシックカーラリーが注目されるようになった。

本来のミッレミリアとは、1927年から始まり、ブレシアをスタートしてローマを折り返し地点として再びブレシアに戻るというイタリア半島の北半分を一周する公道レースだった。19世紀の国家統一後の近代化の進行で自動車産業が急速に発展したイタリアの勢いを鼓舞するイベントとなり、大衆の熱狂的な人気を呼んだが、観客を巻き込む事故をおこして、1957年で中止となった。その頃にはイタリア各地で毎週末なると公道レースが開催されるようになっており、総合優勝こそ、フェラーリやマセラティが鎬を削ったが、小排気量のクラスで活躍したのが、各地の町工場でフィアットの大衆車トポリーノやバリッラを改造して作られたレーシングカーであり、シアタ、スタンゲリーニ、エルミーニ、ジャウルなどのコンストラクターが輩出した。

いかにしてコッパディ小海は始まったか

アルファロメオやアバルトの愛好家たちが、ミッレミリアの復活を聞くと、矢も盾もたまらず、イタリアに見聞に行き、そこで初めて小気味良く走る1950年代の小さなレーシングカーたちを見かけて、蠱惑された。それが、多くの日本人にとって、バルケッタとの最初の出会いだった。バルケッタとは小舟の意味で、オープンのスポーツ・レーシングカーのイタリアでの総称だ。

1人が購入すると、周りの友人たちも注目。それまで名前も聞いたことがないようなクルマだったが、続々とチシタリア、オスカ、モレッティ、ナルディ、スタンゲリーニなどが輸入された。

車が集まってくると、次にそれを走らせる場所が欲しくなるもの。ほどなくイタリアはアルプスで催されていたコッパ・ドーロ・デレ・ドロミティという山岳レースのロケーションに似た「小海」という格好の場所を見つけたことで、1991年にコッパディ小海が始まった。愛好家による愛好家のためのヒストリックカー・ラリーとして始まったのが、コッパディ小海の何よりの特徴だろう。

さらに、復刻されたミッレミリアやコッパ・ドーロ・デレ・ドロミティは、イタリア独自のルールによるラリー競技だが、この計測方法を日本で最初に取り入れたのもコッパディ小海だ。PCと呼ばれ、決められた距離を決められた時間で走る、その正確さを競い合う競技である。日本では競技区間のスタートとゴールにタイヤで路上に轢かれたゴム菅のセンサーを踏むことから『線踏み』と俗称されているが、最近では1/100秒単位で競い合うシビアさだ。

小海の2日間はヒストリックカーのユートピア

バブル期には、夢の夢であったフェラーリ250GTOやフェラーリ250GT SWB、ポルシェ550RSなども小海を走ったが、その後、ほとんどが欧米に戻っていった。しかし、当初から現在まで一貫して、アルファロメオならばザガートの軽量アルミボディをまとったSZやTZ、’60年代までのアバルトのほとんどすべてのモデル、そしてシアタ、スタンゲリーニなどのバルケッタなど、本来はサーキット用のレーシングモデルの参加が多いのも、小海の特色だろう。また、イタリア車以外も、フランス車ならアルピーヌA110やマトラジェット、ドイツ車ならもちろんポルシェ356、そしてイギリスのスポーツカーならMGはじめすべてのメイクスが集まる、スポーツカーの博物館の趣だ。

もともとが走り屋の多いイベントであり、小海リエックス・ホテル内の私道を使ったヒルクライムが、参加者のみならずギャラリーの人気を集めている。当初は長いワインディングコースだったが、年々、生い茂る樹木などにより、スピード競技も危険性が高まり、一時は中止されていた。しかし、現在は短いコースに、シケインも設けてスピードを殺しながら、さらにジムカーナを加味した競技となって続いており、こちらもギャラリーにも評判だ。小海リエックス・ホテルが開設した時から始まったので、同じ長さの歴史を持つわけだが、標高2000mの高原は下界から隔絶されたような雰囲気があり、小海の2日間はヒストリックカーのユートピアと化す。

かつては、小林彰太郎さんが楽しみにされて、毎年出場されていた。「カーグラフィック」を創刊した日本の自動車ジャーナリズムの先駆者だが、それ以前に、誰よりも熱心な自動車愛好家であったことは、小海の参加者なら親しく接する機会もあってよく知っている。小海の参加者は競技の勝ち負けなどにこだわらない、根っからの愛好家が多く、独特の心地よい雰囲気が漂う。

コッパディ小海以前にもモンテミリアや淡路フローリオなどがあったが、種々の事情で数回の開催で終わっている。栃木県のマロニエランや和歌山県のヴェトロモンターニャなど長く続いているイベントは、ひとえに地元の愛好家による情熱だけで、良き伝統が引き継がれて継続していると思われる。また、1992年にはTV局の主導により海外から参加者を招聘して日本版ミッレミリアが開催されたが、1997年からはラ・フェスタ・ミッレミリアとして継続している。こちらはTV関係者のノウハウで、大衆的な人気を呼び、ヒストリックカーを一種のブームにまで押し上げた。

今年の小海と、これからのコッパ・セリエ

2020年4月のコッパディ小海は、春先から始まったコロナのパンデミックに鑑みて、早めに中止を決断。それから1年が経ち、科学的見地ではなく政治的な思惑が優先される不合理な対策には左右されず、自主的にコロナ対策をしながら、今年は再開された。30年の歴史とともに歩む第1回目からの参加者もいるし、初めての参加者もいる。誰もが等しく楽しめる環境が小海にはある。色々な意味でニュートラルであることを心がけているようだ。

今年は小海から派生した、コッパディ京都が6月に、コッパディ東京が11月に開催予定だが、立ち寄れる人は一度見学されることをおすすめする。当時のミッレミリアに1950年から3回も出場したヒストリーを持つシアタ750S MM。このようにバルケッタの多くは一品制作のプロトタイプが多い。多くのカロッツェリアが当時は存在し、腕を振るったのだ。

カーボンニュートラルの声が高まり、ハイブリッドや電気自動車が普及するのに合わせ、AIによる自動運転も現実のプログラムとなってきた。もともと内燃機関による自動車よりも電気自動車のほうが古く、19世紀半ばには登場していた。しかし、内燃機関による自動車が主流となったのは、内燃機関に優れた利点があったからで、これからも内燃機関の利点が再び注目される機会はあると思われる。自動車の普及は、間違いなく人間の自由を拡大した。21世紀も最初の20年が過ぎた今、ますますヒストリックカーの個性が際立ち、自動車を操ったり、修理したりという自動車との戯れの楽しさもかけがえのないものとして、まだまだ、その歴史は続いていくのではないだろうか。

文・山下保夫 写真・奥村純一 編集・iconic

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