■大規模通信障害で一部のトヨタ・レクサス車で問題が
2022年7月2日未明から発生したKDDIの大規模通信障害では、一部のトヨタ・レクサス車にも影響がありました。
いったい、どのような影響があったのでしょうか。
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2022年7月2日の未明に発生したKDDIの大規模な通信障害は、7月5日の夕方に全面復旧が確認されるまで、およそ86時間にわたって続きました。
KDDIでは、最大で約4000万人の利用者に影響した可能性があるとしています。
その多くはスマートフォンユーザーと見られますが、トヨタやレクサスに乗るユーザーの一部からは、「ナビが圏外になる」という事象があったようです。
トヨタやレクサスの一部車種には「DCM(データ・コミュニケーション・モジュール)」と呼ばれるクルマ専用の通信機が搭載されています。
DCMが搭載されている車種では、スマートフォンなどを介することなく、クルマがサーバーと情報通信をおこなうことで、さまざまな機能を利用することができるようになります。
「T-Connect」と呼ばれるこのコネクティッドサービスでは、クルマを遠隔で見守るセキュリティサービスが利用できたり、ナビの道路情報が常に最新のものとなったり、さらにはワンタッチでオペレーターに接続し、緊急連絡などを行うことができたりします。
しかし、それらのサービスを利用するにはDCMが搭載されていることに加えて、通信回線の契約が必要となります。
そして、トヨタやレクサスではKDDIの回線を利用しているため、今回の通信障害の影響を受けたことで、 T-Connectのサービス (ヘルプネット、マイカーSecurity、エージェント/エージェント+、オペレーターサービスなど)が利用できない事象が発生していました。
実際に、首都圏のトヨタ販売店では「通信機能に関するお問合せは頂きました。また折り返し希望の人には復旧後にご連絡しています」といい、関西圏のレクサス販売店は「数件のお問い合わせをいただいた」と話します。
ただし、今回の通信障害はそれほど深刻な問題には至っていないようです。
そもそもDCMが搭載されていることで利用可能なサービスは、現状副次的なものに限られています。
したがって、通信障害によってクルマの利用自体ができなくなったり、走行性能や安全性能に影響が出たりということはありません。
また、そもそもこうしたサービスを積極的に利用しているユーザーがそれほど多くないということもあり、トヨタやレクサスのユーザーにおける、今回の通信障害の影響はそれほど大きくなかったと見られています。
■たしかに便利だけど…なぜ各メーカーはコネクティッドに注力?
こうした「コネクティッド・カー(つながるクルマ)」は、今後の自動車業界における大きなトレンドになっていくと予想されており、多くのメーカーが注力している分野です。
トヨタの「T-Connect」に加え、日産の「NissanConnect」、ホンダの「Honda CONNECT」、マツダの「マツダコネクト」、スバルの「SUBARU STARLINK」、三菱の「Mitsubishi Connect」など、国産メーカーの多くがコネクティッドサービスを提供しているほか、輸入車メーカー各社からも提供されています。
またトヨタでは2018年に発売された「クラウン」や「カローラスポーツ」を「初代コネクティッドカー」と定義してDCMを全車標準搭載。
遠隔で走行アドバイスや車両診断が受けられる「eケアサービス」や「LINEマイカーアカウント」をはじめとしたコネクティッド機能を搭載していました。
各社のコネクティッドサービスの内容を見ると、それぞれ細かな違いはあるものの、車両の状態を遠隔で監視したり、オペレーターからサポートを受けたりといった内容がメインとなっているようです。
ただ、現状のコネクティッドサービスは、使いこなせばたしかに便利ではあるものの、すべてのユーザーにとって必要不可欠の機能とは呼べるものではありません。
では、なぜ自動車メーカー各社はコネクティッドサービスの開発を積極的に進めているのでしょうか。
その背景には、第5世代の移動通信システムの規格である「5G」の普及が大きく関連しています。
5Gでは、それまでの「4G(LTE)」に比べて、高速かつ大容量の通信ができることに加え、複数のデバイスを低遅延で接続できるという特徴を持っています。
「高速」「大容量」「複数端末接続」「低遅延」という5Gの特徴を最大限活用すれば、クルマ同士あるいは道路や施設とクルマが、リアルタイムで通信することが可能となります。
クルマが自律的に運転するという意味での自動運転システムの確立には、自動ブレーキやアダプティブ・クルーズ・コントロールなどの運転支援技術の進歩に加えて、こうした通信技術の活用が必要不可欠です。
また、それに加えて、遠隔でクルマの操作ができるようになれば、複数のユーザーでクルマを利用するシェアリングサービスの発達にも貢献します。
「自動運転」も「シェアリング」も、今後の自動車業界における重要なキーワードであることはいうまでもありません。
つまり、コネクティッドサービスとは、単なる「便利機能」ではなく、その先を見据えた非常に重要な存在であるといえます。
とはいえ、クルマは安全が最優先されるものであるため「走る」「曲がる」「止まる」といったクルマの基本的機能へと通信システムが入り込むのは、現実的にはまだまだ先のことです。
今回のような大規模通信障害への対応や、関連法の整備などを考えると、クルマにおける通信機能によるユーザーへの直接的な恩恵は、当面は「便利機能」に限られると見られています。
※ ※ ※
パソコンが爆発的に普及した背景には、インターネットによってパソコン同士が繋がったことがあります。
また、現在一般的となっているゲームのオンライン対戦も、各ゲーム機とインターネットが組み合わさったことで実現しています。
クリアすべき課題は少なくありませんが、クルマとインターネットが組み合わさることは、クルマのあり方を変えてしまうほどの可能性を秘めているといえます。
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