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ドゥカティの電動レーサー「V21L」の正体とは!? 従来モデルから22kgの軽量化を実現

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ドゥカティの電動レーサー「V21L」の正体とは!? 従来モデルから22kgの軽量化を実現

 2023年シーズンの電動バイクレースMotoEは、2022年までの「FIM Enel MotoE World Cup」から名称が変わり、「FIM Enel MotoE World Championship」と、世界選手権に格上げされました。そして使用される電動レーサーはEnergica(エネルジカ)からドゥカティがマシン供給メーカーとなり、ドゥカティがMotoEのために開発した「V21L」で争われます。

 最高出力は110kW(150HP)、最大トルクは140Nmを発揮し、ムジェロ・サーキットでは275km/hの最高速を記録したということです。

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 なお、2022年までのエネルジカ「Ego Corsa(エゴ・コルサ)」によって記録された最高速は、同じくムジェロ・サーキットでの272.7km/hで、「V21L」は早くもこの記録を超えたことになります。

「V21L」の特長のひとつは、車両重量が軽量化されたことです。MotoE初年度の2019年から2022年までワンメイクマシンサプライヤーを担っていた「Energica Motor Company(エネルジカ・モーター・カンパニー)」のエゴ・コルサの車両重量は260kgからスタートし、4年目の2022年には247kgとなっていました。

 ドゥカティが電動レーサーを開発するにあたり、MotoEプロモーターであるドルナスポーツから要望されたことのひとつは「以前のバイクよりも軽いこと」で、ドルナが当初掲げた目標の車両重量は237kg以下だったということです。しかしドゥカティはその目標値を下回る車両重量225kgを実現し、2022年型エゴ・コルサよりも22kg軽いことになります。

 軽量化はライダーにとっての扱いやすさやパフォーマンスに影響するところでもありますが、安全性への寄与という重要な側面も担っています。これまでのMotoEのレースでは、例えば転倒時、MotoGPクラスであればグラベルに滑っていくような状況であっても、重さゆえにバイクがコース上にとどまってしまう危険なケースが散見されていました。もちろん車両重量225kgというのはレーシングバイクとしては軽くないかもしれませんが、22kg軽量化の貢献はあるはずです。

 また、搭載されるバッテリーパックはフレームの一部となっており、バイクの大きな構成要素となっています。これもまた、ドゥカティが開発する「V21L」らしい特徴のひとつだと言えるでしょう。

「これは、バイクにフレームがないというコンセプトのようなものです。従来の(電動)バイクでは、バッテリーパックはフレームの中に収められていました。しかし、これがドゥカティらしいフィロソフィーなのです。つまり、フレームがないということがね。パニガーレだって、前側のフレームはごく小さなものです」

 2023年3月17日、イタリアのヴァッレルンガで行なわれたMotoE発表会で、ドゥカティCEOのクラウディオ・ドメニカリ氏はそう説明していました。

 では、「V21L」のベースとなったバイクはあるのでしょうか。

 MotoGP開幕戦ポルトガルGPの金曜日夕刻に行なわれたドゥカティのeモビリティ・プロジェクトの発表会で、ロベルト・カネ氏(ドゥカティ eモビリティ・ディレクター)に尋ねると、「これは全く新しいバイクですよ」という回答でした。

「ゼロから設計したバイクです。当初はパニガーレV4のパーツが使えると思ってスタートしましたが、そのパーツを使っていたらこういうキャラクターのバイクにはならなかったでしょう」

 ドゥカティはゼロからMotoEのための電動レーサーを作り上げたということです。もちろん、その中にはMotoGPやスーパーバイク世界選手権(WSBK)で培われたテクノロジーが反映されていますが、同時に電動バイクであることも追求されたレーシングバイクではないでしょうか。

 特徴的なリアブレーキもその一例です。「V21L」はリアブレーキキャリパーやブレーキディスクを備えていません。リアブレーキをかけるとモーターによるブレーキが作用し、そのときに発生するエネルギーは回生します。「電動バイクならでは」のリアブレーキだと言えるでしょう。フィーリングについてはライダーだけが知るところですが、電動バイクという新しいテクノロジーへの挑戦のように見えます。

 そして「V21L」にはトラクションコントロールをはじめ、スライドコントロールやウイリーコントロールなどの電子制御が搭載されています。これはドゥカティ・コルセがMotoGPやWSBKのレースのために開発されてきたレース仕様のものです。電子制御と言うと搭載されて当然と考えられるかもしれませんが、2022年まではトラクションコントロールがなかったため、MotoEマシンとしては初搭載となります。

 MotoEは5月の初戦フランスを控え、3月上旬にスペインのヘレスで、4月上旬に同じくスペインのカタルーニャで、それぞれ3日間のテストを終えています。このテストでは、すでにヘレス、カタルーニャでのMotoEのオールタイム・ラップ・レコードを更新するタイムが計測されました。

 さて、ドゥカティが電動レーサーを開発したことで気になるのは、市販化の話でしょう。こちらについては、3月17日にイタリアのヴァッレルンガで行なわれたMotoE発表会で、ドメニカリ氏がこう明言しています。

「答えは明快です。このプロジェクトは目標設定から始まっていて、市販車にも同じような目標を設定しました。正直なところ、現在のテクノロジーは、この目標を達成するところに至っていません。なぜこの目標を達成したいのかと言うと、私たちは街中でバイクを走らせるときに、このバイクと同じような感覚と感情を抱いてもらいたいと思っているからなんです。5年後、7年後、8年後……いつ、とはっきり言うのは難しいですが、目標が達成されればすぐに、情熱的なドカティスタに(電動)バイクをお見せすることになるでしょう」

 市販化にはより軽いバッテリーが必要となり、それは開発中だということです。

「もうすぐドゥカティの電動バイクを街中で見られるわけじゃないんですね?」という質問に対するドメニカリ氏の回答は、「すぐにというわけじゃないですね」でした。

 少なくとも、ドゥカティがすでに市販電動バイクに向けて動いていることは確かなのです。

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みんなのコメント

1件
  • 画像を見る限りではリアホイールには車速センサーしか付いていない。リアブレーキ代わりの回生ブレーキは車体側の駆動モーターで行われているようだが、これはエンジン車で言うところのエンブレ。
    チェーン駆動の場合はリアブレーキとエンジンブレーキでは、同じようの減速する場合でもリアサスの動きが逆に働くはず。その辺りはどう捉えられてるんだろう。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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