昭和は遠くなりにけり・・・か。以前に連載した「昭和の名車」では、紹介しきれなかったクルマはまだ数多くある。そこで、1960年代以降の隠れた名車を順次紹介していこう。今回は「ホンダ クイントインテグラ」だ。
ホンダ クイントインテグラ(AV型):昭和60年(1985年)2月発売
1980年(昭和55年)に誕生したホンダ クイントは、「80年代にふさわしい『高品質の国際車』を開発する」という高い志とは裏腹に、5ドアHB(ハッチバック)という形態が時期尚早だったか日本市場では受け入れられず、販売は低迷する。
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そのイメージを一新するため、1985年のフルモデルチェンジではボディを3ドアHBに絞り、全車に4バルブDOHCエンジンを搭載してスポーツ性を前面に打ち出すことになる。車名も「スタイリング/居住性/走りなどクルマが持つ本来の機能を、ホンダの最新技術で高い水準にまとめあげた(統合=インテグレート)」ことを印象づけるため、クイントインテグラに改められた。
エンジンはシビック&CR-X Siで既に定評のあるZC型1.6L 直4 DOHCで、GSi/RSiに搭載されるPGM-FI仕様は当時の1.6Lクラス最強となる135psを発生した。ZC型の特徴は、バルブリフト量を大きくとれる4バルブ内側支点スイングアーム方式のシリンダーヘッドで吸入効率を高めたほか、カム形状に沿って内部を肉抜きした異形中空カムシャフトや小型軽量の4連アルミシリンダーブロックの採用で軽量化をはかり、高性能と小型軽量化を両立した点にある。
さらに、ペントルーフ形燃焼室やセンタープラグ方式の採用、吸排気の脈動効果にすぐれた等長インテークマニホールドや、4-2-1-2のエキゾーストシステムの採用などがあいまって、高出力と10モード燃費14.0km/L(GSi 5速MT車)の優れた経済性を同時に達成している。
一方、ZC/LS用に今回新開発されたシングルキャブレター仕様は、専用のエキゾーストマニホールドを採用。4バルブの吹けあがりの良さはそのままに、低・中速など実用域での使いやすさと燃費の向上をはかって、マイルドで爽快な走りをひき出していた。10モード燃費はPGM-FI仕様を上回る15.4km/L(LS 5速MT車)を達成している。
組み合わされるトランスミッションは全車に5速MTと3速ATを設定。とくに5速MTの5万円高で選択できるATはロックアップ機構付きで、DOHCのパワーをダイレクトに伝達し小気味良いレスポンスを発揮する特性で好評を得た。
サスペンションはホンダがスポルテックと呼ぶ形式で、シビック&CR-Xと基本的に同じだが、細部にいたるまで専用チューニングを実施。さらに195/60R14 85Hスチールラジアルタイヤ(GSi)と前ベンチレーテッドの4輪ディスクブレーキ(PGM-FI仕様)を標準採用して、車格に合わせたスポーティでありながらしっとりとした走行感を実現している。
スタイリングは、2分割フロントグリルを持つショートノーズ/低ボンネットに加え、バンパーとほぼ同じ高さにセットしたリトラクダブルヘッドライトや、軽く耐衝撃性に優れたH.P.ブレンド(超耐候性をもつ変性ポリプロピレン)製カラードエアロバンパー(GSi/ZS)、ラップラウンドリアウインドーとノッチデッキハイテールにセットしたテールゲートスポイラー(RSi)などで新鮮な個性を主張した。
室内は、ホンダ独創のMM(マンマキシマム/メカミニマム)思想でスペース効率を追求。2450mmのロングホイールベースで広々とした居住空間を確保したほか、可倒式リアシートバックを倒せば、VDAで最大431Lという大きなラゲッジスペースとなるなど、3ドアHBの枠を超えた多用途性も実現している。
この後、1985年10月に3ドアのホイールベースを70mm延長した5ドアHBを追加、1986年10月には3ボックスの4ドアセダンを追加してシリーズの充実を図るが、他を圧する決め手に欠けた。その結果、1989年のフルモデルチェンジで車名からクイントを外しインテグラにして、一段とスポーツ色を鮮明にしていく。
ホンダ クイントインテグラ GSi 主要諸元
●全長×全幅×全高:4280×1665×1345mm
●ホイールベース:2450mm
●重量:960kg
●エンジン型式・種類:ZC型・直4 DOHC
●排気量:1590cc
●最高出力:135ps/6500rpm(ネット)
●最大トルク:15.5kgm/5000rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:195/60R14 85H
●価格:157万5000円
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