Mercedes-Benz S-Class
メルセデス・ベンツ Sクラス
新型メルセデス・ベンツ Sクラスの最新情報・第2弾!「世界初」の技術を渡辺慎太郎がいち早く解説
次世代Sクラスで一段と進化する安全
メルセデス・ベンツ新型Sクラスは2020年9月に正式発表が予定されているけれど、それに先だってティザー発表を開始している。前回ここにも書いた新世代HMI(ヒューマン マシン インターフェース)もそのひとつ。そして今回は第2弾として、安全に関する装備の数々が発表された。大きくは、アクティブサスペンションを使った側面衝突の衝撃軽減システム、後輪操舵機構、そして新しいエアバッグの3つである。
“E-ACTIVE BODY CONTROL”は現行GLEと共にデビューを果たし、GLSなどにも搭載される電子制御式サスペンションシステムである。ハードウェアは基本的にエアサスの“AIRMATIC”サスペンションにとてもよく似ているものの、4輪それぞれにひとつずつ電動油圧式オイルポンプを配置して、ダンパーの減衰力のみならずピストンのストローク量まで可変できるところがこのサスペンションの大きな特徴となる。
毎秒1000回状況をチェックする“目”
本来、車高の調整はエアサスペンションの空気ばねを制御することで行うが、このシステムはダンパー自体でも車高調整が可能で、ばねレート/減衰力/車高を4輪個別にコントロールできる。これにより、ピッチ/ヨー方向のみならず、ダイブ/スクォートといった姿勢も制御できるようになった。
5つのマルチコアプロセッサ、20以上のセンサー、ステレオカメラにより、E-ACTIVE BODY CONTROLは、毎秒1000回という速さで路面状況や走行状態をモニターし、最適なサスペンション・セッティングを随時提供する。要するにいわゆるアクティブ・サスペンションであり、メルセデスもこれを“フルアクティブ・サスペンション”と呼ぶ。
既存のシステムをメルセデスがあえて使うワケ
そもそもアクティブサスペンションとはダンパーのみならず、ばねも能動的に動いてばねレートを可変できる機構。メルセデスはABC(アクティブ・ボディ・コントロール)という電子制御式サスペンションを持っていたが、これは通常の金属ばねを使っているので“セミ・アクティブ”と称していた。
アクティブサスペンションは一般的に金属ばねの代わりに油圧制御式とし、結果として構造やコントロールが複雑になる傾向が見られるが、メルセデスのE-ACTIVE BODY CONTROLのミソは、既存のAIRMATICサスペンションにいくつかのパーツを追加して専用のソフトウェアを用意するだけでアクティブ・サスペンションにコンバートできる点にある。コストも抑えられるし、AIRMATICは導入してからすでに長い年月が経っていて耐久性も担保されている。ABCは導入直後にトラブルに悩まされた経験があり、メルセデスとしてはその二の舞だけは踏みたくなかったのだろうと想像できる。
体の一番頑丈な部分でショックを受け止める
なお、ステレオカメラで前方の路面状況をスキャンしてあらかじめばねレートと減衰力などを演算して路面からの入力に備えることでフラットライドな乗り心地を提供する“ROAD SURFACE SCAN”や、コーナリング中に荷重がかかって縮みこむイン側のサスペンションを持ち上げて、ボディを水平に保つ“CURVE”なども用意されている。特に快適性が重視されるSクラスには不可欠な装備という判断だろう。
このE-ACTIVE BODY CONTROLを使った新たな安全装備が“PRE-SAFEインパルスサイド”である。ボディサイドをモニタリングするレーダーセンサーが側面衝突の危険性を感知すると、車高を最大80mmまで瞬時に上げる機構で、ボディ側面でもっとも頑丈なサイドシル部分で衝撃を受けるようにすることで、キャビンやドアの変形を軽減して乗員を守るというもの。
エアサスの場合、通常は車高調整を空気ばねの圧力調整で行うが、これではそれなりの時間がかかってしまう。E-ACTIVE BODY CONTROLは前述のようにダンパーでも車高調整が可能なので、電動油圧式アクチュエーターを使ってダンパーを伸ばすことで速やかな車高アップを可能としている。このシステムが48Vで動いているのも、こうした素速い反応を実現するためでもある。ちなみに、このシステムを「世界初」と言わないのは、アウディA8がすでに同様の機構を装備しているからだ。
最大10度まで切れる後輪操舵
後輪操舵はいまやちっとも珍しくない機構ではあるものの、メルセデスではその採用に消極的だった(現行モデルではAMGの一部車種のみ)。ところがついに、新型Sクラスにそれが装備される運びとなった。
60km/hを境に逆位相と同位相を切り替えることで、駐車の容易性と操縦性の向上を狙うというロジックは他メーカーと変わりないが、最大の特徴はモーターとベルトを使い後輪の操舵角を最大10度(停止からパーキングスピードの場合)に設定しているという点。これにより、ホイールベースの長いSクラスでも最小回転半径が5.5mを切り、Aクラスとほぼ同等になったという。
通常の後輪操舵の操舵角はだいたい2~4度なので目で見ても分かるか分からないかくらいなのだけれど、それと比べると新型Sクラスの10度というのははっきり目視できるほど大きな舵角である。なお後輪操舵はオプションで、操舵角も最大4.5度と10度のどちらかが選べるようになっているそうだ。
やんごとなき後席乗員へ最大の安全性を
後席用のフロントエアバッグは新型Sクラスが世界初となる装備である。フロントシートの後ろ側に収められたエアバッグは箱型に展開。箱型を維持するフーレム部分にはガスが充填されていてその形状をキープする一方、後席乗員の頭部を受ける箱の中央部分には空気が充填されているのでクッション性を持っているという。
エアバッグに装着されているバルブは特許取得済みで、速やかに展開するものの空気が抜けにくい構造となっている。特に大切な客人が座る機会の多い新型Sクラスの後席に他のどのクルマよりも高い衝突安全性が確保されたとメルセデスは胸を張る。
歴代Sクラスが掲げる金科玉条
メルセデスはこれまでも、先進の安全装備はまずSクラスに装備して、やがて裾野のモデルにまで採用を広げていくというやり方を採ってきた。後席用フロントエアバッグに関しても同じように普及させたいものの、スペース的な問題(後席と前席が近すぎるとかえって危険な場合もあるため)などクリアするべき課題があり、例えばすぐにAクラスへ採用というわけにはいかないようだ。なお、後席フロントエアバッグの他に、運転席と助手席の間にもセンターエアバッグが設けられている(※仕向地によって装備不可の場合もあり)。
サルーンとしての極上の乗り心地と世界最高レベルの衝突安全性。振り返ってみれば、これまでのSクラスはいずれも発表当時、このふたつは必ずおさえていた。もうじき会える新型Sクラスもまた、この部分に関しては外していないようである。
REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)
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みんなのコメント
意外と想定を超える技術は無かったですね。
逆に言えばライバル車は出し抜くチャンス到来ですね。