ドゥカティ史上、最軽量となるVツインエンジンが登場
ドゥカティに憧れはあるものの、手が出ない……。レースで圧倒的な強さを発揮するドゥカティのイメージや高価な価格がそう思わせる要因かもしれません。また、実際に試乗して、その独特のフィーリングに「ちょっと手に追えない」と思った人も少なくないでしょう。
【画像】ドゥカティ完全新設計「V2」エンジンを画像で見る(16枚)
しかし、その敷居の高さもドゥカティの魅力のひとつ。昔は「ドゥカティはスパルタン」とまで言われ、確かに乗りこなすには相応のスキルか我慢が必要だったのです。今では随分と身近になりましたが、それでも国産車と比較すると、まだまだ乗りやすさはありません。
そんなドゥカティの印象がガラリと変わりそうなエンジンが登場しました。完全新設計で排気量890ccの「V2」と命名されたエンジンは、ドゥカティのVツインエンジン史上もっともコンパクトかつ軽量。出力特性も低速域からの扱いやすさを備え、それでいてしっかりとパワーを発揮しています。
「ここからドゥカティの新しい章がスタートする」そんなスローガンが与えられた「V2」の重量は54.5kgに収められ、「パニガーレV2」などに搭載されていた「スーパークワドロ」エンジンより9.4kgも軽く仕上がっているのです。
ちなみにパワーは「V2」が120ps、「スーパークワドロ」は155psですが、一般のライダーにとってはパワーよりも軽さがもたらすメリットの方が大きいに違いなく、50年以上に渡ってVツイン(昔はLツインと呼ばれていた)を作り続けてきたドゥカティが全く新しい方向へ舵を切ったと言えるでしょう。
「V2」搭載モデルは既存のモデルよりも軽く、コンパクト。さらに乗りやすい!
かつてのドゥカティのミドルクラスのVツインエンジンは、大排気量かつハイパフォーマンスエンジンがベースで、そこから排気量&スペックを落としていました。そのためエンジンが大きく重かったのです。
しかし、新型「V2」はミドルクラス専用の設計です。これまで何度もイタリアのドゥカティ本社(ボローニャ)を訪れた筆者(小川勤)ですが、今回のようにエンジン単体の発表会は初めてです。
Engine Department(エンジンの設計や研究&開発を行なう部屋)には様々なエンジンが並んでいますが、一目で他のエンジンよりもコンパクトであることが分かります。
さらに、これまでドゥカティが乗りやすさや扱いやすさを全面に謳ったVツインエンジンがあったかを考えてみると、ちょっと想像がつきません。比較的乗りやすく仕上がっていた「モンスター」なども、他メーカーの同排気量の多気筒エンジンと比較すると、低中速はギクシャクし、頻繁なギアチェンジが強いられます。しっかりとスロットルを開けると抜群の気持ち良さを与えてくれますが、それには相応のスキルが必要だったのです。
それが新型「V2」では、低速から豊かなトルクを発揮するそうです。最大トルクの70%を3000rpmで獲得し、3500~11000rpmの間で最大トルクの80%を下回ることはないと言います。
また、このコンパクトかつ軽量なエンジンを搭載する新型モデルは、バイク自体も軽く、コンパクトに仕上がるとのこと。これは楽しみでしかありません。
軽さと扱いやすさを得るため、新たなる技術にチャレンジ
新型「V2」エンジンを見ていて、特にコンパクトに感じるのはヘッド周りです。これはバルブ開閉機構にスプリングを採用していることが大きく影響しています。これまでドゥカティは、バルブ開閉機構に「デスモドローミック」という複雑な機構を多くのエンジンで使ってきましたが、「V2」には採用されていません。
新たに採用されたスプリングによるバルブ開閉機構には、DLCコーティングされたフィンガーフォロワーロッカーアームとIVT(インテーク・バリアブル・バルブタイミング)、さらにドゥカティ初の中空チタンバルブなどを採用しています。これが部品点数を軽減し、ヘッドをコンパクト化。また低中速の扱いやすさを実現しています。
また、シリンダーはクランクケースと一体型で、アルミライナーを介してヘッドとクランケースを直結する構造になっています。エンジンはこれまでのVツインよりも進行方向に対して後ろ側に20°傾けることで重量バランスを最適化。さらに高燃費でメンテナンスのスパンも広くなっているそうです。
このエンジンのプレゼンの翌日に、デザイン(海外では設計の意味)の責任者であるアンドレア・フェラリージさんに「V2は近い将来、ドゥカティの中で最も生産台数の多いエンジンになりますか?」と聞いてみたところ「恐らくそうなるだろうね」とのこと。
「V2」の全貌はEICMA(ミラノショー)で明らかになり、その後も数々のバイクに搭載されていくことになるでしょう。
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