2020年12月21日に閣議決定された「令和3年度税制改正の大綱」によると、これまでエコカー減税の対象となっていたクリーンディーゼル車の特例が廃止になることが決まった。それによると、2023年度以降のディーゼル車において優遇措置の対象外になるそうだ。
国内では乗用車のクリーンディーゼルモデルは、トヨタと三菱が一部に、マツダが全ラインナップにそろえる状態となっている。クリーンディーゼルがエコカー減税の対象から外れた場合に、販売面で最もダメージが大きいのはマツダではなかろうか。
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SKYACTIV-D 2.2を搭載する『CX-5』。マツダのクリーンディーゼルエンジンは、2020年の改良で200psへとパワーアップされ、さらに磨きをかけられている
政府も電動化に大きく舵を切っている状況から、クリーンディーゼルには厳しい時代がやってくると思うが、このエコカー減税の対象から外れることで、乗用車のクリーンディーゼルは終幕に向かうのか? それともまだ生き残る秘策はあるのか? 考察していきたい。
文/高根英幸
写真/MAZDA、編集部
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■クリーンディーゼルのエコカー減税廃止による影響は?
純エンジン車の販売があと10年で禁止されるという政策が中国、米国カリフォルニア州、欧州などで掲げられてから、消費者の関心は一気にEVにシフトした感がある。
10年後に走れなくなってしまうのではなく、ましてやプラグインハイブリッドやレンジエクステンダーEVとして生産が続けられると思われるが、完全にエンジンの将来性を見限るような報道もあって、そんな消費者の印象を誘導しているようにも思えるほどだ。
それに追い討ちを掛けるようにエコカー減税の対象終了が明らかにされた。これは登録時の重量税と環境性能割、そしてグリーン化特例という名で翌年度の自動車税の軽減されている制度から除外されるというもの。ただし一気に打ち切りになる訳ではなく、環境性能割に関しては徐々に軽減率が下げられ、2023年には終了するようだ。
EVとプラグインハイブリッドは恩恵が大きい、このエコカー減税、実際にはクリーンディーゼルのエコカー減税は、それほど大きくない(それでも車両価格400万円では環境性能割は最大で12万円になる)。ハイブリッド車やマイルドハイブリッド車も同様だから、このエコカー減税の改訂自体は納得できるものではある。
そんな購入時の諸費用負担増よりもイメージダウンのほうが影響は大きいのだ。これまでクリーンディーゼルを選んでいたユーザーも、5年後の下取り価格を心配して、買い替え時にはディーゼルを選びにくい状況になっているのではないだろうか。
■自動車メーカーの対応は、各社で異なるようだが……
三菱自動車はせっかく開発したクリーンディーゼルを進化させて環境性能を高める道を諦めてしまったようだ。トヨタは『ランクル』や『ハイエース』にクリーンディーゼルを用意しているが、今後はラインナップから外れることも十分考えられる。
2.2Lコモンレール式DI-Dクリーンディーゼルターボエンジンを搭載する『デリカD:5』。エクリプスクロスのディーゼル車が廃止されたことから、いずれはデリカも……という可能性が考えられる
国内ではディーゼルエンジンを積極的に展開してきたのが、マツダだ。「SKYACTIV-D」の名称で、これまでにない低圧縮ディーゼルを実現し、酸化触媒とDPFだけで厳しい排ガス規制をクリアしてきた実績がある。それでも北米市場では高価なSCR触媒を無理やり装着させられて、コストパフォーマンスの高さを台なしにされた結果、ガソリン価格の安さもあって、販売は伸び悩んで2021年1月にディーゼルの販売を終了したという経緯がある。
『CX-5』に搭載されるSKYACTIV-D2.2のクリーンディーゼルエンジン。可変ジオメトリーターボチャージャーなどにより、スムーズで伸びやかな走りを実現している
考えてみれば、発電用とはいえロータリーエンジンを復活させてきたら、マツダはガソリンレシプロエンジン(ターボ/NA)、クリーンディーゼルエンジン、ロータリーエンジン、EVと、4種類ものパワートレーンを持つことになる。さらにハイブリッド機構もマイルドハイブリッドのほか、P2タイプ(エンジンと変速機の間にモーターを持つ形式)のフルハイブリッドの発売も準備されている。
いずれP4タイプ(前輪をエンジン、後輪をモーターで駆動する電動4WD)も登場させてPHEV化するだろうし、ロータリーエンジンでシリーズハイブリッド(個人的には、コレがかなり有力だと思う)を作れば、日産のノートe-Powerとはまた違ったいいエコカーを作り上げられるだろう。
ともかくこれだけ手駒を持っていれば、今後の排ガス規制に対応させていくことは、かなり有利なはずだ。レンジエクステンダーEVを発売すればCAFE燃費もグンと楽になるだろうし、罰金を払わなくて済めば、その分の費用をまたパワートレーンの開発に回せる。
ただしディーゼルエンジンだけを見れば、状況は明るくないように見える。けれども、決して悲観的に思っていないのだ、マツダ社内の人々は。それは何故なのか、筆者の体感で説明しよう。
■SKYACTIV-Xの技術を注ぎ込んだ革新的なディーゼルを開発?
それと、もうひとつの希望は、マツダがSKYACTIV-Dの第2世代登場を着々と準備していることだ。最近、マツダの発表会や試乗会に参加すると、「次はディーゼルで……」とか「今度のSKYACTIV-Dは……」という次世代ディーゼルに関する匂わせワードが幾度も出てくるのだ。
「SKYACTIV-X」は、ガソリン直噴とクリーンディーゼルの燃焼技術を持ち寄って、極めてシビアな燃焼状態を可視化することで緻密な燃焼の制御に成功させた。これによってマツダの燃焼技術は世界トップレベルに到達したのだ。そして今度はそれを利用してディーゼルエンジンを進化させる、ということのようだ。
マツダの新世代エンジン「SKYACTIV-X」。世界で初めてガソリンエンジンの圧縮着火を実用化した。効率の悪い領域をカバーするため、マイルドハイブリッドでアシストしている
2020年からこうした話が出ているのだから、相当な進化ぶりを果たしていると見ていいのではないだろうか。
従来の考えでは、低速トルクに優れたディーゼルではマイルドハイブリッドを組み合せても、燃費改善の恩恵は薄い。またフルハイブリッドにするなら一気に100万円単位で価格上昇させなければ実現は難しいから、発売しても収益が上がるほど売れなければ、開発して販売するメリットはなくなってしまう。ガソリンエンジンと比べ、高コストなディーゼルエンジンゆえの問題点があるハズなのだ。
しかし、まるで合言葉のように「次はディーゼルで……」と伝えてくるマツダのエンジニアたちの姿勢を見ると、第2世代のSKYACTIV-Dは、どんな仕組みを備えて登場するのだろう、と想像してワクワクさえしてくる。
エンジンにあまり興味がない人はご存知ないかもしれないが、ガソリンエンジン以上に燃料の自由度が高いディーゼルは、バイオ燃料なども導入しやすく、化石燃料以外の液体燃料を利用するなら、むしろ向いているエンジンなのである。
またSKYACTIV-Xでスーパーリーンバーンを実現できてはいるが、基本的に燃焼室全体で燃焼を行なわなければならないガソリンエンジンに対し、燃焼室の一部で燃焼を行なって周囲の空気は熱膨張することで熱エネルギーを吸収させられるディーゼルは、基本的に熱効率に優れる。
確かに今はEVに関心が集まっていて、ディーゼルエンジンはちょっと分が悪い。しかし液体燃料も水素も使って、電力を効率よく使わなければ、電力も無駄になるしバッテリーの素材も枯渇する。
エネルギーの多様化を目指さなくては、本当の意味での地球環境に優しいモビリティ社会は達成できない。過熱気味のEVブームが落ち着けば、そうした現実に目を向けてくれる人が増えてエンジン車の立場も見直されるのでは、と筆者は思っている。
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みんなのコメント
どこかで増税するから意味がない。
それより13年超の重課税も廃止してくれ