2022年7月14日、メルセデス・ベンツ日本はBEV(電気自動車)ブランド「EQ」シリーズ第3弾となるメルセデス・ベンツ「EQB」を発表した。コンパクトなSUVルックスと7人乗りの相性は、やはり格別。フルバッテリーEVならではの走りの醍醐味も、充分満足のいくものだった。
ICEとの差別化は最小限。3列目はやや手狭に
メルセデスのBEV第3弾として登場したのは、「GLB」をベースとするBEV版の「EQB」だ。ラインアップおよび価格は、788万円の「EQB250」と870万円の「EQB350 4MATIC」となる。
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GLBと同じく3列シートを備えるのが、EQBの最大の特徴と言えるだろう。フルバッテリーEVで3列シート車というのは、ただでさえ珍しい。このサイズながら最大で7人が乗車できるのは、ライバルたちに対するEQBの強みだ。GLBゆずりのスクエアなフォルムと乗車定員に、魅力を感じる人は少なくないことだろう。
エクステリアはGLBに対してフロントグリルやリアエンド、ホイールなど要所となる部分がいくつか差別化されていて、似ているもののひとめで区別がつく。
インテリアも基本的には共通イメージながら、電動化にあわせた表示や機能が備えられているほか、エアコンの吹き出し口等を電動車らしく銅線を想起させるカッパー色とするなど、見た目にもいくつか差別化が図られている。
また、一見すると車内のつくりも同じように見えるが、駆動用バッテリーの搭載をはじめBEV化によって2列目シートより後方のフロアが高くなっている。これにより居住空間がGLBに比べて微妙に小さくなっていて、GLBでは身長168cmまで対応するとしていた3列目シートが、EQBでは165cmまでとなった。実際に座ってみるとたしかにクリアランスが微妙に違う。
つながる装備が充実。電動化に合わせたコマンド入力も採用
EQB250とEQB350ではパワートレインがたいぶ違って、実は先発のEQAとも別物となる。66.5kWhの駆動用バッテリーは共通ながら、EQB250は190psの最高出力と385Nmの最大トルクを発生する新設計の永久磁石同期モーターで前輪を駆動する。この新しい同期モーターの採用も効いて、WLTCモード航続距離は、528kmに達している。
対するEQB350は、誘導モーターをフロントに、永久磁石同期モーターをリアに搭載し、4輪を駆動する。システム最高出力は292ps、最大トルクは520Nmと強力ながら、こちらも468kmの航続距離を実現している。
装備については、58万円の価格のAMGラインパッケージを装着すると、スタイリング、サスペンション、タイヤ/ホイール、ステアリング、シートなどが変わる。さらに19万円プラスのAMGレザーエクスクルーシブパッケージを選択すると、シートがブラックの本革仕様となる。
先進運転支援装備もメルセデスらしくぬかりはない。また、独自の音声認識システムである「MBUX」には、電動化に合わせていくつかの専用のコマンドも設定されている。
また今回、iPhoneを使って、あらかじめ室内を快適な温度にしておいたり、カーナビの目的地を遠隔設定するなど、快適なドライブをサポートしてくれるテレマティクスサービスの「Mercedes me connect(メルセデス ミー コネクト)の機能を試してみた。カーナビについては、3つの単語で場所を正確に表すという画期的な位置情報テクノロジー「What 3 Ward」を採用している点にも注目だ。どういうものか興味のある人はぜひ調べてみて欲しい。
ロングランが得意な「250」ながら、力強さにも妥協はない
EQB250をドライブすると、BEVらしく静かでなめらかで力強い走りはもちろんとして、関連性の高い先発のEQAに対しても印象は少なからず違って、新しいモーターの恩恵か全体的にスムーズになっていることを感じる。加減速の制御が緻密になり、繊細な操作にも応えてくれることが、ごく普通に流していても感じられる。車内の静けさも高まっているように感じられた。
むろん足の長さが魅力のEQB250ではあるが、踏み込めばトルクステアを感じるほど力強いあたりも、さすがは最新のBEVである。
走行特性はダイナミックセレクトで「ECO」、「Comfort」、「Sport」の3段階と効率、快適性、ダイナミズムを個別に設定できる「Individual」の4通りを選択できる。回生レベルも4通りにパドルで選択できて、中でもレーダーが検知した先行車両との車間距離や走行状況に応じて回生レベルを自動調整するという「D Auto」がなかなか便利。これに設定しておけばどこでも違和感なく走れて非常に重宝する。
一方のEQB350は、0-100km/h加速タイムの公表値が3秒も速いだけあって、力強さがだいぶ違う。加速の仕方も後ろから押し出しながらフロントでひっぱるので感覚がぜんぜん違って、トルクステアもだいぶ軽減されている。
AMGラインパッケージの装着車と非装着車では、タイヤ/ホイールが20インチと18インチ、スポーツサスペンションとコンフォートサスペンションという違いもある。
文字にすると装着車のほうが乗り心地は硬そうに感じるところだが、スポーツサスペンションにはアジャスタブルダンピングシステムが備わり、路面の状況に応じて減衰力を最適に調整するほか、モードの切り替えによりソフトめに設定することもできて、フラット感もあり全体としては装着車のほうが好印象だった。
EQBは、もともと人気の高いGLBをベースとしており、そのBEV版というだけで興味を持っている人は少なくないはず。加えて後発である分、より新しいテクノロジーが与えられ、機能も充実していて、完成度も非常に高かったことをお伝えしておきたい。(文:岡本幸一郎/写真:伊藤嘉啓)
■メルセデス・ベンツ EQB 250【EQB 350 4マティック】 主要諸元
●全長×全幅×全高:4685×1835×1705mm
●ホイールベース:2830mm
●車両重量:2100kg【2160kg】
●搭載パワートレーン:フロントモーター【2モーター<フロント+リア>】
●最高出力:140kW(190ps)/3550-11130rpm【215kW(292ps)<143kW/5800-7600rpm+72kW/4500-14100rpm>】
●最大トルク:385Nm/0-3550rpm【520Nm<370Nm/0-3600rpm+150Nm/0-4500rpm>】
●バッテリー総電力量:66.5kWh
●WLTCモード航続距離:520km【468km】
●駆動方式:FF【4WD】
●タイヤサイズ:235/55R18
●価格 788万円【870万円】
[ アルバム : メルセデス・ベンツ EQB試乗会 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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