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BMW M5 vs メルセデスAMG E 63 S、永遠のライバルが富士スピードウェイで真剣勝負! 【Playback GENROQ 2018】

掲載 更新 7
BMW M5 vs メルセデスAMG E 63 S、永遠のライバルが富士スピードウェイで真剣勝負! 【Playback GENROQ 2018】

BMW M5 × Mercedes-AMG E 63 S 4MATIC+

BMW M5 × メルセデスAMG E 63 S 4マティック+

三者三様のスーパーセダン、BMW M5/メルセデスAMG E 63 S/アルピナ B5をストリートで測る 【Playback GENROQ 2018】

異次元の領域へ

従来のRWDからAWDに駆動方式を変更した新型M5がついに日本に上陸した。600ps発生する4.4リッターV8ツインターボを積むM5の最大のライバルは、なんといってもAMGの技術力を結集させたE 63 S 4MATIC+である。高速サーキットの富士スピードウェイでまずは限界域の実力を試した。

「モンスターサルーンの頂上対決」

リーガエスパニョーラのレアルマドリード対FCバルセロナ、バスケットボールならロサンゼルス・レイカーズ対ボストン・セルティックス、読売ジャイアンツ対阪神タイガース・・・。スポーツには伝統の1戦が数多あるが、クルマの世界にもそれはある。モンスターサルーンの頂上対決といえば威圧的な雰囲気と圧倒的なパワーが絡み合うEセグメントが象徴的。中でもメルセデスAMG対BMW Mは永遠のライバル関係にある。

先攻は昨年に本邦上陸を果たしたメルセデスAMG E 63 S 4マティック+である。4.0リッターV8ツインターボ、M177型ユニットは最高出力612psを発生。9速ATと4WDシステム、そしてリヤに仕込まれた電制LSDによって万全を期す。後攻のF90型BMW M5はライバルより半年ほど遅れて上陸を果たしている。4.4リッターV8ツインターボ、S63B44ユニットの最高出力はついに600psに到達し、最大トルクは750Nmを誇る。8速ATや電制LSDといったスペックもAMGのそれに近いが、新型M5の注目のトピックはMのサルーンが初めて4WDを備えた点だろう。

「クルマ全体の出来を論ずる前に、ドリフト比べをした方がクルマの主旨に沿っている?」

両者とも4WDとなってスペック的にはついにガチンコの様相だが、必ずしもBMWが「対決」を意識したわけではなさそうだ。というのも新型M5に搭載されたM xドライブは通常の4WDモード以外に、前輪への駆動配分がゼロとなるFRモードが選べるからである。ドライバーが求めればBMWが追求し続けてきた純粋なドライブフィールを愉しむことができ、なんとなればドリフトだって可能なのである。

対するAMGのアプローチはあからさまで、完全な後輪駆動を実現した状態を「ドリフトモード」と謳ってライバルを威嚇している。となればクルマ全体の出来を論ずる前に、いっそのことドリフト比べをした方がクルマの主旨に沿っている?

幸いなことにテスト当日のFSWは所々に川が流れるほどのウェットコンディションだった。そこでホームストレートや高速コーナーでは4WDの安定性を試し、タイトなコーナーが続くセクター3ではFRを試すことにした。フルスロットルで猛然と1コーナーを目指すE 63 Sは、目を瞑っていてもそれとわかる巌のようなメルセデスの感触だった。1コーナー進入ではフロントの舵の効きは良かったのだが、いきなりリヤが大きく流れた。AMGダイナミックセレクトはコンフォートのまま、もちろんESPも入っているにも関らず・・・。かなり際どい路面コンディションであることは確かである。

「公道では必要不可欠と思えなかった4WDシステムが生命線のように感じられる」

セクター3が近づいたところでレースモード+ESPオフでドリフトモードを試す。タイトコーナーの立ち上がりで微かにスロットルを開けるだけでいとも簡単にリヤが滑り出すが、そこからパーシャルスロットルでドリフトアングルを維持することが難しい。尻が出たら最後、想像以上に角度がついてスピードが急激に落ちる。ドリフトと言うよりハーフスピン? とにかくトラクションが決定的に足りていない。残念ながら今日は「2駆なんてもってのほか」な日だったのである。

次の周、今度はコンフォートモード(4WD)を試してみると、とりあえずスライドを自分のコントロール下に置くことは出来るようになった。ドリフトアングルがつき過ぎたときでも諦めずにパーシャルスロットルで待っていると前輪が積極的に姿勢を立て直してくれる。公道を走らせている時には必要不可欠とまでは思えなかった4WDシステムがまさに生命線のように感じられる。

「わずかなトラクションを縦方向と横方向に分けて感じとれるくらいM5は鋭敏」

間髪を入れずM5に乗り換えると、いくつもの発見があった。相変わらずグリップはないに等しいのだけれど、そのわずかなトラクションを縦方向と横方向に分けて感じとれるくらいM5は鋭敏だ。とはいえ前輪の駆動がはっきりと感じられ4WD特有の安心感があったE 63 Sに比べるとM5にはそれがない。本当に4WDなのか疑いたくなるくらい。

E 63 SのドリフトモードもESPを切る必要があるのでドライバーには不退転の決意が求められるが、M5のFRモードもDSCを切らないと選択できないので同じこと。いざ2WDにしてみたM5は「疑ってごめんなさい!」と土下座したくなるくらい不安定な乗り物に変貌し、先ほどの挙動でも十二分に4WDだったのだということがわかった。

「リヤが無表情に流れるE 63 Sに比べ、M5は4輪全体で微かな粘性を残しながら滑っていく」

セクター3で恐る恐る滑らせてみた結果はE 63 Sとほぼほぼ一緒だった。ハーフスピンという末路は同じなのだが、フロントを軸にしてリヤが無表情に流れていくE 63 Sに比べると、M5は4輪全体で微かな粘性を残しながら滑っていく。だからM5は恐らく、もう少し雨量が少なければテールスライドをリニアに操れそうな予感に満ちていた。

走行時間が終了した時には天候を恨み、ちょっとした失望感すら覚えた。だが今回の両者の走りを冷静に振り返ってみると興味深い事実が浮かび上がってくる。現代のハイパワーモデルの成立に欠かせないスタビリティコントロールすら効力を失うようなタフなコンディション下で感じたE 63 SとM5のフィーリングは、モンスターサルーンの裸一貫の特性とも言い換えられるのだ。

「コーナリングの自由度が高いM5。ストレートの安定性が光るE63S」

M5の車重はE 63 Sより約250kgほども軽く、カーボンルーフの恩恵によって重心も低くロールも少ない。だが一方大人3人分以上にもなるE 63 Sのエクストラウェイトはそのまま動的質感を押し上げ、ストレートにおけるスタビリティ確保にも大きな効果を発揮しているのだ。

コーナリングで自由度の高いM5対ストレートの安定性がピカイチなE 63 Sという対極的な図式なのだが、実際にラップタイムを計ったとしたらプラスマイナスゼロなのではなかろうか? 個人的にはM5のドライバビリティに共感を覚えたが、それは優劣というより好みに過ぎない。サーキットでは伝統の一戦に決着つかずと言わざるを得ない。

REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)

【SPECIFICATIONS】

BMW M5

ボディスペック:全長4965 全幅1905 全高1480mm
ホイールベース:2980mm
車両重量:1950kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:4394cc
最高出力:441kW(600ps)/6000rpm
最大トルク:750Nm(76.5kgm)/1800-5600rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前275/35ZR20 後285/35ZR20
燃料消費率(JC08モード):9.4km/L
車両本体価格:1703万円

メルセデスAMG E 63 S 4マティック+

ボディサイズ:全長4995 全幅1905 全高1460mm
ホイールベース:2940mm
車両重量:2070kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
最高出力:450kW(612ps)/5750-6500rpm
最大トルク:850Nm(86.7kgm)/2500-4500rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前4リンク 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前390 後360mm
タイヤサイズ:前265/35R20 後295/30R20
JC08モード燃費:9.1km/L
車両本体価格:1805万円

※GENROQ 2018年 5月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

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みんなのコメント

7件
  • とにかく甲乙付けがたい両者ではあるが、如何せん価格が上がり過ぎ。
    55コンプまでの頃は1,200万で新車買えたのに500万以上価格が上がった。今じゃCのAMGも危うい。以前のSのAMGの価格設定。それなのに下取りは安くなった。
    リセール考えると買えなくなるよ。
  • この手の記事ってなぜタイムを書かないのか?
    そんなに速いなら書けばよいのに。
    それとも遅すぎて「速そうな」イメージが壊れるから書かないのか?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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