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【RX500 MID4 S-FR…】期待に胸を焦がしていたが…お蔵入りになった幻のスポーツカーたち

掲載 更新 20
【RX500 MID4 S-FR…】期待に胸を焦がしていたが…お蔵入りになった幻のスポーツカーたち

 1950年代から1970年代、高度経済成長期を迎えた日本では、クルマが急速に普及し、それまでの実用重視のモデルから、嗜好性のあるモデルが人気となりました。

 1960年代後半には、トヨタ2000GTや、日産フェアレディZ(S30型)といった、スポーツカーの名車が登場し、1970年代に入るとその流れはさらに加速、近年はその数を減らしているものの、これまでに多くの国産スポーツカーが世に送り出されてきました。

なんじゃこりゃ!? ホンダの四輪バギーがすげぇ!!! 日本で走れるの??

 しかし、なかにはさまざまな事情から販売に至らず、残念ながらお蔵入りとなってしまったモデルもあります。今回は、そんなお蔵入りになってしまった国産スポーツカーをご紹介します。

文:吉川賢一
写真:MAZDA、NISSAN、TOYOTA、HONDA、MITSUBISHI、ベストカー編集部

【画像ギャラリー】1990年代に登場した、傑作国産スポーツをギャラリーでチェック!!

マツダRX500

 マツダが世界で初めて量産化したロータリーエンジン車である「コスモスポーツ(1967年登場)」。このコスモスポーツの後継モデルとして、1970年の東京モーターショーで発表されたのが「RX500」という、ロータリーエンジンを搭載したコンセプトカーでした。

RX500の「500」は、マツダ創立50周年を意味している 鮮やかな緑色のボディカラーは、マツダのイメージカラーの緑にあわせて塗られたが、その後、黄色に塗り直されている

 コンセプトカーとはいえ、デザインだけのモックアップではなく、実際に走行できる仕上がりとなっていたRX500は、登場が期待された国産スーパースポーツの先駆けでした。

 リアにロータリーエンジンを搭載し、重量バランスは50:50。850kgという車体に、最高出力250psの高出力エンジンを搭載するという、当時のレーシングカーのようなスペックでした。

 ウェッジシェイプ(車両後方が高く前方が低いスタイリング)のボディデザインをしており、リア周りがワゴンの形状になっています。また、スーパースポーツ必須の条件ともいえる、跳ね上げ式ドアも採用されていました。軽量化のため、ボディにはFRP(繊維強化プラスチック)が採用されていました。

 量産、そして販売まであと一歩だった…と考えるところなのですが、残念ながらコンセプトモデルにとどまってしまい、未だに「幻の国産スーパーカー」として、語り継がれる存在となっています。

日産MID4/MID4-II

 1980年代に日産が開発していた「MID4」。最高出力230psのエンジンを横置きに搭載し、なおかつ4輪駆動とした、ミッドシップのスポーツカーでした。MID4は、1985年のフランクフルトモーターショーでデビュー、同年の東京モーターショーにも出品され、好評を得たことから、市販化を前提とした「MID4 II」の開発がスタートしました。

1985年のフランクフルトショーで世界初公開となったMID4

 MID4-IIは、MID4に比べて、丸みを帯びたデザインとなり、ボディサイズは全長、全幅共に拡大されました。また、ミッドシップ+四輪駆動というパッケージングはそのままに、MID4に搭載されたエンジンをインタークーラーツインターボ化して最高出力330psまでチューンアップ、縦置き搭載するレイアウトへ変更しています。

1987年の東京モーターショーで世界初公開となったMID4-II 3.0L V型6気筒ツインターボエンジンのVG30DETTをミッドシップに搭載、最高出力330ps/6800rpm、最大トルク28.5kgm/3200rpmを誇った

 サスペンションはフロントがツインダンパー式のダブルウィッシュボーンで、リアはマルチリンクに「HICAS」を装備、ちなみに5速MTでした。

 MID4、MID4-II共に、非常に完成度の高いプロトタイプカーに仕上がり、テストコースにて試乗会も開かれ、いつ発売されるのか、当時、大きく話題になりましたが、実際に市販するためには、安全基準への対応が必要で、その開発に少なくとも1年以上かかること、さらには、販売価格が2,000万円を超えると試算されたことなどから、やむなく日産はプロジェクト中止を決断。市販されることなく、姿を消しました。

トヨタS-FR

 トヨタが、2015年の東京モーターショーで発表した、コンパクトFRスポーツ「S-FR」もお蔵入りとなってしまったモデルです。エンジンをフロントミッドに積んだ後輪駆動で、86よりも小さなエントリースポーツカーのコンセプトカーでした。丸みを帯びたスタイリングとイエローのボディカラーで登場したその姿は当時、大きな話題となりました。

S-FRのボディサイズは、全長3990mm×全幅1695mm×全高1320mm 期待されていたが、結局、市販化されることはなかった

 その翌年の2016年1月の東京オートサロンでは、S-FRをカスタマイズした、「S-FRレーシングコンセプト」まで登場。ベースとなったS-FRの車高を下げ、拡幅と派手なエアロパーツを装着し、ブレーキ強化や、インタークーラーまで装着(つまり過給機がある)という、カリカリのレーシングチューンまでなされていました。

2016年1月の東京オートサロンに登場したS-FRレーシングコンセプトは、S-FRの車高を下げ、拡幅と派手なエアロパーツを装着し、ブレーキ強化や、インタークーラーがある(過給機付)という、カリカリのレーシングチューンまでなされていた

 ここまでくれば、いよいよ市販化か!! と大いに期待されていましたが、残念ながら続報はなく、開発中止となってしまったようです。その代わりと言えるのかは微妙ですが、2019年10月に、コペンGRスポーツが登場。86よりも小さなスポーツカーの需要は、このクルマが引き受ける形となっています。

ホンダHSV-010

 初代NSXの後継車として開発されていた「HSV-010」。「HSV」とは、「Honda Sports Velocity」の頭文字であり、なんとV型10気筒エンジンをフロントに搭載し、後輪駆動を基本とするAWDレイアウトで開発されていたモデルでした。

 しかし、2008年のリーマンショックによる景気後退によって、市販化計画は白紙。しかしながら、この車両をベースとした「HSV-010 GT」は、2010年シーズンのSUPER GT GT500でデビューしており、18号車「ウイダーHSV-010」が、投入初年度のデビューイヤーで、見事チャンピオンを獲得しています。

スーパーGTに参戦したHSV-010 GT 3400ccのV8エンジンをフロントに搭載し、後輪を駆動するFRマシンだった

 その後、2013シーズンまで活躍し、2014シーズンからは、NSX CONCEPT-GTへと、マシンチェンジとなりました。

 自動車メーカーの中では、常にこうした開発プロジェクトが走っています。ただし、すべてのプロジェクトが世に出るわけではなく、開発予算や採算性、さらには社会動静など、さまざまな事情に影響され、途中で消えることもあります。いま世に出ているクルマたちは、優秀なプロジェクトの結果なのです。

 今回取り上げたクルマたちがどのような事情で「開発凍結」となったかは、それぞれのメーカー、それぞれのモデルによって異なり、それぞれそれなりに深い事情があると思われます。筆者も自動車メーカーエンジニア時代には、携わったプロジェクトがいくつも凍結となり、悔しい思いを何度も経験しました。

 市販されることなく終わってしまったクルマたちは、登場を待ち望んだユーザーだけでなく、生みの親である自動車メーカーにとっても「夢の断片」なのです。

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みんなのコメント

20件
  • 何回目?
  • ミッド4は和製ロータスエスプリみたいな感じで、本当に市販への期待が高かった。
    確かミッドシップで、フルタイム四駆、V6DOHCターボという触れ込みだったと思うが、当時スカイラインに乗っていた親父が次は自分の車としてZか、MID4が欲しと、騒いでいた記憶がある。
    国産のミッドシップリアルスポーツの役割はのちに他社のホンダNSXに譲る事になって、フルタイムアテーサやハイキャスの進化系はスカイラインGTRに生かされる事になった。まあ、市販されてもおそらく700万超えは確実で、あまり商業的には成功しなかったと思うが。特にNSXとガチで勝負になるし、NSXはフルアルミボディとF1で大活躍した背景もあったから負けただろうなあ。 GTRはその点400万台で、頑張ればなんとか買える価格だったし。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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