■コストパフォーマンスにも優れている「スピードトリプルS」
アグレッシブなスタイルと1050ccの水冷3気筒エンジンを組み合わせたトライアンフのスポーツネイキッドがスピードトリプルです。このモデルには「S」と「R」という2つのグレードがラインナップされていますが、今回はよりベーシックでコストパフォーマンスに優れる「S」のインプレッションをお届けしましょう。
トライアンフ新型Speed Triple RS(スピード トリプルアールエス) スピード トリプルの最強モデルを発表
そもそもスピードトリプルは1994年に最初のモデルが登場しました。一躍その名が知られるようになったのは、2000年に公開された映画「ミッション:インポッシブル2」の劇中に使用されてからで、主演のトム・クルーズがみせた派手なアクションによって、その高いポテンシャルに注目が集まったのです。
これまで大小さまざまな改良が施されてきましたが、近年で最も大掛かりな変更が2016年モデルの登場時にありました。エンジンの改良は104ヶ所にもおよんだ他、ライディングモードやトラクションコントロールなどの電子デバイスが多数盛り込まれ、大幅に洗練されたというわけです。
この時ラインナップされたスピードトリプルSと同Rの違いについてトライアンフ・ジャパンの野田一夫社長が教えてくれました。
「Sには“スポーツ”や“スタンダード”という意味が込められており、スピードトリプルシリーズの基本的な魅力をすべて網羅したモデルと言えます。ではRの意味はなにかと言えば、“レーシング”ですね。カーボンパーツを採用して軽量化を図っている他、サーキット走行にも対応できるほど、足まわりの性能を引き上げています。いずれのグレードもストリートトリプルのような軽量スポーツネイキッドからのステップアップを検討されているライダーに最適です」
ちなみに、ストリートトリプルというのは765ccの水冷3気筒エンジンを搭載したモデルで、さしずめスピードトリプルの弟分と言えるでしょう。「その名の通り、街乗りからサーキットまでこなせる扱いやすいネイキッドですから初心者から上級者まで幅広いライダーに楽しんで頂けます。これに対して、1050ccのエンジンを持つスピードトリプルには強力な加速力とキレのあるハンドリングが与えられています。そのため、特にスポーツライディングの上級者におすすめしたいですね」と野田社長。
実際、スピードトリプルSのエンジンは力強く、特に低速域でのトルクは印象的です。クラッチを無造作につないでも車体をグイグイと前進させる粘りはディーゼルエンジンさながら。ストップ&ゴーを繰り返す街中でもまったく緊張感なく走れます。しかもクラッチレバーを握るのもスロットルを開閉するのも軽々と行えるため、上級者でなくても排気量を意識せずに操れるでしょう。
■ライディングモードは、5つから選択可能
そんな扱いやすさのカギを握っているのがエンジン特性を選択できるライディングモードです。これには、レイン/ロード/スポーツ/トラック/オリジナルという5つのモードがあり、たとえばレインを選べばスロットル操作に対してエンジンの反応が穏やかになり、パワーも徐々に上乗せされていく一方、トラック(=サーキット)ならそれがダイレクトになるなど、スキルや路面状況に応じてエンジンのキャラクターを変化させられる電子デバイスなのです。
この他にも介入度をレイン/ロード/トラックの3段階の中から選べるトラクションコントロール、オンとオフのどちらかを選べるABSを標準装備。ストリートでは安全性を高め、サーキットでは140psに達する最高出力をフルに堪能するといったオールラウンドな使い方がスピードトリプルSの魅力と言えます
とはいえ、このモデルの楽しさが際立つステージはやはりワインディングでしょう。装備重量218kgの車体は特別軽量ではないものの、アップライトなライディングポジションのおかげでヒラヒラと股下で操れる感覚が強く、見た目よりもずっとコンパクトに感じられるはずです。
そして、ここでもエンジンの力強さとスムーズさが光ります。ギヤポジションがどこにあっても3500rpmも回っていれば十分。右手をひねればいつでも必要なダッシュ力とトラクションを得られるため、特にコーナーを立ち上がる時の加速感は格別です。しかもその時のサウンドがこれまた絶品! 少しザラついた、唸るような排気音と、それが大きくなるにつれて体に伝わってくる心地いいビート感はスピードトリプルの3気筒でしか味わえない独特の心地よさです。
200ps級のスーパースポーツがそのパワーを持て余しておっかなびっくり走るそのかたわらをスイスイと駆け抜けていく。そういう自由自在感がスピードトリプルS最大の持ち味なのです。
■日本は最上級グレードのスピードトリプルRSに集約
ところで、スピードトリプルには近々RSという新型が加わることになっています。パワーや電子デバイス、サスペンションなどのパフォーマンスが向上しているのは明らかなのですが、現行モデルは今後どうなるのか? ちょっと気になったため、そのあたりのことも野田社長に聞いてみました。
「すでに弊社公式サイトでも紹介している新型スピードトリプルに関してですが、日本国内には最上級グレードのRSのみを導入し、現行モデルのSとRの上位モデルとして展開していきます。よって、SとRは継続して販売していきますが日本仕様の在庫がなくなった段階でRSに集約することになりますので、お求めの際はぜひお早めにご検討ください」とのことでした。
RSのデリバリーは2018年6月とのことなので、もちろんこちらを待つのもアリ。ですが、Sのコストパフォーマンスも見逃せないポイントです。なぜなら、新型RSの185万7000円、現行Rの162万5000円に対して、Sの車体価格は146万円! Rに対して16万5000円、RSとの比較に至っては39万7000円も安いわけですから、その差は決して小さくありません。
必要十分以上の装備と性能を持ち、お買い得度も抜群。スピードトリプルSはそんな魅力が詰まった1台なのです。
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