みなさんは「中国車」に対してどんなイメージをお持ちだろうか。世界最先端のEV王国は、世界中のクルマ好きの想像を超えたレベルにある。本記事を読めば日本車に迫る脅威をリアルに感じるはずだ。
※本稿は2023年5月のものです
文/佐藤耕一、写真/佐藤耕一、ベストカーWeb編集部
初出:『ベストカー』2023年6月26日号
ヤリスサイズで150万円!! しかもEVだぜ!! もう侮れない中国車最新事業
■中国メーカーが占拠する未来がハッキリ見えた!?
Aito M5。IT大手ファーウェイと重慶のボディメーカー、セレスが提携したAITOの初代モデルM5は、ファーウェイ製Harmony OSを搭載し、同じOSを積んだスマホやスマートウォッチとシームレスに連携する
今回の上海モーターショーでは、中国のメーカーが人気を集めるいっぽう、日米欧韓のブースはどこも人が少なく、巨大な中国市場は中国メーカーが占拠するという未来がハッキリと見えたショーだった。
特に焦っているのはフォルクスワーゲンだろう。同社は全販売台数のうち4割近くを中国に依存しており、中国でシェアを落とすと大きな影響が出る。
日本のメーカーでは、トヨタ、日産、ホンダがいずれも100万~200万台ほどを中国で販売しており、致命傷というほどではないが、ダメージは免れない。
さらに脅威となるのが、EVのシェアが加速しているEU市場、そして東南アジアやインド、南米といったエマージングマーケットでの中国メーカーとの競合だろう。
EU市場は2035年のEV移行に向けて段階的にEVのシェアを高めていくロードマップも決定しており、この機を活かして中国EVがシェア拡大を虎視眈々と狙っているのだ。
■刻々と大きくなりながら迫るBYDの脅威
BYD シーガルはヤリスよりひと回り小さいボディに大人4人がしっかり座れる室内空間を確保。航続距離300kmで150万円を切るEVはBYDにしか作れない。日米欧韓が最も恐れる一台
今回取り上げた車種のなかでも特に脅威となるのが、今年から日本でも販売を開始したBYDの宋とシーガルだろう。
BYDの強みはフロアの低いパッケージにある。世界中のメーカーがEVの低床化に苦労しているなか、BYDはバッテリーを内製していることを活かし、ボディ設計と高度に連携した実装を実現し、中国メーカーでもその低床化は群を抜いている。
シーガルは、その低いフロアによって、ヤリスよりひと回り小さい全長3780mmながら大人4人がきちんと座れるパッケージを実現し、そのうえ航続距離300kmで150万円というコスパは、BYD以外の誰も作れない。
デザインも、カッコ可愛いハッチバックに仕立てられており、組み立て品質も高く、もともと合理的なコンパクトカーが大好きなEUの顧客に大いにアピールすることで、一大旋風を巻き起こしても不思議ではない。
一方の宋は、今世界で最も売れている全長4700mm前後のクーペSUVであり、BYDならではのパッケージングとコスパに加え、格段に洗練されたデザインでこちらも人気を呼びそうだ。
■欧州進出を狙う中国の高級EV
ZEEKR X。ボルボの親会社でベンツの筆頭株主である中国の民営系大手メーカー吉利汽車。その傘下の高級EVブランドがZEEKR。欧州市場を見据えた最新モデルのXは、デザインや製造品質から高級なオーラが漂う
そして、中国勢のなにより強いのは、台数を作れるところだ。いくら人気でもタマがなければ意味がないが、中国勢はバッテリーや半導体も国内に独自のサプライチェーンを持ち、量産能力が高い。2022年の中国BEV販売台数は590万台で世界最大。EUは中国に次ぐが、半分以下の260万台に過ぎない。
そのEU市場に、安価で出来のいい中国製EVがなだれ込もうとしているのだ。その煽りを真っ先に喰らうのは日韓勢、特にトヨタと日産は影響を受けそうだ。
EU市場の保護的なライフサイクルアセスメントによって、中国のEVは締め出されるという話もあるが、この件に関して大手サプライヤーであるフォレシアのコラーCEOは否定的な意見を示している。
世界のリチウム精製の50%以上を中国に握られており、かつ欧州メーカーが中国市場でクルマを売りまくっているという状況で、EU市場から中国EVを締め出せるはずがない、というのだ。もちろん中国政府も、政争に発展するようなことがあれば躊躇はしないだろう。
■日本車の天下である東南アジアを脅かす中国メーカー
Maxus Mifa9。中国トップメーカー上海汽車のミニバンブランドMaxus。フラッグシップのMifa 9は、脱アルファード顔のクリーンなデザインに超豪華な内装を組み合わせ、中国はもとより東南アジアで大人気
では、日本車が圧倒的なシェアを持つ東南アジアはどうだろう。
2023年3月に開催されたバンコクモーターショーで、上海汽車Maxusの高級ミニバンMifa9が話題を呼び、一番人気となったそうだ。
中国車の品質向上は著しく、わかりやすいゴージャスさや充実した装備という点ではすでに日米欧韓を凌駕、さらにコスパに優れるとなれば、選ばれるのも当然。
アルファードが絶大な人気を誇るタイ市場で、中国のEVが人気を博すということが、何かを示唆しているような気がしてならない。
東南アジア含めたエマージングマーケットでは、EVの比率はまだ低く、すぐに大きな影響が出るとは考えにくい。だが、わかりやすい魅力を備えた中国車が次々に進出していくことを考えると、じわじわとボディブローのように効いてくるだろう。
もちろん日本市場では、日本のメーカーを脅かすほどのシェアを中国メーカーが取るとは思えない。しかし、日本の主要産業である自動車産業の収益が、じわじわと減っていくようなことになれば、私たち消費者自身の購買力が下がり、欲しいクルマも買えなくなる、という未来がやってくることを意味するのだ。
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みんなのコメント
中国の車なんて買おうなんて思わない。
何年か経過したらバッテリーの寿命が尽きてボロが出るでしょう。