この記事をまとめると
■ホンダ・プレリュードに編集部員が試乗
【試乗】ハードすぎずタルすぎず! プレリュードは大人を満足させるちょうどいいスポーティクーペだった
■デートカーをリアルタイムで知らない世代が好き勝手語った
■ホンダらしさが光る独創的なクルマであった
話題のプレリュードとやらに乗ってやろうじゃないか
2023年に開催されたジャパンモビリティショーは、従来の東京モーターショーからガラリと変わり、イベントの内容自体もクルマ主体ではなく、さまざまなモビリティに視野を広げた今までにない、新しいイベントであった。
そのジャパンモビリティショー2023に取材で訪れていた筆者は、担当ブースに向かう途中にホンダブースで行われるプレスカンファレンスを見る時間があったので、寄り道することに。聞くとこの日、ホンダではワールドプレミアするクルマがあるとのことで、とんでもない人集りができていたのを覚えている。もちろん、着いたころにはほぼ最後尾。カメラをライブビュー機能に切り替え、腕を伸ばしてモニター越しにしかステージが見えない状態であった。
そんな期待高まるなか、ホンダの三部社長が「こちらです!」と発表したクルマが、真っ白なプレリュードコンセプトであった。なにかと思えばまさかのプレリュード、しかも2023年の時点で24年ぶりの復活である。思わず、「え、今ここでプレリュード!?」と口から出たと思う。余談だが、プレリュードといえば父親は筆者が生まれる前に3代目プレリュードに乗っていたとのことで、「あのクルマはリヤタイヤも曲がるんだよ(4WSのこと)」と、幼少期に教わったことを覚えている。当時は、リヤタイヤが曲がるということが意味不明であった。母親と結婚する前のことなので、まさにデートカーとして使っていたのだろう。
そんなこんなで、今か今かと期待された6代目のプレリュードは、2025年9月5日、発表からほぼ2年後に無事販売されたわけだ。これだけアイコニックなクルマだけに当然(!?)2025-2026の日本カー・オブ・ザ・イヤーの10ベストにもノミネートされている。
というわけで、筆者的には少し思い出のあるこのプレリュードだが、すでにメディア向けには試乗会が開催され、ジャーナリストが多数レビューしているのは承知のとおり。YouTubeなんかにも一般人のレビュー動画などもぼちぼち上がり始めているころだ。そのプレリュードだが、じつはメディア向けの試乗会よりもひと足先に、「デートカーを知らない若者にもぜひ乗ってもらいたい!」という、ホンダアクセス広報部からのご好意により、先に乗らせて頂いていた。
筆者は1994年生まれの31歳。一応”若者”ということらしいので、この企画に喜んで乗っからせてもらった。ちなみに、クルマ好き程度の経験の浅い筆者のようなオタクが、「足まわりが~」とか「静粛性が~」とか語ってもあまり説得力がないので、走りの具体的なレビューに関してはギョーカイの諸先輩方の試乗記にお任せしたく思う。
今回、試乗させて頂いたのはフレームレッドにホンダアクセス製のパーツを取り付けたモデル。同社における伝家の宝刀、「実効空力」の技術は都合により取り入れていないとのことだ。シンプルでありながら、さりげないドレスアップが光るパーツ群で、個人的にはアリ。どうしてもフルノーマルで乗ることができない性分なのもので……。
で、このプレリュード。見た目(とくにフロント)が「トヨタの某ハイブリッド車に似ている」とか、「クルマがデカい」とか「変なデザイン」とか、わりと酷い意見が目立つ。では、本当にそうなのか? 問題のデザインだが、これに関してはぜひ実車を見てみてほしい。そんなネガティブな意見はきっと吹き飛ぶはずだ。とにかくプレスラインが流麗で、写真で見るよりもその陰影がはっきりわかる。
デザインのグランドコンセプトである「UNLIMITED GLIDE」の息吹を確かに感じられるはずだ。ちなみに筆者1番の映えアングルは、斜め上から見下ろす角度。これが1番格好いいと思っている(上から見下ろせる場所は少ないが……)。「こんなのプレリュードじゃない!」の思想は、実車を見れば打ち砕かれるだろう。街を走ってたら絶対目で追ってしまう存在感が、このクルマにはある。
こんな時代に出たことに感謝!
車内はとにかくシンプルでスッキリ。余計なものが一切ない。シビック譲りの使いやすいレイアウトで、自然と手が伸びる。「なんだこの使いづらさは!」となることはないはずだ。なお、これに関しては周囲から「は?」といわれるのだが、今回のプレリュードに使われているシートは、なんとなく4代目プレリュードのシート形状に似ていると思っている。所有はしていないが、個人的には4代目プレリュードが好きなので、余計な脳内補正が入っているのかもしれないが……。とはいえ、ぜひ同じ意見をもつ仲間が欲しいので、ぜひ写真で見比べてほしい。
ちなみにリヤシートは、子どもか相当小柄な人でないと普通に乗るのは無理。首がひん曲がる。最寄り駅までの送迎くらいなら使えるだろうか。ただ、荷物置きはもちろん、リヤシートを倒してフラットにすれば、巨大なラゲッジに早変わり。ゴルフバック2個が入ったカタログ画像からもわかるように、使い勝手抜群だ。2人であれば、どこへでも旅行に行けるはず。「デートなんかしらねー!」なんておひとり様でももちろんOK。なんならフルフラットになるので、思う存分車中泊もできるかもしれない。
肝心の走りは、ギョーカイの諸先輩方たちに任せるといいながらも、せっかくなので少し語ってみよう。
実際走らせてみると、これがまた今までにあったようでない、絶妙なフィーリング。エンジンやモーターのレスポンスは必要十分だし、キビキビ走ってくれる。とはいえ足は決して硬くなく、まさにドライブに最高なセッティング。これぞオン・ザ・レール。アクセルを踏めばスーって走って行く。まさにグライダーのようだ(乗ったことないが)。「これでいいんだよこれで」と、ついつい口から出てしまった。ブレーキはタイプRと同型の巨大な対向キャリパーなので、ストッピングパワーやコントロール性に不満なぞ出るわけない。
とくに、今回のプレリュード最大のトピックである「S+シフト」のボタンを押すと、軽快に走ってる感じにさせてくれるサウンドやシフトショックを再現してくれて、これがまぁ楽しい。ついつい無駄に押したくなる。普段やかましいマフラーが入ったクルマに乗っているが、これであれば自分だけ走ってる感覚に酔えて、周囲には迷惑が掛からない。とても健全。音で目立つ時代はもうとっくに終わったと痛感させられる……。
シビックタイプRの足まわりに、シビックe:HEVの中身がドッキングされて2ドアクーペ化されたというキメラのようなクルマだが、このパッケージングはとても考えられていると思う。「デートカー」を知らない人からしたら、得体の知れない格好いい2ドアクーペ、昔のプレリュードを知ってる人であれば、おそらく今どきのクルマにやかましいマフラーやガタガタな足まわり、狭い車内のクルマなんか求めていないだろうから、いい塩梅に思う。メーカー的には、使えるものは使って、作り直すものは作り直すという方式で、製造コストの調整もしやすい。じつに考えられたクルマだ。
ただ正直、ガチガチなスポーツカーでもないし、かといってめちゃめちゃ燃費がいいわけでもない。そして価格は617万9800円と、シビックタイプRと同じ価格。「誰向けだよ!?」となるのはごもっともなのだが、こういった謎セールスがホンダ流だし、昔からホンダが好きな人であれば、「またやってるよ……(笑)」と思うことだろう。
しかし今、筆者に「ホンダオタクの井上さん、ズバリホンダらしいクルマといえば?」といわれたら、きっとタイプRではなく「プレリュードっすね」と答えるだろう。とりあえず思いついたことを好き放題やる精神が、まだホンダには残っている。
筆者はクルマ好きなので、デートカーといわれてもピンとくるにはくるが、世代ではないし、クルマ好きでない同世代であれば、「デート? クルマ? カーシェアでも使ってドライブすればデートじゃん(笑)」と答えるはず。なので、今回のプレリュードは変に「デートカー」といった表現を使わずに、「ホンダの考える新しいクルマ」と考えたら、きっとしっくりくると思う。
後ろに人は乗れない、価格は安いとはいえない、ボディも大きい、ドアも2枚しかない……ネガな要素を挙げればなんでも出てくるが、利便性なんかそっちのけで、とにかく格好よければそれでいい。2ドアクーペというクルマはそもそもゼイタクでいいのである。これがわかる人が、今回のプレリュードのターゲットだ。腕時計だって今の時代必要ないが、ロレックスだのオメガだの、今でも需要はある。人生を豊かにしてくれる道具としてみれば、きっとこのプレリュードは最高の相棒になってくれるに違いない。
今どきホンダがこんなクルマを出してくれたなら、業界もちょっとは盛り上がるかもしれない。他社からあとに続く似たようなクルマが出てくれば、きっとあと20年後くらいに、「令和に乗るべきお買い得中古デートカー⚪︎選」みたいな記事のレギュラー陣にこのクルマは入ってくるはずだ。なのでホンダ以外のメーカーにも、ぜひ頑張ってもらいたいカテゴリーだと思う。今の日本にはもっともっと2ドアクーペのように格好いいクルマが必要だ。
以上、こんなにもゼイタクなクルマを、イマドキ新車で送り込んできたホンダに拍手を送りたい……と、若者の筆者が偉そうに語ってみた。あ、ぜひ北米に設定のあるレーシングブルーパール、日本にも入れてください。
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10月納車 1400キロです、助手席パートナーが
乗り心地が良いと喜んでます、
走っていると視線を感じます。笑、