ヒュンダイの燃料電池自動車の「ネッソ」に小川フミオが試乗した。印象はいかに?
BTS起用で話題に
ヒュンダイ・ネッソに日本で乗ることができた。『GQ JAPAN』本誌10月号に登場して話題をよんだあのBTSが、2020年1月のグラミー賞授賞式会場に乗り付けたクルマである。ひとことで印象をいうと、かなりパワフルで、しかも快適なのだ。
ネッソの話題性は、たんにBTSだけではない。水素で走る燃料電池車(FCV)であり、スタイルはSUV。さまざまな運転支援技術も盛り込まれていることにくわえ、後席も広く、ぜいたくなつくりなのだ。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiネッソ は、2018年1月に米ラスベガスで開催されたCES(Consumer Electronics Show)で発表され、話題を呼んだ。世界的に人気の高いK-POPの7人組アイドルであるBTSを広告塔にしつつ、「環境への意識が高いGen Z(ジェンズィ=2000年代前半うまれの若者)に興味をもってもらいたい」と、ヒュンダイはプレスリリースで謳う。
ネッソは電気モーターによる前輪駆動だ。燃料は水素。酸素の化学反応によって電気エネルギーを発生させてモーターを駆動する。通常の電気自動車はバッテリーに充電するいっぽう、ネッソは水素を(ガソリン燃料のように)タンクに充填する。排ガスはいっさい出ず、電気の余剰生産物として水が出るだけだ。
日本では、トヨタ「MIRAI」やホンダ「クラリティ」がFCVの先鞭をつけており、くわえて、メルセデス・ベンツ日本が「GLC F-Cell」をすでに販売している。ボディ形式はさまざまで、トヨタとホンダはセダン形態にこだわり、いっぽうメルセデス・ベンツはSUVだ。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiちょっとシトロエンのようでもある
電気モーター駆動なので、力強い加速感はBEV(バッテリー駆動の電気自動車)なみ、という点で、ネッソは、競合車と共通している。全長4670mm、全高1640mm、そして車重は1870kg。おおぶりのボディであるものの、運転していて、重さをまったく感じない。
120kWの最高出力と395Nmの最大トルクで前輪を駆動するだけに、ネッソの加速性は、日本の法定速度の範囲内ではいっさい痛痒感がない。発進直後から力強く加速し、内燃機関とちがって、トルクに山谷がないのだ。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiネッソは足まわりの動きがしなやかで、快適性が高い。245/45R19というサイズのタイヤをうまく履きこなしており、路面の凹凸があっても、きれいに吸収してしまう。
ステアリング・ホイールの操舵感は軽めであるが、路面とのコンタクト感が失われてはいない。ボディは初期ロールが少なめで、太いトルクがつねに湧き出る動力性能の恩恵もあり、高速道路に多い中速コーナーなどはとりわけ得意という印象だ。
Hiromitsu Yasui外観は、波がうねるような抑揚のきいたベルトラインが印象的だ。もっとも個性的なのはフロントマスクである。「カスケーディンググリル」とメーカーが呼ぶ、階段状というか、ジグザグ模様のグリルをそなえる。くわえて、どれがメインのヘッドランプがわからない灯火類が組み合わされている。ちょっとシトロエンのようでもある。
じっさい、横浜・みなとみらいの街中を走っていたら、信号待ちなどで並んだクルマのドライバーが、興味ぶかそうに、私の運転するネッソを眺めたことが数度あった。「デザインにインパクトがあるんだろうなぁ」と、あらためて感じた。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiハイテクとデザインの融合
前後席ともに広々感があるうえに、(テックフォワードな韓国のメーカーらしく)フラットなスイッチ類が並び、グレーとメタリックというモノトーンで仕上げられたダッシュボードも、新しい世代の乗り物感覚を演出している。
ダッシュボード上部はレザー的な感触の合成樹脂で覆われている。ドアの内張りも同様で、手が触れるところはみな、しっとりした感触で仕上げられていた。細部にまで、ていねいに気をつかっていることに感心。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui液晶モニターは大きなスクリーン(ついたて)を立てたような造形感覚で設けられている。これもユニークだ。速度やエネルギーモニターや燃費などはドライバー正面の7インチのメーターに表示される。私が感心したのは、「ブラインドスポットビューモニター」。ウィンカーを出した側の、車体の死角を映し出す。
車線変更や右左折時は後方に向いたカメラが広い視野角でモニターするのだ。これはかなりよい。輪郭は真四角でなく、左と右、どちらのミラーの映像が写し出されているか、直感的にわかるようにデザインされているのもよい。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiヒュンダイをはじめ、韓国の自動車メーカーや電機メーカーは、ミラノデザインウィークでも、ハイテクとアートが合体した展示でいつもうれしい驚きを与えてくれるのを、私は思い出した。
室内装備でほぼ唯一残念なのが、グラスルーフの小ささだ。しかも前席の頭の上に位置しているので、せっかく広々とした空間を与えられているのに、後席の乗員は、頭上のパノラマビューを楽しめない。ひょっとしたら、本国にはグラスルーフ仕様があるのだろうか。
なにはともあれ、ストーングレーというライトグレーの色調で統一された室内は雰囲気がよく、かつ静粛性が高い。さきにも書いたように、新しい世代の乗り物というイメージが魅力的である。ファミリー用途でもビジネス用途でも、使い勝手がよさそうだ。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui日本導入時期は未定
ヒュンダイによるとフル充填での走行可能距離は820km(WLTC)という。となると、多少、充填ステーションが離れていても、じゅうぶん実用に使えそうではないか。
ネッソは圧縮水素用のタンクを3本そなえる。ちなみに、現行型MIRAIの走行可能距離は650km。GLC F-Cellは水素だけで336km(加えてバッテリーで41km)。メーカーの数値ではだいぶ差がある。
今回試乗したネッソは、日本で登録された右ハンドル車だ。試乗の前日に東京・代官山で開催された「NEXO Terrarium」なる体験イベントで試乗にも使われた車両だった。オンラインでダウンロードできるカタログも日本語のりっぱなもので、「保証は5年10万km」などと書かれている。
Hiromitsu Yasuiヒュンダイモーターコーポレーションの日本法人の担当者に現地での価格を確認すると、「約650万円から750万円」ということだった。しかし導入時期というもっとも知りたいことについては「コメントできません」とのこと。いちど日本市場から撤退したヒュンダイだけに、慎重なのだろう。
燃料電池のSUVであるメルセデス・ベンツGLC F-CELLの価格は1050万円だから、もしネッソが、日本国内でも650~750万円程度で販売したら面白い。クルマとしては十分魅力的だ。
いずれにしても、選択の幅が広いほうがいい、という意味でも、SUV型のFCVであるネッソが導入されることを期待したい。そういえば、蛇足になるものの、カーシェアサービスの「エニカ」でも借りられるとのことだ。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
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