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フロントロウ独占の裏に“共闘”アリ。TEAM MUGEN陣営が振り返るそれぞれのアジャスト/第3戦予選

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フロントロウ独占の裏に“共闘”アリ。TEAM MUGEN陣営が振り返るそれぞれのアジャスト/第3戦予選

 気温31度と真夏日の中で公式予選が行われたスポーツランドSUGOでの2024全日本スーパーフォーミュラ選手権第3戦。午前中のフリー走行とは異なる顔ぶれが上位に入り、野尻智紀がポールポジション、岩佐歩夢が2番手につけ、TEAM MUGENがフロントロウを独占した。

 なかでも野尻は午前のフリー走行で15番手と苦戦していたところから挽回し、岩佐も初めてのSUGOを攻略しての好結果となったが、その裏には“お互いの良いところを参考にする”というチームプレーも見られた。

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■野尻の16号車「今回は完コピではなくエッセンスを加えました」

 前回のオートポリスでは決勝9位に終わり、かなり悔しい気持ちを抱えながらインターバル期間を過ごしたという野尻。今回もフリー走行ではタイムが思うように上がらず、チームメイトの岩佐から1秒遅れの15番手でセッションを終えた。

「前回のオートポリスで持ち込みから大外ししたので、今回は持ち込みから良い状態を目指して、今考えられるベストな状態にしてきたつもりでした。最初はタイヤも使い込んだもので走っていて、早めのタイミングでタイヤを入れ替えたんですけど、それでも全然良くなくて『ん?』となりました」

 そう語るのは16号車担当の一瀬俊浩エンジニア。「そこから良くなるであろうアイテムと相対評価で試そうと思っていたものを入れて、パフォーマンスを上げようとしましたけど、それでも岩佐や大湯のタイムとは別次元の状態だったので……『あ、今週もう終わったかもしれない』という感じでした」と、一瞬は敗北の文字が頭をよぎりかけたそうだが、そこで頼りにしたのが隣で好調な走りをみせていた岩佐の15号車だった。

 実は、開幕戦の鈴鹿でも15号車の調子の良い部分をコピーする形で16号車に取り入れ、勝利につなげていったことがあり、今回もそれに似た流れだったという。

「開幕戦の時は15号車のリヤセットを完コピしたんですけど、今回は15号車の良いモノを完コピまではいかないですけど、それを取り入れていったら良くなりました」

「自分が見つけた何か新しいもので直したと言うわけではなくて、隣の15号車にある良さそうなものを失敗しない程度に入れ込んだという感じでした。ガラッとセットが変わっているわけではないので大外しすることはないだろうなと思っていましたが、逆に『この変化幅だと朝と変わらないのではないか?』という疑念もありました。ですが、予選では良い方向にいってくれました。『毎回フリー走行で調子が良い15号車がいて助かるなぁ』と思いましたね(苦笑)」

 野尻も「オフの段階から僕がやっていたことと岩佐選手がやっていたことがちょっと違っていました。僕たちは僕たちの道でうまみがないか頑張っていたんですけど、前回くらいから『どうも怪しいな』という感覚があって、今週もその流れで入っていたんですけど、『やっぱり良くない』となって、(フリー走行)最後のスタート練習直前に15号車のものと同じアイテムを入れたら、フィーリングもスタビリティも上がりました」とコメント。

「その辺で言うと、今回は15号車がいろいろと積み重ねていたものを参考にしながら予選のセットアップを作ったという感じです」と、今日のターニングポイントだったと感じているようだった。

■岩佐の15号車「タイムが出ているポテンシャルを信じて詰めていった」

 フリー走行で苦戦していた野尻とは対照的に、走り出しから上位にいた岩佐。最終的にトップから0.3秒差の1分06秒426を記録して、3番手で朝のセッションを終了した。

 一見すると前回のオートポリス同様に調子が良さそうに見えたが「走り出しのフィーリングとしては良くなかったのですがラップタイムが出ている、という状況で、オートポリスとは違う感じで走り始めた印象でした」と岩佐は言う。

「少し乗りにくさというか、マシンとしては(満足に)いけていないのではないかという部分はありましたけど、ラップタイムを見てもポテンシャルがあることは分かっていたので、乗りやすいクルマを作るよりは、このクルマを細かく詰めていく方がいいんだなと思って切り替えて進めていった感じでした」と方向性を決めてセットアップを詰めていったという。

 15号車担当の小池智彦エンジニアも「走り出しは他車が履いているタイヤの状況が分からなかった部分はありますけど、フィーリングとしてはあまり良くない感じでした。オートポリスは走り出しから良かったのに対して、SUGOはちょっとネガティブなところはあったかなと思います」

「クルマ的にはピーキーな感じですけどタイムは出ていたので、そこからどうアジャストしていくかでした」と語る中で、小池エンジニアとしてはタイムの良さとピーキーさをなくす両方を意識して対応していったとのこと。フリー走行で岩佐より速かった大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)や福住仁嶺(Kids com Team KCMG)のオンボード映像を公式アプリ『SFgo』でチェックし、そこからヒントも探ったという。

「2台のオンボードを見るとウチにはないクルマの動きだったので、それに寄せるべきか、自分たちの方向性を貫くべきか結構悩みました」と小池エンジニア。

 その上で出した結論が「過去の経験上、他チームの良さそうなところに合わせにいってもとっ散らかるだけなので、フリー走行の最後に走ったものをベースにして、16号車の良いところを試して、それを取り込んだ形で予選に臨みました」とのことだ。

「今回は15号車と16号車でテストアイテムもうまくコンビネーションさせながら(評価を)進められたので、結果的に15号車としては負けてしまいましたが、チームとしてはフリー走行から予選もそうですし、予選のなかでも2台が協力できたかなと思います。けっこうフリー走行で材料が集まったので『あとは方向性をどうするか?』という話で進められました」

 こうして2番グリッドを獲得できた15号車。当初、小池エンジニアは昨年リアム・ローソンが予選で記録した6番手より上の5番手を目標として定めていた。

 対して岩佐は「僕としては過去のデータを全部見てもポテンシャル充分に持っていて、今までは結果が出ていないだけだと思っていたので『しっかりと自分たちで組み上げられれば上位で戦えると思います』と言っていましたけど、小池エンジニアはずっと『(予選の)目標は5位』が目標と言っていました。その目標は超えたので、小池さんの自信もちょっとずつ上がってきているのかなと思います」と、ふたりのコンビネーションがまた一段と深まったエピソードも披露してくれた。

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