運営元:旧車王
著者 :島田 和也
日本アルミ弁当箱協会会長の「ちょっと斜めから見た旧車たち」Vol.7
■ひとくちに「旧車」といっても・・・毎回のように述べていることだが、そもそも「旧車」という単語が表すものが、何年以前に生産されたクルマの総称とするか? によっても判断基準は大きく変わってくる。
例えば税制上の冷遇措置が始まる年代以前とするなら、初年度登録から13年を経過すると旧車となり、20世紀までに生産されたクルマと規定すれば、2000年までに生産されたクルマが旧車ということになる。
でもね、そうなると、初期のハイブリッド車や電気自動車も旧車というカテゴリーに入ってしまう。
▲税制上、初期のプリウスはすでに旧車だし、20世紀に生まれたクルマではあるけれど…
もちろん、もっと時代が先に進めばそれもアリだろうけど、今ここでいう「旧車」とは違う存在と感じてしまうのだ。
そこでここでは、生産後30年以上経過したクルマを「旧車」と考えることにする。
つまり、バブル時代真っ盛りで多くのニューモデルが誕生した1992年までに生産されたクルマだ。
■80年代半ば以降の国産車は、旧車といっても装備は充分でもね、国産車の場合、80年代の半ばを過ぎると、ほぼ全車がフル装備。
エアコン、パワステ、パワーウインドウといった快適装備付だから、ABSやエアバッグなどの俗にいう安全装備を除けば、今のクルマとの機能差はないに等しい。
旧車でも、80年代半ば~92年モデルを選ぶ主な基準は、スタイルが気に入っているとか、安全装備は重量増に直結するから避けたい、昔乗っていたモデルにもう一度乗りたい、といったところではないだろうか。
ボクのデカレディ(S130型フェアレディZ 2by2)の選択基準は「昔乗っていたモデルにもう一度」という基準に該当する。
さらに、昔はカッコ悪いと思っていた2by2のスタイルも、今では利便性とのバランスに優れると感じて気に入っているし、エアバッグやABSにさほど重要性を感じていないのも事実だ。
このように、理由をこじつけることができるなら、間違いなくこの新しめの旧車オーナーの資質を備えているといえる。
要するに、自分の選択の正当性を主張することができれば大丈夫というわけだ。
▲ボクは95年頃、真っ黒のGHS130(280Z 2by2)型フェアレディを仕事のアシに使っていただけに懐かしい!! すでに40年級の旧車だけど、エアコン、パワステ、パワーウインドウという快適装備もバッチリなので実用性も高い
■公害対策に翻弄されていた時代の国産車はチィと不安・・・1973年にはじまる排気ガス規制。
日本の規制は厳しいといわれていたカリフォルニアよりもハードで、各メーカーが対策に四苦八苦することになったわけ。
それでもなんとか規制値はクリアしたものの、クルマの大きな魅力である「運動性能」は、規制前のレベル以下となり、多くのファンが涙した時代がはじまったのだ。
この1973年に始まる暗黒時代は78年施行の53年規制まで続いた。
でも各メーカーの懸命な努力により、三元触媒コンバーターの実用化に成功。
走行性能を取り戻しながら、規制値達成の実現が可能となり解決し、再びハイパワー競争の時代に入っていくわけだ。
この時代のクルマは、暗黒の時代であった歴史なんか気にせず、純粋に「かっこよさ」を感じて選択する、比較的若い世代の人に人気が高いようだ。
ボクがつい最近まで愛用していたHB310型サニーやアニメ「頭文字D」以来人気となっているFC3S型RX-7、AE86型レビン&トレノなどが世代を代表するモデルといえる。
また、TA40系カリーナや、TT&RT100系コロナ、910型ブルーバードなど、フツーの四角いセダンモデルも注目度上昇中だ。
▲排気ガス対策黎明期のクルマだからパワーはなかったけど、社外品パーツが豊富なので、チューニングも自在。自分仕様のスペシャルに仕上げる楽しみを満喫できる。
完全オリジナルにこだわる人にとって73~77年までのモデルは、一部の車種を除き、走行性能の点では我慢が必要だ。
また、排気ガス対策過渡期のモデルだけに使用パーツの変化も多く、オリジナルを維持することが難しい。
逆に、気に入ったスタイルを活かし、純正パーツにこだわることなく楽しむならこの年代の旧車は狙い目。
あえて不人気車を探し出し、大胆なセットアップで「オレ流」のスペシャルを作り出す・・・といった夢を抱ける人ならジャストフィット間違いなしだ。
▲当時排気ガス規制が緩かった商用車用エンジンも狙い目だ。ボクは910型ブルーバードバンのZ16型エンジンに、ウエーバー40Φツインキャブを装着。独特の吸気音は絶品でしたよ。
■旧車の王道、1973年以前のクルマと暮らすなら・・・この年代の旧車には、基本的に現代車両の常識となっている快適装備が付いていないことがポイント。
ノンパワーのステアリングは重いし、窓の上げ下げも手回しなのだ。
こうした不便さを容認できない人は、充分に楽しめない可能性が高いので、相性が悪いといえるだろう。
逆に、その不便さが楽しいと感じる人や、オモシロイと笑える人にはジャストフィット間違いなしなのだ。
サスペンションの多数派はリアリジッドだし、ブレーキだって、フロントがディスクブレーキになっていれば良い方という時代。
もちろんパワーアシストなんてないから、ブレーキの感覚だって今のクルマに慣れた人には異様に重く、また、実際以上に効きが悪く思え閉口するに違いない。
でもね、この年代の旧車と波長が合う人にとって、そんなことは問題にならないわけ。
たしかに、最近のクルマと比べればブレーキは効かないけど、それなら少し早めからジワーッと踏んだら良い。
究極(?)のリジッド式サスともいえるリーフリジッド式サスの跳ね具合や暴れ具合も、「スパルタン」という、魔法のような表現で美点に変えてしまえば良いのだ。
▲リーフリジッド式リアサスペンションだから、ノーマル仕様でも結構跳ねるし、暴れてくれるがそこがまた魅力。ボクはあえて細いタイヤを選び、このジャジャ馬娘との生活を楽しんでいる
ボクも「不便さを楽しんでいる」のだが、いくら楽しくても、梅雨時のジメジメや真夏の暑さにエアコンなしは正直なところチィと辛い。
その解決策としてオススメなのが、最近注目を浴びている「電動式エアコン」だ。
一種の反則ワザともいえるが、エンジンパワーと無関係の単純な電動式なので、エンジンへの負担がないことは大きな魅力。
走行性能への影響は、基本的にエアコンキットの重量増部分だけというスグレモノだ。
もうひとつ、最近装着車両が増加中の電動パワステも注目。
どちらも、自分のモノとしては未体験なので正確な評価はできないけど、もし、うたい文句に近い性能や感触であるなら、この年代の旧車との相性がイマイチだったファンにも朗報だ。
ふたつの強力な快適装備が備われば、相性論も大きく変わってくるに違いない。
まぁ、イロイロとこじつけてはみたものの、要は、合うも合わないもその人の考え方次第ということ。
旧車を一種の文化遺産と考えるなら、可能な限りオリジナルを維持したいけど、旧いけど大好きなクルマで現代を楽しむと割り切れば、最新テクノロジーとの融合だってアリ。
大いに旧車ライフを楽しんでいただきたいのだ。
[画像/トヨタ 撮影&ライター/島田和也]
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みんなのコメント
記事だと一例として「税制上の冷遇措置が始まる年代以前とするなら、初年度登録から13年を経過すると旧車となり、20世紀までに生産されたクルマと規定すれば、2000年までに生産されたクルマが旧車ということになる。」としている。
それくらいなら車に興味がない人や金や時間のない人が普通に乗っている。乗り換えより費用や時間、手間暇がかかる車からが旧車かな。