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普及には成長と分配が必要? EVが売れる秘策は安価なモデルと燃費課税にあり!?

掲載 更新 35
普及には成長と分配が必要? EVが売れる秘策は安価なモデルと燃費課税にあり!?

 ついに2022年、日産・三菱連合による軽EV(=電気自動車)が発表されるという。現在、日本車で「買えるEV」といえば、日産リーフにホンダe、マツダMX-30 EV、レクサスUX300e、そして日産アリアと、ちょっとお高いモデルばかり。この新型軽EVが出れば、一気にEV普及が進むのでは? と心躍らせる人もいるだろう。

 現在、欧米においてEVはセカンドカー需要が主となっていて、それは日本でも同様になるはず。つまり、地方の複数台所有地帯で近所の足として使える安い軽EVは、今のところ最も有望と考えられるのだが、はたして実際はどうなることか。

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 今回は、日本と海外でのEVの販売分析を踏まえつつ、この先、日本で求められているEV像について、そして日本で国産EVが普及するための策について、清水草一氏が考察した。

文/清水草一 写真/本田技研工業、日産自動車

[gallink]

■EVは「地方のセカンドカー」として最も普及?

 間もなく総選挙だ。新総理となった岸田文雄氏は、政策理念として「成長と分配」を掲げている。それが実現すれば言うことはない。問題はできるかどうかだ。日本の自動車業界にも、成長と分配が必要ではないだろうか! つまり、成長しそうな分野に、そうでない分野から分配する必要がある。具体的には、EVへの分配である。

 現在、EVには政府から補助金が出ているが、補助金というのは税金なので、予算の枠がある。枠を超えたらそれで終わりだ。つまり、EVがある程度売れるようになったら、補助金なんてもうほとんど出せなくなる。しかし、燃費の悪いクルマからEVへ「分配」すれば、かなり長期間、EVの普及を後押しできる。

 私は、現状のリチウムイオン電池を使ったEVに関して、日本で普及が望めるのは、航続距離が短めの軽自動車サイズではないかと思っている。つまり、地方のセカンドカーだ。地方は一戸建て(車庫付き)の割合が高いので、都市部よりずっと有望だ。

近年、軽自動車Nシリーズで一定の地位を築いたのがホンダ。地方では軽自動車が圧倒的な支持を得ている

 欧米では、複数台所有が当たり前で、現在EVに乗っている人(≒比較的豊かな層)は、たいてい内燃エンジン車も所有している。通勤用など短距離はEV(欧州では会社支給のカンパニーカーの割合高し)、長距離は内燃エンジン車と使い分けているのだ。よって、充電の多くは自宅や通勤先で行われ、急速充電のニーズはどれほど高くない。

 日本だって、地方では複数台所有が当たり前。通勤用など短距離の利用ならEVで充分だし、ガソリンスタンド過疎地帯では、自宅で充電できるEVのほうが便利だ。安価な軽EVが出れば、かなりの需要があるはず。政府はそこを後押しすべきではないだろうか!?

■200万円の軽EVは売れるのか?

660万~790万円で国内専用限定車の予約販売が始まった日産アリア

 別に日本政府が後押ししなくても、欧州のようなEV化先鋭地域では、あっちの政府がEVを後押ししてくれている。しかし、欧州での日本車のシェアは10%程度。国産メーカーにとって、あまり大きな市場ではない。欧州市場のために全力を傾けろというのは酷だ。やっぱり地元の応援がないとイカン!

 近年、国産メーカーのEVを見ていると、非常に心配になる。ホンダeもマツダ MX-30 EVも、そして今年発売した日産 アリアも、どれもこれも価格が割高でコスパが悪い。

 最大156万円の値下げを敢行したテスラ(モデル3)や、超小型EVが快走している中国製と比べると、技術はともかく、コストダウンのスピードで完全に置いていかれている。これはまぁ、日欧米既存の自動車メーカーすべてに言える傾向ではありますが。

 日産/三菱連合は、来年度初頭、開発中の軽EVを発表する。ボディサイズは軽自動車枠、電池容量は20kWh。価格は、補助金(2021年度と同額と仮定)を差し引いて約200万円とのことだ。200万円……。微妙だ。

 軽EVとしては、三菱 i-MiEVという先輩が存在する。2009年登場時のスペックは、バッテリー容量16Wh、航続距離160km(実質100km?)。価格は当初459万9000円。国の補助金が139万円出たので、実質320万円ほど。

 その後、値下げされ、航続距離の短い廉価版は実質172万円まで下がったが、それでも売れなかった。

 そのi-MiEVに比べると、日産/三菱連合の新型軽EVは、大幅に改善されている。航続距離も実質150kmくらいだろうから、通勤用やセカンドカーとしては問題ない。でもやっぱり、高いんじゃないか!?

 200万円出せば、フル装備の軽が買える。軽なら充電の心配がないので、航続距離は事実上無限。移動の自由が制限されるEVより断然魅力的だ。地方のスタンド減少による不便さを考慮しても、軽EVは150万円以下が適正だろう。普通の軽より安くなければダメだ。

 国産メーカーの場合、テスラのような頂上作戦、つまり高級車クラスから攻めてブランド力を付けつつ、下に降りて行く戦略は不可能で、まずボトムを狙うしかない。三菱も日産もその作戦で失敗したが、それしか道はない!

■EV普及の道は燃費課税の強化!?

 現状、国内では、あらゆる意味でEVよりもガソリン軽やハイブリッドのほうが優れている。しかしそこに安住していたら、EVのコストダウン競争力が低下するいっぽうになり、いずれ海外市場で負ける。自動車産業は、もはや日本経済を支える一枚看板。後押しする国内政策が必要ではないだろうか!

 そこで必要になるのが、「成長と分配」作戦だ。ランクル300のような燃費の悪い内燃エンジン車から、燃費に応じた炭素税を取り、EVに分配するのである。

 日本の自動車税制は、エコカー減税など「減税」ばかりで、増税がほとんどない。これでは限界がある。そもそも燃費基準値が車両重量別に決まっていて、重いほど有利になるのだからトンチンカンだ。乗用車は軽だろうがミニバンだろうが、平均乗車人数に大差はない。クルマの重さや大きさは一切考慮せず、燃費に応じて課税額を決めるべきだ。

10月、ホンダが「中国電動化戦略発表会」で世界初公開したEVのコンセプトモデル。どれも5年以内の発売を目指して開発中だという

 国交省によると、平成30年時の日本の乗用車の平均燃費は、JC08モードで22.0km/L。WLTCモードだと20km/L程度か? 平均燃費未満の新車は、すべて燃費に応じて、新車登録時に炭素税を課税! くらいでいい。

 課税額を、たとえば1km/L超過するごとに5万円に設定すると、ランクル300のガソリンモデル(WLTCモード燃費7.9km/L)の課税額は、約60万円になる。そう聞くと高く感じるが、アルファード・ハイブリッドはWLTC燃費14.8km/Lなので、約25万円。まあ妥当な線ではないだろうか。

 これで年間税収は1000億円台と見る。その分配は、ズバリ、「EV1台あたりの均等額」が望ましい。現在のEV補助金は、車両価格や航続距離に応じて差がつけられているが、結果的に単なる高級EV優遇になっている。

 年間1000億円台の予算があれば、EVが年間10万台売れたとしても(2020年は約1.5万台)、1台あたり100万円以上「分配」できる。現状、ガソリン車とEVの価格差は約100万円。その穴を埋めるのみならず、価格が安い軽EVに、かなりのアドバンテージを与えるだろう。

 軽EVへの「アメ」と、燃費の悪いクルマへの「ムチ」で、国産EVの競争力アップを狙うべきだ!

 非常に粗削りな政策案ですが、いかがなものでしょう。

[gallink]

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