Lexus IS
レクサス IS
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「まさか」のマイナーチェンジ
レクサスのラインナップの中で、“コンパクトFRセダン”というポジションにいるISが生まれ変わったのだけれど、多くの人が「次はフルモデルチェンジ」だと信じて疑わなかったのに、我々の目の前に現れたのは“マイナーチェンジ”と称された、でも見た目にはまったく新しいISだった。
フルモデルチェンジを予想していた根拠はあった。LCと共に誕生し、その後はLSやトヨタ クラウンにも採用された新しいFRプラットフォームである“GA-L(グローバル・アーキテクチャー-L)”がISにも使われると確信していたからだ。
特にクラウンのそれは“ナロー”と呼ばれ、LCやLSよりも全幅方向を詰めたプラットフォームになっていたから、2013年にデビューしてすでに7年も経過しているISの次期型がこれを共有するのは至極自然の流れだと思っていたのである。
“コンパクトFRセダン”であるための決断
結果としてレクサスはISのプラットフォームを流用し、あえて“マイナーチェンジ”と呼んだ。理由について、チーフエンジニアの小林直樹氏は次のように語ってくれた。
「ISの最大の魅力はコンパクトであることですよね。これだけはどうしても外せない。もちろん、開発過程ではGA-Lを使うことも検討したし試作車も作りました。でもナローを使っても我々が狙っているパッケージよりどうしても大きく重くなってしまう。これを『コンパクトFRセダンのISです』と謳っていいのか? と。だったら既存のプラットフォームや各所にもっと手を入れて熟成させ、ISの魅力をさらなる高みに押し上げるべきだと考えたわけです」
ISのライバルと目されるBMW 3シリーズやメルセデス・ベンツ Cクラスもフルモデルチェンジの度に大きくなっている。3シリーズは全長4720×全幅1825mm×全高1445mm、Cクラスは全長4705mm×全幅1810mm×全高1430mm。新型ISは全長4710mm×全幅1840mm×全高1435mmなので、「コンパクトなボディを維持した」とはいっても全幅は3とCを超えている。
もしGA-Lのナローを使っていたら、ライバルよりもさらに大きく重くなっていたのかもしれない。新しいプラットフォームにしたほうがいいことはたくさんあるが、トレードオフしなくてはならない要件もあるわけで、その判断基準にISというモデルの最大の魅力である“コンパクトFRセダンであること”を最重要視した結果、あえてマイナーチェンジという選択に踏み切ったのだろう。
独自のプレス技法に見る圧倒的な生産技術力
あらためて新型ISのボディサイズを旧型と比較してみると、2800mmのホイールベースと1035mmのリヤオーバーハングは同値。フロントオーバーハングは30mm伸びて全長も+30mm、トレッドはフロントが45mm、リヤが50mm広がり、全幅は左右それぞれ15mmずつの30mm拡大となった。
全高は5mm高くなっているが、ヘッドライト、Cピラー、トランク上部の付近は43mm、15mm、31mm低くなっているという。ちなみに、ボンネット/ドア/ルーフ/フェンダー/トランクといった外板パネルはすべて新規であり、従来型からの流用部品はフロントウインドウくらいだそうである。
外板で注目すべきはトランクリッドだろう。緩やかにカーブした独特の形状部分をよく見、そして触ってみると、見事にエッジが立っていることが分かる。これは“カム成型”と呼ぶ独自のプレス成形技術によるもので、1打のプレス工程で「寄せる」「絞る」の加工を行っているという。シャープなエッジを出す場合、プレスの工程数を増やしたり、後工程で二次成形をすることが多いが、ISのトランクリッドはこれを1打でやってのけているわけだ。レクサスの生産技術力は、相変わらず世界トップレベルを堅持している。
インテリアの化粧直しは最小限
フルモデルチェンジのように様変わりしたエクステリアと比べると、従来型とぱっと見ではほとんど変化のないインテリアには少々物足りなさを感じてしまう。しかしセンターディスプレイをタッチ式にすることで従来型よりも手前に置き(手が届くように)、それに伴いダッシュボードの断面形状も変更、左右のエアコン吹き出し口は長方形から円形の意匠となった。
つまりダッシュボードそのものはあらたに作り替えられているのである。だったらいっそのこと、インテリアを大きく刷新してもよかったのではないかと思ったが、小林チーフエンジニアの「エクステリアでずいぶん予算を使っちゃったんで(笑)」という言葉は、冗談半分、本心半分だったのかもしれない。
ホイールにハブボルトを採用!
エンジンとトランスミッションのハードウェアは従来型とまったく同じである。2.0リッター直列4気筒ターボのIS300、3.5リッターV6自然吸気のIS350、そして2.5リッター直列4気筒+モーターのIS300hという3種類で、ハイブリッド以外は8速ATが組み合わされている。エンジンのパワースペックも従来から変わらず、それぞれ245ps/350Nm、318ps/380Nm、システム最高出力220psとなっている。ただし、8速ATのシフトプログラムとハイブリッドの出力制御マップは刷新された。
新型ISのさまざまな変更点の中で、個人的に思わず「おぉ!」と声を挙げたのはハブボルトの採用である。これまでは、というか日本車のほとんどはホイールとハブベアリングの締結にスタッドボルトとハブナットを使用している。ところが欧州車の多くはずいぶん昔からハブボルトである。
ハブボルトのほうが部品点数が少なくなるのでばね下が軽くなるし、締付トルク値を上げることもできる。「なんで日本車はハブボルトを使わないのだろう」とずっと不思議だったのだけれど、新型ISでようやく採用の運びとなった。ちなみに、レクサス車でハブボルトを使うのはこれで2台目、最初に使ったのはLFAである。
細部のダイエットを丹念に実施
前述のように、新型ISはトレッドを拡大している。これは、従来型では18インチまでだったタイヤ&ホイールを19インチまでとしたためだ。通常、インチアップをするとホイールもタイヤも大きくなるからばね下は重くなる。ところが新型ISのばね下重量は従来型とほとんと変わっていない。
これには、フロントアッパーアームのアルミ化やハブボルトの採用などによる軽量化が効いているという。こういう細部への徹底したこだわりから、小林チーフエンジニアをはじめとする開発チームのこのクルマへの意気込みが伝わってくる。
劇的でなく漸次的に伝わる進化具合
試乗車はいわゆるプロトタイプという位置付けの仕様で、舞台はサーキットのみだったが、IS300、IS350、IS300hの3モデルを試すことができた。グレードはすべて電子制御式ダンパーのAVSが装着されているF SPORTで、タイヤ&ホイールは19インチ、実際には4WDも用意されるが今回乗れたのは2WDのみである。
この試乗会に参加する前に、予習(復習?)として従来型のIS350をしばらく拝借していた。新型に試乗して、やっぱり予習は大切だと実感した。正直に言うと、新型ISの乗り味は従来型と比べて“劇的な変化”とか“ドラマティックな変貌”と呼べる類ではない。従来型のISに乗った経験がある人が新型を試したら、おそらく「なんとなく全体的によくなったかな」という第一印象を持たれるだろう。ところが距離を重ねたり、様々な状況に遭遇すると、次第にいろんなところが改善されたことにジワジワと気付いていく、そんな感じである。
靴紐をぎゅっと締めたぴったりの靴
最初に感心したのはハブボルトの効果である。ばね下重量は変わっていないはずなのに、軽くなったようにさえ感じる。足さばきがとても軽快だ。加えて、サスペンションとタイヤの一体感が伝わってきて、旋回中にサスペンションアーム/ハブベアリング/タイヤがそれぞれ勝手に動くようなことがまったくない。
「ちょっと隙間があって、場合によっては足が動くけれど履いているうちにそんなに気にならなくなる靴」が従来型とすれば、新型は「自分の足の形状に寸分違わずピッタリ合った靴を、きちんと靴紐を締めて履いている」ような感覚である。
クルマの場合、タイヤを靴に例えることが多いけれど、自分の足と靴がしっかり締結されていないと靴のポテンシャルは十分に発揮できない。19インチになりこれまでよりタイヤの性能が向上した分、それをきちんと使い切らないと意味がないわけで、新型ISのインチアップは単なる見た目の印象のみならず、それに伴う操縦性や接地感の改善も果たされていた。
動きの「つながり」が心地良い
コーナリングもこれまで以上にスッキリとして、挙動もスムーズになっている。コーナーの手前でしっかり減速すると、ボディはピッチング方向に動いてフロントに荷重がかかる。ステアリングを操舵するとタイヤが動きコーナリングフォースが立ち上がって今度はボディがロール方向に動きながら回転方向のヨーが発生、クルマが向きを変え始める。
ここまでの一連の動きが間断なくきれいにつながっていてとにかく心地いいのである。ステアリングの切り返しが続くような場面でも、ばね上の動きは途切れなく操舵応答遅れも見られない。ステアリングを切り始めてからまた真っ直ぐに戻すまでの間で、気になるような挙動や仕草はまったくなかった。まったくないから、ぼんやり運転していると何も感じないかもしれないけれど、ばね上のボディの動きを意識すると「へー」と思わず唸るはずである。
踏ん張りが効く粘り強いリヤ
新型ISはプラットフォームを共有しながらも、ボディは各所に手が加えられていて、スポット溶接の打点数や場所、構造用接着剤の使用などを積極的に採り入れることで、重量増を抑えつつボディ剛性を上げている。特にCピラーのインナーの剛性アップはリヤの接地性向上に繋がっているそうだ。
実際、リヤは従来型よりもしっかり路面を掴むようになっている。FRだから、トラクションがさらにかかるようになってエンジンのパワー損失を低減しているし、旋回中の安定感も向上している。ただし、コーナーで進入速度を少し上げてクリッピングポイントまで追い込んでいくと、「そろそろリヤが穏やかにブレークしてくれるとカウンターステアを当てて挙動をコントロールできるな」と思ったあたりで、先にフロントがアウト側へ逃げてしまう場面があった。
この事象は従来型でも見られたが、そのときはもう少し旋回速度が低かったので、限界域は確かに高くなっている。そこでのフロントとリヤの接地バランスでいうと、若干リヤ過多になっていたという印象だ。しかし、こうした状況はサーキットだから発生したもので、公道でのドライブで遭遇することはまずないと思われる。
個人的には、ステアリグフィールがもっとソリッドでもいいと感じた。特に切り始めのところで、タイヤの動きやコーナリングフォースがより明確に伝わってくると、ステアリングを切ることがより楽しくなるだろう。
鋭くなった反射神経
パワートレインは従来型と基本的に同じなので、大きな印象の変化はないものの、IS300hの中間加速のレスポンスと伸びのよさ、IS300のシフトスケジュールのリニアリティに好感が持てた。
これまでのIS300hは、発進時にはモーターのサポートを受けて力強く動き出すものの、速度が乗るまでの過渡領域で一瞬のトルクの落ち込みとレスポンスの悪さがあった。新型ではこれが改善されていて、それは走り出してすぐに実感できる。これならハイブリッドでもいいかもと思った。
IS300のシフトスケジュールは、Dレンジで走行している時のギヤ選択がドライバーの意志にかなり近くなっている。具体的には、旋回中にスロットルペダルを戻しても無用なシフトアップはしないし、コーナーへの進入時に減速するときちんとシフトダウンしてくれるようになった。
「通好み」のコンパクトFRセダンへ
従来型と比較すると、車両重量はどのグレードでも約10kgしか重くなっていないので、パワースペックに変更がなくても力不足に感じる場面はほとんどないだろう。IS350は重厚感、IS300は軽快感、IS300hは斬新感を得られると思うけれど、自分はIS300の爽快な走りがこのクルマに合っているように感じられた。
いずれにせよ、洗練や熟成や成熟という言葉が新型ISには相応しいものの、前述のように従来型から劇的に様変わりしたわけではない。一方で、新型ISに試乗していろんな場面で改善の痕跡を見つけられたとしたら、相当の運転スキルと解析能力をお持ちだとお見受けする。しいていえば新型ISは“玄人好み”のコンパクトスポーツセダンかもしれない。
REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)
【SPECIFICATION】
レクサス IS300 Fスポーツ
ボディサイズ:全長4710 全幅1840 全高1435mm
ホイールベース:2800mm
トレッド:前1580 後1600mm
車両重量:1640kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1998cc
最高出力:180kW(245ps)/5200~5800rpm
最大トルク:350Nm/1650~4400rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前235/40R19 後265/35R19
レクサス IS300h(2WD) Fスポーツ
ボディサイズ:全長4710 全幅1840 全高1435mm
ホイールベース:2800mm
トレッド:前1580 後1600mm
車両重量:1690kg
エンジン:直列4気筒DOHC
総排気量:2493cc
最高出力:131kW(178ps)/6000rpm
最大トルク:221Nm/4200~4800rpm
モーター最高出力:105kW(143ps)
モーター最大トルク:300Nm
システム最高出力:162kW(220ps)
バッテリー:ニッケル水素電池
トランスミッション:電気式無段変速機
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤサイズ:前235/40R19 後265/35R19
レクサス IS350 Fスポーツ
ボディサイズ:全長4710 全幅1840 全高1435mm
ホイールベース:2800mm
トレッド:前1580 後1570mm
車両重量:1660kg
エンジン:V型6気筒DOHC
総排気量:3456cc
最高出力:234kW(318ps)/6600rpm
最大トルク:380Nm/4800rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前235/40R19 後265/35R19
【問い合わせ】
レクサス インフォメーションディスク
TEL 0800-500-5577
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みんなのコメント
買えない貧チャン・ゲームでしかハンドル握った事しか無い妬みヤフコメ族が。
斜め後ろや真横から見た時のフェンダーラインにやられました
唯一、今流行りの左右が繋がったテールランプのみ気に入りませんでしたが、久々にデザインで本気で欲しいと思ったセダンです