マン-マキシマム、マシン-ミニマム
執筆:Illya Verpraet(イリヤ・バプラート)
【画像】モデルチェンジ ホンダHR-V(ヴェゼル) 欧州で競合するクロスオーバーと比較 全150枚
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)
ホンダのクロスオーバー、HR-V(ヴェゼル)が3代目へモデルチェンジし、英国へ上陸した。ヴェゼルとして数えれば2代目となる。英国での広告展開を見ると、近年のテクノロジー満載状態のクルマへ困惑するユーザーを、配慮したかのようだ。
そのキャッチコピーは、「マン-マキシマム、マシン-ミニマム」。少し語呂が良くないものの、テクノロジーやデザインは運転手や同乗者のニーズに応えるべきだ、という考えを端的に表現しようとしたのだろう。
英国へ導入される最新のHR-Vは、兄弟モデルに当たるジャズ(フィット)と同様に、ハイブリッドのみ。ハイブリッド・システムも基本的には同じものながら、増えた車高と車重に対応するため、バッテリー容量と21psの馬力が追加されている。
内燃エンジンは、1.5Lアトキンソンサイクルの4気筒ガソリン。そこに発電用と駆動用、2基の電気モーターが組み合わさり、システム総合で最高出力130psと最大トルク25.8kg-mを発揮する。
市街地を普通に走行している限り、内燃エンジンは駆動用バッテリーを充電する機能に徹している。駆動用モーターだけで賄えないパワーが必要になると、トランスミッションを介してタイヤの駆動も行う。
一方で高速クルージング時は、駆動用モーターが停止する。内燃エンジンだけの方が、高速域では効率的に走ることができるためだ。この制御方法は、ホンダのハイブリッド・システムに共通する。
知的なインテリアに存在感のあるボディ
HR-Vに乗り込んでみると、9.0インチのインフォテインメント用タッチモニターと、7.0インチのメーター用モニターがダッシュボードへ並ぶ。衝突被害軽減ブレーキや車線維持支援システムなど、アクティブセーフティ機能もふんだんに実装される。
エアコンの送風口も賢い。一般的にダッシュボードに配されるものに加えて、両端にLの字を逆さにしたような細長い送風口が切られている。空気のカーテンのような層を作り、ガラス窓から届く冷気や熱気を防いでくれるという。
さらに車内に気流を作ることで、直接乗員へエアコンの風を当てることなく、快適な温度を保つ効果もあるとのこと。聞くだけで心地よさそうだ。
英国のホンダがマジックシートと呼ぶレイアウトも採用。燃料タンクは先代より10mm持ち上げられたフロントシートの下側にあり、リアシートの座面を跳ね上げて高さ方向に広い空間を作ることができる。自転車も問題なく載せられる。
リアシートは30mm後方に移動し、足もと空間には一層の余裕が生まれた。とはいえ、定員乗車時の荷室容量は319Lと小さい。
ボディサイズは先代とほぼ変わらない、全長が僅かに伸びたが、全高は少し低くなっている。見た目の存在感は大きく、印象は少し大きいトヨタC-HRやルノー・アルカナと同等。実際の全長は4340mmで、そこまで長くはない。
全幅はライバルたちよりも広い。車内空間だけでなく、見た目的なゆとりも生んでいるのだろう。
インテリア素材の統一感へヒトコト
さて、「マン-マキシマム、マシン-ミニマム」を主張する仕上がりはどれほどだろう。発進させてみると、直感的でとても運転しやすいことがわかる。
ただし、ドライビングポジションはコマンドスタイルというより、シートの上に乗せられた感じ。ルーフの位置も、競合するクロスオーバーより低く感じられる。それ以外は好感触で、シートはサポート性にも優れる。
エアコンやオーディオのボリューム、運転支援システムなど、頻繁に操作したい機能には実際に押せるハードボタンが残されている。インフォテインメント・システムは反応が素早いわけではないものの、使い勝手は良好だ。
車線維持支援システムは、舗装状態が新しく白線もきれいに引かれたドイツの道では、良く機能していた。アダプティブ・クルーズコントロールは、車間距離が開いて加速するまでに少し待つ印象を受けた。
インテリアには、風合いに優れる素材と、そうではない素材が混在している。シートのファブリックやステアリングホイール、ボタン、アームレスト、ダッシュボードにあしらわれた合成皮革などは非常に印象が良い。
一方でシフトノブは冴えないゴムコーティング。ダッシュボードの合成皮革以外の部分も、テクスチャー処理が高いとはいえない。1980年代のコンパクトカーのように感じてしまった。
質感の良いシャシーなどプラス要素は多数
一般道での走りは非常に洗練されたもの。高速クルージング時や市街地でも、ノイズは最小限に抑えられている。乗り心地にも、クラストップといえるしなやかさがある。
コーナーへ速めに侵入するとボディロールが生じるが、操舵時に少し粘るような感触のあるステアリングホイールへは、少ないながらもタイヤからの情報が伝わってくる。グリップ力にも不足はない。
反面、シャシーの質感が優れるだけに、ハイブリッド・システムの振る舞いが気になってくる。少し鋭い加速を求めると、CVTの躊躇するような動きに気を揉んでしまう。
エンジンはしばしば急激に回転数を高め、小さくないノイズを車内へ響かせる。ステアリングホイールにも、僅かな振動が伝わっているようだった。表示されていた燃費は15.9km/Lと悪くないだけに、少々残念ではある。
英国ではハイブリッドのみとなった新しいホンダHR-V(ヴェゼル)には、好ましい要素が沢山ある。シャシーはクラス上位のまとまりがあり、過度なデジタル技術で運転中にイライラすることもない。
インテリアも、素材の知覚品質にばらつきはあるものの、充分に心地良い。荷室容量は小さいとはいえ、知的なレイアウトで実用性も高いといえる。
英国価格はルノー・アルカナやトヨタC-HRのハイブリッド版と同等。「マン-マキシマム、マシン-ミニマム」は充分に達成できていると思う。唯一、ハイブリッド・システムの更なる磨き込みに期待したい。
ホンダHR-V(ヴェゼル)i-MMTアドバンス eCVT(欧州仕様)のスペック
英国価格:2万9210ポンド(444万円)
全長:4340mm
全幅:1790mm
全高:1582mm
最高速度:170km/h
0-100km/h加速:10.7秒
燃費:18.4km/L
CO2排出量:122g/km
車両重量:1380kg
パワートレイン:直列4気筒1498cc自然吸気+ツイン電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:130ps/6000-6400rpm(システム総合)
最大トルク:25.8kg-m(システム総合)
ギアボックス:CVT
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みんなのコメント
日本ではトヨタ車みたいなキャラクターラインモリモリの分かりやすいデザインの方が受けが良いものこれまた事実。
個人的にはヴェゼルの方向性、物の良し悪しがわかる大人向けで、かなりいいなと思う。
不満なら買わなきゃいいですね。