ほぼ新車の「チェンテナリオ LP770-4 ロードスター」が出品
2024年1月31日、RMサザビーズがフランス・パリで開催したオークションにおいてランボルギーニ「チェンテナリオ LP770-4 ロードスター」が出品。同車は2016年に世界限定40台が生産されました。40台の振り分けは、クーペが20台/ロードスターが20台となっています。ベース価格は軽く2億円と言われた同車のオークション結果をお伝えします。
少年を熱狂させたランボルギーニは水面下で苦難の連続だった! トラクターから始まったその歴史を紐解く
フェルッチオ生誕100周年を記念して登場
「チェンテナリオ」とは、イタリア語で100周年を意味する言葉だ。ランボルギーニが2016年のジュネーブ・ショーで発表したチェンテナリオの解説を始めるには、まずはこの言葉が意味するものを明らかにしなければならないだろう。
2016年から100年前の1916年、アウトモビリ・ランボルギーニ社はまだ存在していなかったが、将来さまざまなビジネスで成功を収めることになる、ひとりの男がモデナに近いチェントの街で生を受けた。
彼こそが後にランボルギーニ社を創立するフェルッチオ・ランボルギーニであり、このチェンテナリオはフェルッチオの生誕100周年を祝してクーペが20台、ロードスターがやはり20台という数字で限定生産されたモデルだった。もちろんジュネーブでの発表段階で、そのすべてのオーナーが決まっていたことは想像に難くないところである。
この時チェンテナリオのアンヴェールに際して、プレゼンテーションのステージに立ったのは、この仕事を最後にアウディ傘下のクワトロ社(のちのアウディ・スポーツ社)のCEOに移籍が決まっていたステファン・ヴィンケルマン氏、その人だった。
結局彼はその後ブガッティ社のCEOを務め、再びランボルギーニのCEOへと返り咲くのだが、個人的にはチェンテナリオは同時に、彼への惜別の作品と見えたのもまた事実だった。
さらに付け加えるのならば、チーフ・デザイナーのフィリッポ・ペリーニも、このチェンテナリオをもって、VW傘下のイタル・デザイン社へと移籍。同じジュネーブ・ショーの同社のブースには、同社での初の仕事となる「GTゼロ」が出品されていた。
そのような事情もあったからなのだろう。チェンテナリオは数あるランボルギーニの限定車の中でも特別な存在として自分の記憶の中に残る。2016年のジュネーブ・ショーに出品されたチェンテナリオはクーペ・バージョンだった。そのデザインは今後のランボルギーニ車の方向性を示すものと説明されたが、それはもちろん造形の美しさのみならず、デザインには確かな機能が必要なのだというこれまでの伝統的なコンセプトを継承したものでもある。
購入してから71kmしか動いていない
チェンテナリオのデザインで最もインパクトがあるのは、やはり前後のセクションだろうか。ボンネットには巨大なエアアウトレットが存在し、フロントのバンパースポイラーから導入されたエアを排出するプロセスにおいてもダウンフォースの発生を担う。
ボディサイドを流れるラインもまた特徴的だ。ヘキサゴン=六角形は当時からランボルギーニが好んで使用してきたモチーフだが、それはサイドウインドウやエンジンフード、そして前後のフェンダーとサイドステップによっても構成される。リアの大型ディフューザーや可変式のリアウイングも見どころだ。
モノコックやボディのほとんどでカーボンファイバーを使用するチェンテナリオは、その乾燥重量がわずかに1520kg。その捻じり剛性は3万5000Nm/度に達するというから、いかに軽量で高剛性なモデルであるのかが分かる。
ミッドに搭載されるエンジンは770psの最高出力を発揮する6.5LのV型12気筒自然吸気で、これに7速のISR(シングルクラッチのセミAT)を組み合わせる。駆動方式はもちろん4WD。0‐300km/h加速を23.5秒で走り抜き、最高速では350km/h以上を可能にするというチェンテナリオ。それを手に入れるには、もはや世界的にメジャーなオークション・シーンに目を光らせているほかはないというのが現実だ。
今回の出品車は20台が生産されたロードスターのうちの1台。走行距離はわずか71kmというから出品者による使用はほとんどなかったといえる。主催者のRMサザビーズは300万~400万ユーロ(邦貨換算約4億8000万円~6億4000万円)のエスティメート(予想落札価格)を掲げたが、残念ながら落札者は現れなかった。
現在は320万ユーロ(同5億1200万円)で応談という状態になっている。ちなみに新車時にチェンテナリオに設定されていた価格は175万ユーロ。その価値は大きく上がった計算になる。
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