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自動運転技術での「日本」の現在地 【自律自動運転の未来 第1回】

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自動運転技術での「日本」の現在地 【自律自動運転の未来 第1回】

 世界中で進められている自動運転技術の開発は2021年を境に状況が一変、実用化に向けた段階へと本格的に突入します。これを受け、ベストカーWebにおいて短期集中連載「シリーズ 自律自動運転の未来」を掲載いただくことになりました。

 シリーズ前段では、先進技術技術が自動運転技術へと昇華されてきた経緯を改めて整理し、実装されていく自動化技術についての解説を行います。中盤では、実社会で自動運転技術を運用するにあたり法律上の課題や免許制度、さらには保険制度との関係を整理します。

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 その過程で、数年前から盛んに聞かれていたGoogleやApple、UberといったIT企業による自動運転車両の開発はどうなったのか、現状はどうなのか、という点もご紹介します。

 また、運転操作の楽しみはいかにして残せるのか、社会的受容性はどのように高めていくのかなど、我々の生活と自動運転技術の関係性を結びに代えていく予定です。

 加えて、乗用車以外の乗り物、具体的には小型~大型トラック・バスなどの商用車、そして二輪車(モーターサイクル)への実装が進む自動運転技術についても、交通コメンテーターである筆者自身の試乗レポートを交えてご紹介します。

文/西村直人(交通コメンテーター) 写真/HONDA、Adobe Stock

【画像ギャラリー】自律自動運転はどこまで進んでいるのか、日本はどの位置にいるのかを画像で見る

■「自動運転」に一番重要なのは「人との協調」

 現在、乗り物全般の自動化技術は多種多用なメディアで紹介されています。活字中心、動画主体など表現方法による差はあるものの、その多くは「どんなことが自動で行えるのか」、「搭載しているセンサーの性能はどれほど高いのか」、「技術供与やソフトウェア開発にはどこの企業が関与しているのか」など、いわゆるスペックに寄った内容でまとめられています。確かに、システムの全体像を知る上で、各部の性能などにスポットを当てたタイムリーな紹介は非常に重要です。

現在日本において「自動運転」と言われている技術のほとんどが「運転支援装置」。操作の責任はドライバーにあり、一部ハンドルから手を放すことも可能だが、「いつでも操作できる状態」にすることが必須(AdobeStock@GARDENS)

 こうしたスペックは数値に現わしやすく、予備知識がなくとも比較が簡単に行えるため、我々の理解促進へとつながります。しかし、採り上げられた数値を断片的に切り取り比較してしまうと、連動する他の数値への関心が薄れ本来の意義が隠れてしまったり、“最新の技術”が“最高の技術”であるという限定的な解釈が一人歩きしたりする可能性が高まります。これは我々の理解阻害を引き起こします。

 自動運転技術では基本的なスペックの高さとともに、ドライバーである人に対してどれだけ受け入れやすいシステム設計がなされているのかという受容性の評価がとても大切です。なぜなら2021年から加速する実用化段階では、人と機械(自動運転システム)との協調がもっとも重要視されるからです。

 シリーズ第一弾の本稿では、自動化レベル3技術を題材に日本における自動運転技術の現在地を探ります。また、メーカーごとの自動運転技術に対する「思想」の違いや、自動走行状態を司るシステム側の競合と葛藤を例に、人と機械の協調が重要視される理由を考えていきます。

国土交通省が作成した、自動運転の「レベル1」から「レベル5」までの定義。現状の「レベル2」から「レベル3」の間に大きな技術的、概念的な階層があることがわかる(クリックで拡大)

■「レベル3」の先陣を切ったホンダ

 2021年、自動運転技術における最初のトピックは、日本において自動化レベル3技術を実装した車両が発売されることです。2020年11月11日、ホンダ「レジェンド」が自動運行装置を備えた世界初の型式指定を受け、2021年3月末までに市販されることが決定しています。

世界に向けて「レベル3」の先陣を切るのはホンダ。同社の最高級車であるレジェンドに搭載される

 ここに至るまで国土交通省では、「自動運行装置の保安基準等の概要」として次のような経緯でとりまとめを行っています。

 2018年9月、基準策定までの車両安全に対するガイドライン策定を開始。ここでは、自動運転技術を搭載した車両が公道を走行する際の保安基準の細かく定められ、同時に過去に実装されてきた先進安全技術からどのような普及方法が最適なのか、その検討も行われてきました。

 たとえば、前走車への追従走行を行う「アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)機能」や、車線の中央を走行するようステアリング操作をサポートする「車線中央維持(LKS)機能」の普及具合から、ドライバーへの過信を防ぐにはどのようなディスプレイ表示や警報ブザーのあり方が良いのかなどが議論されました。

 ここでのディスプレイ表示や警報ブザーは、人とシステムで情報のやりとりを行うために使われることからHMI(Human Machine Interface/人と機械の接点)と呼ばれています。技術革新と人間工学が同調しはじめた1980年代から注目されはじめたHMIの存在は、運転時の快適性を高めつつ、同時に解析技術の向上から、事故抑制にも効果があることが実証されています。

■日本は「自律自動運転」のリーダーに!?

 2019年5月には、自動化レベル3の礎となる改正道路運送車両法が成立。同時期に国連の「自動車基準調和世界フォーラム」(WP29)での自動運転技術に対する国際的な枠組みを踏襲し議論を深めています。2020年4月には改正道路運送車両法の保安基準が施行され、事実上、ここから自動化レベル3を実装した車両の販売が認められました。

 この2020年4月に施行された改正道路運送車両法の保安基準については、自動化レベル3技術を搭載したレジェンドの発売以降に詳細を解説します。

 現在に至るまで日本は、WP29の専門分科会において議長国や副議長国を担っていることから、2020年6月にWP29において成立した「自動運行装置の国際基準」では、リーダー的役割を果たしてきました。

「日本の自動運転における技術開発は諸外国と比較して遅れている」という論調がみられますが、現実はその逆です。正確には「木を見て森を見ず」。

 日本は、ディファクトスタンダード(事実上の業界標準)を奪取すべく専門分科会や「自動運転基準化研究所」での活動を通じてあらゆるプランをWP29に提案しています。産官学連携を武器にした強い発信力を持つ日本は、国際基準の成立において中心的存在として認知されているのです。

 成果のひとつとして「衝突被害軽減ブレーキ」の国際基準(2019年6月成立)が挙げられます。日本では2021年11月以降に発売される新型の国産車に衝突被害軽減ブレーキの義務化が始まりますが、この国際基準は日本が発案したプランそのものです。このように、先進安全技術と自動運転技術において日本はルール作り側の最先端に位置する。これが現在地です。

ホンダはクルーズ・GMとともに日本での自動運転モビリティサービス事業に向けた協業を行う。発表されたイメージ画像によると、公共交通機関のような(バスのような?)使い方が想定されそう。2021年中にGMボルトを使った日本国内での技術実証を目指すとのこと

■開発担当者の「感性」によっても違う!!

 さらに、自動化レベル3技術の市販車への実装においても日本が世界初となったわけですが、課題も浮き彫りになってきました。自動車メーカー間で自動運転技術、さらにはそのベースとなる先進安全技術に対する考え方や設計手法の違いが明確になることが明らかになってきたからです。

 前述した通り、技術指針や保安基準については国際的な枠組みがあり、どの自動車メーカーであっても同一の自動化レベル技術を実装するためには、同じルールでシステムを設計します。

 しかし、自動車は車種ごとに運転特性に違いがあるように、同じシステムを用いても例えば先進安全技術ではその作動感覚に違いが生じます。一例がACCの加減速特性です。同一車種であっても内燃機関車と電気自動車ではわりと大きな違いが確認できます。

 2.0Lガソリンエンジンにマイルドハイブリッドシステムを組み合わせたマツダ「MX-30」と、電気自動車である「MX-30 EVモデル」では、同じ先進安全技術群である「i-ACTIVSENSE」を搭載していますが、その一機能であるACCの使い勝手は同一条件で比較試乗してみるとEVモデルが秀でていました。電動モーター駆動ならではの反応の良さが要因です。

2021年1月28日に発売されたMAZDA MX-30 EV MODEL(451万~495万円)。自律自動運転は車種ごと、メーカーごと、ユニットごとに作動感覚が異なる

 同様に、自動化レベル3技術ではフットオフ、ハンズオフに加えて限定領域ながらアイズオフまでも実現可能にするため、システムによる動的制御のあり方が注目されています。

 ルールに則った技術であっても制御内容は千差万別。たとえば、ブレーキを掛けながら緩やかにステアリングを自動操舵して、隣車線の車両動向に応じてアクセルを踏み込む……、こうした多角的で複合的なシーンでの制御実現には、メーカーごとの、もっと言えばシステム設計担当者の感性に委ねられる部分が大きく、それが実装段階での葛藤を生み出します。

 その結果、理想とする制御と実現可能な制御にギャップが生まれ、その溝を埋める作業(≒多角的で複合的な運転操作)は、ドライバーにオーバーライドという形で引き継がれていくのです。

 また、レベル3技術搭載車の車両価格が大幅に向上してしまうと早期の普及が見込めないことから、可能な限り、ベースとなる標準車と部品共有化を図る必要があるものの、求められる性能や信頼性の面でそれが成立しない、そんなジレンマもすでに発生しています。

 このように日本における先進安全技術や自動運転技術は、技術レベルの高さだけでなく、国際基準策定においても中心的な役割であることがおわかり頂けたと思います。一方、高度化が進む自動化レベルでは、理想と現実のギャップが存在し、そこには人が機械(システム)の制御を補完する人と機械の協調運転が求められています。そして2021年以降はそれが益々、重要視されていくのです。

【画像ギャラリー】自律自動運転はどこまで進んでいるのか、日本はどの位置にいるのかを画像で見る

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