6輪F1マシンのレプリカ
過去のF1史において、他に例がない6輪車「ティレル(タイレル)P34」のことを覚えているモーターファンは多いはず。水戸市で「巴自動車商会」を営む綿引雄司さんは、驚くことにその6輪ティレルP34を所有している。もちろん、これは本物ではないレプリカになるが、その製作過程を聞くと、むしろ本物よりも興味深いマシンだった。詳細をお伝えしよう。
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レースで見事な活躍を果たした
ティレルP34は、わずか2年足らずの活躍だったが「シックスホイーラー」と呼ばれ、世界中で圧倒的な認知度と人気を誇った。4輪以外は考えられないとされる中で、特殊すぎる6輪マシンは、設計者であるデレック・ガードナー氏の考えにもとづき開発された。その狙いは「小径タイヤによって空気抵抗を減らし、トップスピードの向上を図るとともに、タイヤの接地面積を拡大させ、コーナリング性能とブレーキ性能の強化を果たす」というものだった。
実際、この理念で誕生したティレルP34は、1976年のレースにおいて全59レース中14回の表彰台を獲得、うち優勝だけでなく、チームとして1-2フィニッシュも達成している。また、この年は、日本にとっても記念すべきF1世界選手権が初めて開催された。6輪のティレルP34は、衝撃デビューからの活躍が話題となり、富士スピードウェイに集まった観客の注目の的に。そして、実際のレースでも見事な走りを披露し2位入賞を果たした。
驚きのレプリカ製作過程
そんな、我々にとっても懐かしいティレルP34だが、水戸市で「巴自動車商会」を営む綿引雄司さんは、驚くことにその6輪ティレルP34を所有。もちろん、これは本物ではないレプリカになるが、その製作過程を聞くと、むしろ本物よりも興味深いマシンだった。
綿引さんはアルミ板を使った造形作りの達人として知られている。過去には、ランボルギーニ「イオタ」のアルミ製のオブジェを手がけ、現在それは芸術作品としてイタリア本国「ムゼオ フェルッチオ ランボルギーニ」にて大切に保管されている。
このティレルP34もアルミ板と鋼材を駆使して作っている。図面はタミヤのプラモの12分の1スケールを使って現車に大きさに合わせ計算し、寸法の割り出しを行った。
主構造はアルミモノコックで、アルミ製25mm×12mmのダイス加工角材を半自動溶接機を使ってトラス構造で組み上げる。そうして組んだスペースフレームにアルミ板をリベットで固定し、ボディ成形している。その作りは「スーパーセブン」に近いのかも知れない。
エンジンはスズキ GSXハヤブサ用1300cc直4エンジンを搭載し、ミッションもそのまま流用し、トランスアクスルごと縦置きする。サスペンションについては125ccのバイク用チューニングサスをフロント4本セット、リアはスズキのネイキッドバイクのリンク式モノサスを左右に1個ずつ取り付けているから凄い発想だ。
職人技のリアルプラモデル
また、ティレルと言えば特徴的なフロントの小径4輪タイヤだが、これについては、旧「ミニ」用のハブを使って10インチのホイールをセット。そこにイギリス・エイボン社が本物のティレルP34をヒストリックカーイベントで走らせるために再生産したタイヤを独自ルートで入手。じつはこのタイヤを見つけたことをきっかけに6輪ティレルを作ろうと思ったそうだ。ちなみに、極太のリアについてはホイールもタイヤもF3000用をそのまま使っている。
機能パーツについては、バイク用部品を多用することでカバーしているため、コクピットの大きさもきっちり再現しているが、メーター等は市販バイク用が付いている。だが、作り込みの雰囲気は最高だ。
また、塗装してマーキングした美しいカウルはFRP製にしか見えないが、そのすべてを手で叩いて成形したアルミ製であることに驚かされる。このアルミを使った理由について綿引さんは
「FRPだと原型を作って反転して、そこからFRP積層して作らないといけないけど、アルミならいきなり現物が作れるので、かえって簡単なんです」
と話す。カウル部分はエッジを丸めたりしてFRPの雰囲気を出す一方、現物がアルミ製のウイングはいかにもアルミらしくシャープに作ってある。こういう表現のうまさが職人技と言える。
この6輪ティレルは、お飾りではなく、実際に走ることだってできる。これまでにサーキットを何度も走らせテストを行ってきた。現在は、強度的にも問題なく、かなり攻めた走りも可能。ホンモノのF1にはとうていおよばないが、このある意味でリアルプラモデルは相当レベル高く作られている。
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みんなのコメント
たいれる
でゅばいえ
しぇくたあ
が懐かしい。
今の日本GPでは考えられなかった風景。