2021年2月17日に北米で販売が開始された、三菱の新型アウトランダー。新たなデザインや、得意とする4WD技術の搭載など、三菱の強みが生かされた内容で、9年ぶりのモデルチェンジとなった。
三菱の国内市場の販売動向を見ると、2020年3月はデリカD:5が2,963台、エクリプスクロスが1,441台、デリカD:2が710台、アウトランダーが307台と、厳しい状況だ。今回の新型アウトランダーは、国内販売の立て直しをかけ、是が非でもヒットさせたいモデルにちがいない。
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三菱の国内販売の今後を背負って登場する新型アウトランダーの日本仕様は、どういった内容となるのか。そして、激戦の国内ミドルクラス4WD SUVカテゴリで、一旗揚げることができるだろうか。
文:吉川賢一
写真:MITSUBISHI、TOYOTA、NISSAN、MAZDA、HONDA、奥隅圭之
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エクステリアデザインは大成功!!
アウトランダーは、これまでグローバルで累計販売台数260万台を超えている人気ブランドであり、日本市場での売れ行きからは想像できないほど、海外市場では売れているSUVだ。これまでのアウトランダーは、オンロードとオフロードの中間を狙ったようなスタイルであったが、新型では、ハードな走行もこなせるオフロードSUVのイメージを多分にとりいれたデザインになった。
デリカD:5やエクリプスクロスの系統に倣った、「ダイナミックシールド」が取り入れられたワイルドなフロントフェイスも相まって、「あくの強い」雰囲気へと変わった。全体的に塊感が感じられるボディは、新型エクストレイルとも大きくかぶるようにも見える。
新型アウトランダーのデザインのインパクトは十分にある。デザインは大成功ではないだろうか
こちらが現行のアウトランダー 比べると新型のスタイリッシュさが際立つ
グローバルでライバルとなるのは、RAV4やローグ(日本名:エクストレイル)、フォレスター、CX-5といったミドルクラス4WD SUV達だ。そうした強豪の中に入っても、新型アウトランダーのデザインのインパクトは十分にあり、斬新に映るだろう。「あくの強さ」も含めて、デザインは大成功ではないだろうか。
ただし、デリカD:5やエクリプスクロスを見ても分かるように、デザインだけでは、硬い日本人の心と財布を開けることは難しい。
クリーンでスタイリッシュ、清潔感にあふれたインテリアになった
3列シートの7人乗りSUVとして、先代アウトランダーを踏襲。ただし3列目のニースペースや簡便なヘッドレストなど、割り切った設計もある
日本・欧州には三菱版e-POWERも!?
北米で販売され始めた新型アウトランダーのエンジンは、新開発2.5Lガソリンエンジン。これは、2020年10月から北米で販売され始めた、新型ローグと共用のエンジンである。要はこの2台、異母兄弟のような立ち位置となる。三菱と日産の協業の成果が、いよいよ主力商品で表れ始めた、ということだろう。
そうなると、三菱車のパワートレイン構成も、大きく進化する可能性が出てくる。つまり、三菱版のe-POWER車だ。日産の「PRO PILOT」を三菱では「M-PILOT」としたように、三菱版e-POWERは「m-POWER」とでも名前を変え、登場してくる可能性が十分に考えられる。
PHEVモデルこそが、アウトランダーのブランドバリューを引き上げてきたのは間違いないが、ここ数年で、4WD+SUV+プラグインパイブリッドのクルマは多々登場してきており、PHEVは三菱特有のアイコンでもなくなってしまった。アウトランダーとしては「次の一手」がなければ、ブランドバリューを維持することは難しい。
2020年10月下旬より北米で発売開始した新型ローグ、現時点は2.5リッター4気筒ガソリンエンジンのみ。2021年4月に欧州仕様の新型エクストレイルへ新型e-POWERを搭載する旨がリリースされた
2021年4月、欧州日産は、欧州仕様の新型エクストレイルに、新型キャシュカイに搭載予定の、1.5リッターのVCターボを発電用エンジンとした「e-POWERターボ」を搭載することを発表している。
日本仕様についてはまだ発表されていないものの、日本仕様のエクストレイルにもこの「e-POWERターボ」が搭載されることはほぼ間違いなく、そうなると、新型アウトランダーにも、このe-POWERターボが搭載される可能性は高いと考えられる。
純ガソリンエンジンが許される仕向け国(北米とインド、アジア圏)には廉価な2.5LガソリンエンジンとPHEVを、電動化待ったなしの仕向け国(欧州、日本など)には、価格が抑えられるe-POWERとPHEVのラインアップで勝負するのでは!? というのが、筆者の予想だ。
日産と三菱は、おそらく、東京モーターショーでe-POWERを積んだ両車を発表するつもりだったと考えられ、残念ながら同ショーは中止となってしまったが、日程的には同ショーと同じタイミングの2021年10月に、新型エクストレイルと新型アウトランダーのe-POWERが、同時に発表されるのではないだろうか。
次期型アウトランダーPHEVは2022年に登場する計画。e-POWERはその前に発表されるのではと予想
新型アウトランダーが好きになる「熱いストーリー」が欲しい!!
国内外のライバルメーカーは、売れ続けたアウトランダーPHEVを、存分に研究しつくした商品を登場させている。トヨタのRAV4 PHVは、スペック的にはアウトランダーを全て上回ってきた。「プラグインハイブリッドSUVトップ」となったアウトランダーPHEVではあるが、他メーカーのプラグインハイブリッドの登場で、初代の功績を超えるどころか、一気に販売が落ちていく可能性もある。
しかも、新型エクストレイルもe-POWERとPHEVの2種類を搭載となると、新型アウトランダーの国内での立場は一層、無くなってしまいかねない。三菱ならではの魅力、顧客に強く訴える戦略や広告が欲しいところだ。
それには、三菱が強い最も強みを感じる領域で、戦う姿勢を示すことではないだろうか。4WD制御世界一を誇るならば、ラリー競技やオフロード耐久レース、ダートトライアルのような場所かもしれない。
国内オフロードサーキットのタイムアタックを、独自に始めて、「SUV最速タイム更新!!」とアピールしてもいいと思う。新型エクリプスクロスPHEVの動画広告は、魅力の破片も感じられなかった(あのクルマである必要が全くない)。「もっと熱いストーリー」が欲しいのだ。
PHEVを含めたアウトランダーを、一切の妥協なく、最高のクルマとしたうえで、「良いクルマをいかに売り広げていくか」という点に関しては、北米市場では強い日産とのシナジー(相乗効果)は大いに利用してほしいと思う。この新型アウトランダーをきっかけに、三菱、そして日産が活気づくことを、期待している。
三菱の強みである4WD制御「S-AWC」をアピールする場所が欲しいところだ。パリダカやオフロードレースに出るなどでもよいと思う
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