2230kgのボディに571psのV8ツインターボ
text:Greg Kable(グレッグ・ケーブル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
アウディS8が挑戦する舞台は、自動車ビジネスでも最も戦いの厳しい場所。自動車メーカーのプライドを掛けて、最上級のリムジンを提供する必要がある。圧倒するほどの贅沢さに快適な乗り心地と、気持ちが安らぐ上品さ。目の肥えた顧客の要求は低くはない。
アウディが掲げるフラッグシップのスポーツ仕様の場合、それに加えてスーパーカー級の高性能も求められている。プレミアム・ブランドのライバルモデルを凌駕する、ドライバーが積極的に操る喜びも期待されてくる。
これらのすべてを全長5m以上、車重2230kgのボディに収める必要がある。従来までのS8でも達成を目指した内容ではあったが、ハイエンドモデルの競争で高い成功を収めることはできなかった。
新しくなったS8は、驚くほどの仕上りを得てきた。エンジンは改良を受けた4.0LのV8ツインターボ・ガソリンで、マイルド・ハイブリッドを搭載。アウディ最新のサスペンションが足元を支えている。
ただし最高出力は571psで、第3世代のS8と比べると、エンジンは基本的に同じものながら34psほど目減り。そのかわり最大1.8barに高まるターボブーストの力を借りて、最大トルクは5.1kg-m向上。2000~4500rpmで81.4kg-mを発生する。
プレミアムライバルで比較してみると、マイナーチェンジを受けたBMW M750i xドライブが搭載するのは4.4LのV8ツインターボで、最高出力530ps、最大トルク76.3kg-m。メルセデスAMGのS63は、4.0LのV8ツインターボで、最高出力611ps、最大トルク91.6kg-mとなる。
マイルドハイブリッドと新サスペンション採用
S8の増強されたパワーは、マニュアル変速もできるティプトロニック機能付き8速ATへ伝達。4輪駆動システム、クワトロには、後輪左右へ伝達されるトルクを必要に応じて変化させる、スポーツ・ディファレンシャルも装備する。
リアタイヤには最大で85%のトルクが伝えられる。一方で、必要に応じて最大70%のトルクをフロントタイヤへ送ることも可能だ。
アウディが新しいS8で強調するのがエネルギー効率の高さ。都市部など軽負荷時には、V8エンジンの片側4気筒を休止させる、シリンダー・オンデマンドと呼ばれるシステムを採用した。
0.47kWhと容量は小さいがリチウムイオンバッテリーも搭載し、電圧48Vのスターター・ジェネレーターによって最大で8kWのエネルギーを回生するマイルド・ハイブリッドも組み合わされる。これらによって燃費は最大で0.07km/L伸ばせるとしている。
技術的には思慮されているものの、結果は伸びていない。先代の燃費は10.4km/Lだったのに対し、新しいS8は8.7km/Lに留まる。二酸化炭素の排出量も、260g/kmと少なくない。
快適性とスポーティさを両立させているのが、新しいサスペンション。プレディクティブ(予測型)アクティブ・サスペンションと呼ばれるもので、カメラを用いて路面をスキャニングし、アクチュエータによって車高を常に調整するもの。
路面状態によって4輪を個別に、負荷を与えたり逃したり、といった制御が可能になる。コンフォート+モードでは、コーナリング時に車体を傾けて横方向の遠心力を弱める。ダイナミックモードでは、標準的なスプリング製のサスペンションの半分にまでボディロールを減らすことができるという。
インテリアの秀逸さはクラスを問わず
ダイナミック4輪ステアリング・システムは、前輪の切れ角を条件に応じて変化させるだけでなく、後輪にも舵角を与える。低速では前輪と逆に後輪が向きを変え、小回りを有利にし、高速域では前輪と同じ向きに角度がつけられ、安定性を高めてくれる。
アウディのハイパフォーマンス・サルーンは、これまでも控えめな見た目を持っていたが、今回も同様。4代目となったS8も、標準のA8と比べるとわずかにボディは筋肉質になっているものの、その差は僅かで、これ見よがしなところはない。
S8専用仕立てなところは、ルーバーが2重になったフロントグリルと、ワイドになったサイドスカート、アルミ風のミラーハウジングなど。楕円4本出しのマフラーカッターが、S8モデルであることを後ろ姿で物語る。
運転席のドアを開くと、車高が50mm自動で下がり、乗り降りを簡単にしてくれる。ドアを閉めると、エアサスペンションが膨らみもとに戻る。新しいシステムを内包することを示す、さりげない機能だ。
インテリアはエクステリアと同様に、標準のA8から細かな変更を受けている。個人的には、価格帯を問わず最高の仕上がりの1台だと思う。カーボンファイバーとアルミニウムの装飾トリムが加わり、新しいS8の雰囲気を一層引き立てている。
視覚的にも触覚的にも高級感あふれる素材に、シャープなグラフィックを表示するデジタルメーターと10.1インチのインフォテインメント・システムモニター。マルチファンクション・ステアリングホイールに、サポート性の良いスポーツシートが組み合わさり、運転環境としてはファーストクラスだと断言できる。
新しい足回りが叶えるこれまでにない走り
一般的な条件なら、変速も機敏でアウディの加速は極めて鋭い。そこでの主役は571psのV8エンジン。0-100km/h加速3.9秒でこなす、信じられなほどのパフォーマンスを見せつける。
滑らかなトルクコンバーター式の8速ATとクワトロ・システムが、最上級の高速クルージング時だけでなく、瞬発力の面でも重要な役割を果たしている。加えてスピーカーからはリアルな合成サウンドが聞こえてくるから、ドライバーを夢中にさせる雰囲気を作り出してくれる。
安楽至極のコンフォート+モードであっても、細かなアクセル操作での滑らかさは変わらず、スポーツモードで走らせている時とは別の豊かさがある。都市部ではエコモードを選択することで、シリンダー・オンデマンド機能により4気筒エンジンとして走行も可能だ。
新しいS8で最も注目するべきところが、予測型アクティブ・サスペンションと、ダイナミック4輪ステアリング・システムの獲得で得られた機敏な身のこなし。これまでにないドライバーとのコミュニケーション力と、レスポンスを獲得している。
5mを超えるボディにも関わらず、条件を問わず正確性に優れ、S8を自信を持って操ることができる。カーブの続くような区間でも、活気のある自然な振る舞いが味わえ、これまでの大型のアウディには備わっていなかった性格を得た。
サスペンションは毎秒18回の細かさで減衰特性を変化させ、オートバイのようにコーナーでイン側に傾けるような姿勢制御も実現。新しいS8は常に落ち着きのある、滑らかな走りを披露する。直進性の良さも引き上げられ、高速走行時での安定性は秀逸だ。
走りも快適性も新次元のS8
4輪ステアリング・システムのおかげで、低速域での回転半径を抑えることができており、込み入った都市部での運転や駐車時で威力を発揮する。地形に対する乗り心地も改善を受けているが、うねりや鋭い凹凸に対する処理はまだ完璧ではない。
S8が従来から備えてきたのは、所有することへの満足感の高さだった。反面、運転を積極的に楽しみたいドライバーにとって、本当に優れたクルマに匹敵する一体感や操縦性の良さを備えていなかったところが課題だった。
それに対し、これまではアウディも真剣に取り組んでこなかったように思う。アウトバーンでの圧倒的な直線スピードは備えていても、一般道へ降りると今ひとつ、ということが通例だった。
ところが新しいS8は異なる。従来のS8らしい静的な質感に加えて、ダイナミクス性能も新次元と呼べるまでに引き上げてきた。ドライバーとS8とが、新しいレベルでつながることができる。
さらに先進的なサスペンションが、快適性の面でもアウディのフラッグシップとしての新次元を打ち立てている。これほどの説得力を備えた、季節を問わない万能サルーンは、滅多にお目にかかれない。
アウディS8のスペック
価格:未定
全長:5172mm(A8)
全幅:1945mm(A8)
全高:1473mm(A8)
最高速度:249km/h(リミッター)
0-100km/h加速:3.9秒
燃費:-
CO2排出量:-
乾燥重量:2230kg
パワートレイン:V型8気筒3993ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:571ps/6000rpm
最大トルク:81.4kg-m/2000-4500rpm
ギアボックス:8速オートマティック
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