1980年代、「クロカン」ブームを支えた4WDが、各自動車メーカーから続々と発売された。この連載企画では、今でいうSUVとは、ひと味もふた味も異なる「泥臭さやワイルドさ」を前面に押し出したクロカン4WDを紹介する。第16弾は3代目「 日産 サファリ(Y61)」だ。
最大のライバル「ランクル80」に対抗したエクステリア
1987年、威風堂々としたスクエアボディで2代目サファリが登場した。それから2年後の1989年、これまでのオフロード車のスタイルをガラリと変え、丸みを帯びたボディに高級車然とした「ランドクルーザー80」が登場した。当時、この2台が中心となってクロカン市場を牽引してきたが、デザイン的に古さが目立つ2代目サファリは不利な立場に立たされていた。
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そこで日産は1997年に、3代目「サファリ(Y61)」を投入して反撃を開始した。角ばったボディラインは曲線を多用したシルエットに一新され、日産車特有のスラントタイプのグリルと異形ヘッドライトを組み合わせて個性的なフェイスを作り上げた。ボディは7人乗り4ドアロングと、5人乗り2ドアハードトップを設定した。
ロングボディにはガソリンの4478cc直6エンジンの「TB45E型(最高出力200ps/最大トルク35.5kgm)」とディーゼルの4169cc直6のTD42T型(最高出力160ps/最大トルク33.7kgm)、2ドアにはディーゼルターボの2825cc直6のRD28ETi型(最高出力135ps/最大トルク26.6kgm)を搭載した。
1999年、2ドアのエンジンは2953cc直4インタークーラー付ディーゼルターボ「ZD30DDTi型(最高出力170ps/最大トルク37.0kgm)」に換装された。
フラッグシップクロカンにふさわしい静粛性を実現
Y61はインテリアや快適装備も高級感漂う作りを見せた。インパネも随所に曲線をあしらい、視認性も確実だった。また全グレードに運転席・助手席エアバッグ、ABSを装備した。静粛性も素晴らしく、とくにガソリン車はオフロードを走行中でもバタバタしたノイズを感じることもなく、ジェントルな走りを実現した。
サスペンションスタイルはリジッド形式を継承。ラダーフレームと前後コイルサス、パートタイム4WDなどは車格に応じたリセッティングはあったものの、オフロード性能を左右するレイアウト構造に大きな変更がされなかったのは、サファリストにとって安心材料だった。また、最小回転半径が6.7mから6.1mと小回り性能を大幅にアップした利点も大きい。
さらに、機械式から電装式に変更したスタビライザー解除装置、デフロックの選択、大径タイヤを許容するタイヤハウス、215mmを誇る最低地上高、どこまでも路面を追従するしなやかなサス設定などなど…。マニアをワクワクさせる機能を満載していた。
一時的に販売を停止して3カ月後に再登場
クルマとしてはとても優れていたが、それが販売台数に結びつかなかった。そこで2002年8月に国内販売をいったん停止して、同年11月にビッグマイナーチェンジを実施し「スーパーサファリ」として再登場した。
さらにショートボディとディーゼルエンジンを廃止し、ロングボディにガソリンエンジンを搭載したワングレードとした。その分、サファリが培ったあらゆる性能をグッと凝縮した「完全体」としたのだ。
このとき搭載した新エンジン「TB48DE型」は、最高出力254ps/最大トルク40.8kgmと大幅にパワーアップした。さらにシーマに搭載されていた5速ATとの相性も抜群で、トルクフルな悪路走行からオンロードでのスポーツ走行まで、ストレスフリーなパフォーマンスを披露した。しかし、2007年をもってサファリは国内市場から撤退した。
今でも「パトロール サファリ」として海外で販売
サファリはもともとオーストラリアや中東向けに開発されたクルマだ。2010年には中東向けにY62型を開発し、「パトロール」という名で販売を開始した。また北米でも「アルマーダ」として2016年からライアンアップされている。
「もはやY61サファリは過去のモデル」と思うのも当然だが、じつは現在でも、そのままの姿で中東地域で「パトロール サファリ」として販売されている。つまりY61サファリは、今でも高い完成度を誇っているという証だろう。
1950年に誕生してから2020年で70年も経過した「サファリ=パトロール」は、他のモデルから派生したわけでもなく、クロカン4WDという方向性を貫いてきた。まっすぐな1本道をひた進んできたその姿は、機能美に溢れている。事実、走破性の高さは、カタログの数値だけでなく世界中のオフローダーを実力で納得させ続けている。ちなみに当時のライバル、ランドクルーザー100のカタログには「TOP of SUV」と書いてあった。
一方スーパーサファリは「KING of OFFROADER」というキャッチフレーズだった。「トップ」と「キング」の国内戦いに終止符は打たれたが、どちらも世界中の道を今も走り続けている。今後もいい意味でのライバル戦を見続けていきたいものだ。
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