ポルシェと共同開発されたPPE
アウディ最新のバッテリーEV、Q6 e-トロンで真っ先に触れるべきことが、PPEと呼ばれるプラットフォームだ。完全な新設計で、プレミアム・プラットフォーム・エレクトリックの略となる。
【画像】優秀なシャシーを味わえる388ps! アウディQ6 e-トロン・クワトロ 同クラスの電動SUVたち 全168枚
2021年のアウディQ4 e-トロン以来となる新モデルへ向けて、ポルシェと共同開発されている。電動のマカンと共有するだけでなく、間もなく登場するアウディA6 e‐トロンなど、多くのモデルの基礎骨格をなしていく。
PPEは、フォルクスワーゲン・グループのMEBプラットフォームの兄弟ともいえる。だが技術的な水準はより高く、高級志向のモデルに展開される。
電動パワートレインは、電圧800Vで制御。駆動用モーターも新アイテムで、全長を伸ばしパワーを高めつつ、コイルの高密度化やダイレクト油冷技術、材料の最適化などで、電費の向上が図られている。
このQ6 e-トロンは、数字の大きさが示すとおり、Q8とQ4の間に収まるSUVだ。ちなみに今後、アウディは内燃エンジンを積むモデルに奇数を、電気モーターで走るモデルに偶数を与えるという。Q6は、従来のQ5の電動版と考えて良い。
シングルフレームグリルは継承 特徴は新しい
1番ベーシックな仕様は、シングルモーターの後輪駆動。クワトロとSQ6では、ツインモーターの四輪駆動となる。リア側は永久磁石同期ユニットで、フロント側は空転時のロスが小さい非同期誘導ユニットが用いられる。
駆動用バッテリーの容量は、エントリーグレードのスポーツで75.8kWh。スポーツ・パフォーマンスとクワトロ、SQ6では94.9kWhへ増量される。バッテリーは、180本の角柱セルで1モジュールが構成され、後者の容量では12モジュールが載るそうだ。
英国仕様のサスペンションは、通常はコイルスプリング。だが試乗車のローンチエディションには、エアスプリングが組まれていた。車高は28mm低いが、オフロード・モードを選択すると45mm高くできる。
ボディはシングルフレーム・グリルを継承しつつ、スタイリングの特徴は新しい。エンジンを冷やす必要がないためグリルに穴はなく、ボディカラーと同色で塗装。ヘッドライトは上下2段に分かれ、テールライトは細いバーで左右が結ばれる。
従来のようにシャープな印象はないが、ホイールアーチのキャラクターラインは、1980年代のアウディ・クワトロを想起させる意味がある。サイドのブラックトリムは、バッテリーの位置を表現したという。
ワイドな2連モニター 光沢の強いパネル多し
インテリアデザインにも、新しい方向性を感じる。実際に押せるハードスイッチはほぼなく、Q8 e-トロンにあった、下部のタッチモニターは省かれた。
シンプルなダッシュボード上には11.9インチのメーター用と、14.5インチのインフォテインメント用の、2連モニターが並ぶ。これをアウディは、MMIパノラマディスプレイと名付けた。オプションで、助手席側にもモニターを追加できる。
内装には光沢の強いパネルが多く、アウディらしい高級感は乏しいかもしれない。特にセンターコンソール上には、ドライブモードやスタビリティ・コントロール、スタート/ストップなどのスイッチが並び、指紋が残りやすい。
車内の広さは、このクラスの平均。後席側のゆとりでは、全長の長いメルセデス・ベンツEQE SUVの方が有利だ。
インフォテインメント・システムは、従来のMMIが稼働。タッチモニター下部にエアコン用アイコンが並び、ショートカットキーも用意されている。アップル・カープレイやアンドロイド・オートの利用時も、これらは消えないから操作性は良い。
タッチモニターの反応は良好。メニュー構造もわかりやすい。一部の操作は、タップの回数が多すぎると感じたが。
純正ナビは、グーグルの技術を利用し使いやすい。ただし、常に衛星写真の画像が用いられる仕様で、走行中は見にくく感じた。任意に代替ルートを選ぶこともできない。
388psでも不満ないパワー感 滑らかな回生ブレーキ
ポルシェはタイカンの発表時に、高い性能を何度も発揮できると主張した。この強みは、共同開発のPPEでも受け継がれている。アウディのQ6 e-トロンでも、駆動用バッテリーが残量10%へ減っていても、0-100km/h加速はカタログ値を上回ってみせた。
静止状態からの全力ダッシュ時は、ドライブトレインからノイズが響き、力強さを聴覚的に高める。一方で、通常は殆ど無音で仕事を続ける。
試乗したツインモーターのクワトロの場合、呆れるほどの剛腕ではないものの、合理的な上級・電動SUVとして、まったく不満ないパワー感。388psで良いと思わせる。洗練されたフィーリングが、大きな特長だろう。
回生ブレーキは効きが滑らかで、ステアリングホイール裏のパドルで調整可能。ワンペダルドライブも選べる。周囲の状況へ自動的に調整される、アダプティブ・モードもある。
着座位置は意外なほど低く、運転席へ座ると、背が高めのステーションワゴンに乗ったような気分になる。ウエストラインが高いことも、影響しているはず。これと短めのボンネットが相まって、実際以上にボディは大きく感じられる。
その結果、公道では若干取り回ししにくい。座面を高めにすると、そんな印象は改善される。シートの調整域などは広く、運転姿勢は至って快適だ。
ステアリングは、コンフォート・モード時は少し軽すぎる。直進状態を保つのにも、気を使うほど。ダイナミック・モードなら、ダイレクト感が高まる。
後ろから押し出される感覚が楽しい
ボディサイズとステアリングに慣れれば、シャシーの優秀ぶりが見えてくる。カーブでは車重を感じるものの、グリップ力が高く反応は機敏だ。
負荷が高まるほど、ステアリングホイールへ伝わる路面の感触が増していく。脱出加速時は、リアアクスル主体のパワーバランスが明確。後ろから押し出される感覚が楽しい。
試乗車は21インチ・ホイールを履いていたが、アスファルトの剥がれた穴などを、驚くほどエアスプリングは吸収していた。ただし細かな凹凸はなだめきれず、乗員の頭が揺さぶられることもある。
他メーカーより高い接地感は、アウディの技術者が狙った設定。全般的に、乗り心地は素晴らしい。
アダプティブ・クルーズコントロールは、フォルクスワーゲン・グループのモデルに共通するが、かなり優秀。車線維持支援システムも同様だ。もし不要なら、センターコンソール上のスイッチとタッチモニターからオフにできる。
メーター用モニターに表示される、運転支援システムの情報は少し目障り。もっと有用な情報を映せるのではないだろうか。
強い印象を残す上質な走り 充分な訴求力
試乗車はクワトロのローンチエディションで、英国価格は8万6440ポンド(約1677万円)。レクサスRZより、僅かに高いだけといえる。電動のポルシェ・マカン4や、マセラティ・グレカーレ・フォルゴーレより、だいぶお手頃だ。
電費は今回の平均で4.6km/kWhと、RZより若干良い。急速充電は、最大270kWへ対応するが、試した限り200kW前後が現実的な速さな様子。
まったく新しい、Q6 e-トロン。当たり障りのないスタイリングだと、受け止める人はいるだろう。従来までの、ソリッドで高品質なインテリアの雰囲気も薄れている。それでも、PPEが叶える上質な走りが強い印象を残す。
操縦性の良さは、特筆すべきもの。エアサスが叶える乗り心地も素晴らしい。アウディらしさは薄れたかもしれないが、望ましい訴求力を発揮しそうだ。
◯:完成度の高いインフォテインメント・システム エアサスの乗り心地
△:高めの価格 事実上、SQ6はQ6の上級グレードになったこと
アウディQ6 e-トロン・クワトロ・ローンチエディション(英国仕様)のスペック
英国価格:8万6440ポンド(約1677万円)
全長:4771mm
全幅:1939mm
全高:1648mm
最高速度:209km/h
0-100km/h加速:5.9秒
航続距離:613km
電費:4.6km/kWh(実測)
CO2排出量:−
車両重量:2325kg
パワートレイン:非同期モーター(前)+永久磁石同期モーター(後)
駆動用バッテリー:94.9kWh
急速充電能力:270kW
最高出力:388ps(システム総合)
最大トルク:59.0kg-m(システム総合)
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)
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みんなのコメント
EVは欧州がお手上げやん。