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ポールスター訪問 CEOトーマス・インゲンラートに聞く、苦悩と未来

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ポールスター訪問 CEOトーマス・インゲンラートに聞く、苦悩と未来

もくじ

ー デザイナーが率いる企業
ー 立ちはだかった、ふたつの壁
ー ポールスター1/2/3について
ー ボルボとポールスターは「家族」
ー ポールスターに影響したボルボ5台

いくつ知ってる? ほとんど車名がでてこないだろう55台のマイナー車 前編

デザイナーが率いる企業

ボルボがもう二度とやらないであろう事業をこの20年にわたって行ってきたブランド、ポールスターは、ヨーテボリの新しい「電動高性能車ブランド」に生まれ変わり、新鮮な雰囲気を発しながら前へ進もうとしている。

ことによるとそれは、空を眺めるようなその名前の本質がなすことなのかもしれないし、ドイツを中心にヨーロッパ大陸の高級車メーカーに蔓延するカネに突き動かされた狂気のパワー合戦とは距離を置くことに成功したボルボとの協力関係を最近根本的に見直したことでなされるのかもしれない。

そのことはまた、トーマス・インゲンラートが野心的な新CEOとしてポールスターの運命をこの6カ月間導いてきたことにも現れる。

彼はこの5年間ボルボのデザイン責任者としてヨーテボリの最新モデルを今日的に美しく仕立て上げてきた。デザイナーが必ずしも経営管理に長けるわけではないが、インゲンラートはその例外になろうとしている。

本質的な魅力の鍵となる理由がどうであろうと、ポールスターには驚愕と論理性を巧みに融合させた魅力的な未来が待っている。

この会社の戦略をより理解するために、われわれはボルボの広大なヨーテボリ工場の中にあるインゲンラートのデザイン工房を訪れる旅に出た。

立ちはだかった、ふたつの壁

そこではポールスター1が今や生産準備を終え(そして2019年の発売に向けて中国工場の完成を待つ)ポールスター2と3もほぼ出来上がっている。挑戦に立ち向かうべく準備は着々と進んでいるのだ。

ポールスターは顧客に主としてネット上で接しようとしている。クルマは3D画像で見られるし、わざわざ通常のショールームまで足を運ぶこともないのだ。

ポールスター1はボルボのコンセプト・クーペとして2013年末に生を受け、今日ボルボの大型車種に応用されているSPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)の柔軟性を示すために造られた美しい2+2ボディをまとっていた。

市場の反応は良かったが、問題があった。これをふつうのボルボと同じように売るわけにはいかない。販売数に対してコストが高すぎるのだ。さらに……。

「製品の立ち位置を定めるのにほぼ2年を費やしました」インゲンラートは語る。

「ポールスター1がまだコンセプト・クーペだったときは、多くの注目を集めました。これを本当に造るのか関心は高かったのですが、通常のボルボと同じようには行かないことは明らかでした」

「単に採算ベースの問題だけではありません。デザイン面でもボルボからあまりにかけ離れていましたし、このプロポーションはGTの範疇にこそ相応しいと思っていたのです」

「このコンセプト・クーペはポールスター事業全体に拍車をかけ、ボルボの高性能電気自動車ブランドとして育てていく後押しとなりました。(ポールスターは)新鮮な名前だし、多くの言語に通りがよく、ボルボのみに関わりますがより明確な使命を担います。ヨーテボリはこの会社を手に入れ、有難いことにブランドを再構築してくれました」

「そしてコンセプト・クーペをさらに新しく、鉄よりも軽く強いカーボンファイバー・ボディでの再設計を始めました。同時に、ハイブリッドの動力系統もより高いレベルで新開発されました」

ポールスター1/2/3について

後に続くモデルが完全なバッテリー駆動の電気自動車になるのに対して、ポールスター1は2019年のデビュー時は「モーター『も』付く」という説明に甘んじることになる。

600psのパワートレイン(379psの2.0ℓ4気筒ツインチャージドガソリンエンジンで前輪を駆動、各111psのモーター2基で後輪を駆動)を持ち、床下には電気のみで145kmの航続距離を誇る大型バッテリーを収める。

オーリンズの連続可変電子制御サスペンションを世界初採用し、他にも多くの進んだ特徴を持つ。それはなお、インゲンラートのビジネス計画が手作りの年産500台で最低15万ユーロ(2010万円)の価格を想定するからである。

「ポールスター1はまさに周りに光を放つ製品です」インゲンラートは言う。「より多くの顧客を引きつける安価な車種が必要なのと同じく、われわれは未来のためにそれを必要としています」

それがポールスター2/3が1に比べて安価で新奇性も抑えられる理由であり、ボルボ既存の走行装置を活用して別の顧客層に訴えることを明らかにしている。

ポールスター2はテスラ待望のモデル3に挑戦するべく2019年の生産を目指す中級ハッチバックEVとだけ明かされている。ポールスター3はより大型のSUVである。

インゲンラートは第2第3のモデルについてはまだ詳しくは語らないが、ボルボの内装デザインを用いつつ既存の製品ラインとは別物となることは明言する。

それらは「ポールスター特別の形」を持つと彼は言い、現代のポールスター車は往年の(フェラーリ250GTブレッドバンをも想わせる形の)1800ESクーペの現代的な再構築となるだろうとたやすく認めた。

ボルボとポールスターは「家族」

ポールスターが安価に目標に到達する唯一の手段として、新しいデザインのクルマにボルボのコンポーネントを適切に流用することについては「何も隠すことはない」とインゲンラートはいう。

「われわれは家族です。だから共有する価値観もあります。一定の製造品質と実用性、そして安全性。ポールスターだからといって安全を犠牲にはしません」

このご時世、ポールスターの限られた研究資金をどこに注ぐかを賢明に定めるのが本当の経営能力になってくるとインゲンラートは言う。

彼はポールスターの生産を3台あわせて「5年で5万台前後」と目論み、それまでにさらなる拡充をと考えている。ボルボとホワイトボディを共有することはないにせよ、ボルボのチューニング車を造る権利はまだあるのだ。

もっとも彼によると「そういうのも好きですが、それはあくまでボルボです」

他に似たところと言うと? 両ブランドとも、うまく象徴とした現行の「トール・ハンマー」型ヘッドライトの意匠は利用するだろう。全体形を作る方法は互いに異なるが関係性は見てとれるものになると、インゲンラートは約束する。

インタビューの時間が尽きた。インゲンラートは今や厳しい仕事をふたつも抱え、それらをうまくこなさねばならないのは明白だ。にもかかわらず、夜はちゃんと眠れるのかというわたしの心配を彼は涼しい顔ではね除け、わけもなく語った。

「こういう所では、自分だけで仕事をしてはいけないのです。良いひとに恵まれています。それこそが、事がうまく運ぶ理由なのです」

ポールスターに影響したボルボ5台

ポールスターの最高経営責任者トーマス・インゲンラートは、将来は既存の枠にはまらない「ファストバックや、ハッチバックや、あらゆるバックの」クルマを造ると語る。

こちらは、ボルボが過去に同じ路線で造った成功作と、ちょっとそうとは言いづらいクルマの一部である。

ボルボP1800(1961~1973)

タフで、快適で優しく記憶に残るこのクーペは素晴らしく流麗な2ドアボディにセダンのエンジンと走行装置を組み合わされ、12年間生産された。

ドラマ「セイント 天国野郎」でロジャー・ムーアが乗って演じたことで有名になった。

ボルボ1800ES(1972~1973)

リライアント・シミターGTEのような「ブレッドバン型」クーペの成功に刺激され、ボルボはP1800に目を引くガラスハッチを付け加えた。しかしアメリカの安全基準が厳しくなると、それに見合った対策にコストをかけるのを諦めた。

ボルボ262C(1978~1980)

フォード・リンカーンの高出力エグゼクティブカーがスウェーデンに上陸するや、ボルボはベルトーネにこの奇妙な外観の、260セダンの基本構造を流用したアメリカ市場向けクーペの生産を委託した。販売台数は約6600台だった。

ボルボ480(1986~1995)

このこざっぱりしたデザインのクーペ・エステートは9年間も生産されたが、見た目以上に広い居住空間を主な理由にアメリカで、あるいはリトラクタブル・ヘッドライトを好むひとびとの間で支持を得た。ボルボの例に漏れず頑丈な1台で、DAFから引き継いだオランダのネッドカー工場で生産された。

ボルボC30(2006~2013)

フォード傘下時代のボルボに、フォーカスをベースにしたベルギー製クーペ・エステートがポンと現れた。小粋で、乗っても良かったが、安価とは言い難い上に強力なライバル陣がいたからだろう、売れたとは言い難かった。

このクーペ・エステートのボディにはボルボの50年にわたる関心が現れている。

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