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レヴォーグ1000km実走行から見えてきた「レガシィツーリングワゴンの継承者たる理由」と30年後の名車足り得るのか?

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レヴォーグ1000km実走行から見えてきた「レガシィツーリングワゴンの継承者たる理由」と30年後の名車足り得るのか?

 スバルはひとつのプラットフォームでさまざまな車種を作り分けるメーカーだ。SUV全盛の今、日本では孤高の存在となっているのがステーションワゴンの「レヴォーグ」だ。

 古くは「レガシィツーリングワゴン」としてワゴン界を席巻した偉大なモデルを伝承したレヴォーグの今の実力はいかに? 今回は長距離ドライブから見えてきたレヴォーグの「強み」と「弱み」を徹底検証してみる

レヴォーグ1000km実走行から見えてきた「レガシィツーリングワゴンの継承者たる理由」と30年後の名車足り得るのか?

文/井元康一郎、写真/ベストカー編集部、スバル

■実際にレヴォーグで1000km走行した結果から見えたもの

 SUVがブームの陰で世界的に退潮が続いているステーションワゴンカテゴリー。日本市場ではミニバンなどトール型のクルマで代用できるためか、特にその傾向が顕著で、低車高型のステーションワゴンはもはや絶滅危惧種だ。

 そのなかで踏ん張っているのはステーションワゴンでブランドイメージを築いてきた歴史を持つスバル。小メーカーながらグローバルCセグクラスのレヴォーグ、同ミッドサイズのクロスオーバーモデルであるレガシィアウトバックと、高価格帯にふたつのモデルを揃えている。

 なかでもレヴォーグは路面から車体までの最小距離、いわゆるロードクリアランスが一般の乗用車並の140~145mmしかないオフロード要素ゼロ、生粋のステーションワゴンである。

 そのレヴォーグを1000kmほどテストドライブし、クルマのパフォーマンスを確かめるとともにスバルのブランド作りの意図も探ってみた。

■試乗車は1.8Lターボエンジン搭載の上級グレード「STI EX」

2020年末に登場した2代目レヴォーグ。先代のよさを継承しつつプラットフォームからエンジンまですべてを刷新して登場。日本におけるスバル車のフラッグシップモデルとしての重責を担う

 では、まずインプレッションからお伝えしよう。ドライブを通じて最も印象的だったのは、居住空間のゆとりと広大な荷室を両立させた実用性の高さだった。

 スバルのワゴンといえば、サスペンションチューニングのよさやAWD(4輪駆動)の制御が生む走行性能、水平対向ターボエンジンのパワーなどが思い浮かぶことだろう。

 そういった特色は現行レヴォーグももちろん持ち合わせているが、それはあくまで長距離ドライブをよりよくこなすためのアシスト役だ。準天頂衛星を用いて高精度な誘導機能を提供する新技術「アイサイトX」もしかり。

■スタイリッシュながら実用性も両立するスバル渾身の力作が「レヴォーグ」

 近年のステーションワゴンはセダンと同様、SUVとの違いを強調するため実用性を削ってスタイリッシュさを優先させることが多くなっているが、レヴォーグはそういうトレンドとは一線を画している。

 実用性を重んじる、もっと言えばスタイリッシュになろうとしても実用から離れられない土臭さは昭和の「レオーネ」時代から捨てられないスバルのDNA。クルマの未来が見通せないこの難しい時代に退潮著しいステーションワゴンの専用モデルを作ったということを含め、スバルらしさを懸命に維持しようとして作ったクルマがレヴォーグと言える。

 要素別にもう少し細かく見ていこう。走りについては基本的に非常によく作り込まれている。何がいいかというと、絶対性能もさることながら走っている最中に違和感を感じることががほとんどない点だ。

■低重心パッケージだけでないトータルバランスで秀でるレヴォーグの走り

 走っている時の違和感というのは、例えばコーナーでステアリングを切り込んでいった時に思ったより強い横Gを感じた、あるいはGがかかる方向が予想と異なっていた、氷結路で気が付かないうちにアンダーステアが強まっていたなどなど、期待値と体感のズレのことで、レヴォーグはそれがきわめて小さく抑えられていた。

 自動車工学が発達した今日においてはスペックの高いクルマを作るのは昔ほど難しくなく、違いはメーカー間の実力差よりはどのくらいの性能目標にするか、どのくらいのコストをかけるかという思想、判断によるところのほうが大きい。

 そんななかで、なかなかままならないのが人間がどう感じるかということ。クルマの動きやインフォメーションがドライバーの予想と一致することは機械的スペック以上に大事なことで、それがよくないと体に余計な力が入ったり、神経を使ったりの繰り返しで疲労の蓄積が大きくなる。

■ロングドライブでもドライバーもパッセンジャーも疲れ知らずな快適な移動空間を実現!!

 この点はメーカー、モデルによってけっこう差があるのだが、レヴォーグは欧州Cセグメントに相当するモデルとしてはトップランナー級でワントリップ1000km程度のツーリングではストレスの感じようもないというくらい。

 操縦フィールはアグレッシブな感じではないが、思いどおりにクルマが動くため安心感が高く、それがドライビングプレジャーの高さにもつながっているという印象だった。

 そして前述の居住性とステーションワゴンとしての使い勝手の両立である。まずもって後席が非常に広い。旧型もそこそこゆとりがあるほうだったのだが、座ってみた瞬間に違いがわかるくらいだ。

 同クラスの低車高モデルで後席のレッグルームに余裕があることが印象に残っているモデルにホンダのセダン、インサイトがあったが、それに匹敵する居住感の高さだった。

■ステーションワゴンの「基本」荷室も充分なうえ、非常に使いやすい

長年ワゴン車を作り続けてきたノウハウはここにも活きる! 広さだけでなくサスペンションの張り出しや開口部の広さまで実用性にとことんこだわったレヴォーグのラゲッジスペース

 荷室はどうかというと、一見それほど広い感じはしない。実際、ボード上の荷室容量は492Lと、欧州の同格ワゴンに比べると見劣りする。が、実際の使い勝手のよさはその数値から受ける想像をはるかに凌駕する。

 容量が少ない要因は奥ゆきが1mをゆうに超えるため、長尺物も簡単に積み込めることだ。荷室がスクエアにデザインされているのも真面目な部分で、ピッチリと整理して荷物を積み込めばデッドスペースが少なくてすむ。実質的に使えるスペースはかなり大きいと感じられた。

 ラゲッジスペースのボード下には別にサブトランクがあるが、これの収容力もかなりのもの。テスト車両には果実の出荷箱くらいのサイズのツールボックスや雪道脱出ラダーなどがすっぽり入っていた。

 もともとはスペアタイヤを収納する場所なのだが、見たところ細いテンパータイヤではなくフルサイズのタイヤが入りそうな深さ。それが効を奏したという感があった。

 走り、居住性、ユーティリティと、長距離ステーションワゴンとして実に生真面目に作られているレヴォーグ。俗にスバリストと呼ばれるコアなファン層には大いに響くことだろう。またモデル数の減少で発生している「ステーションワゴン難民」も吸引できそうだ。

 が、ステーションワゴンを再び自動車マーケットのスターダムにのし上げ、スバルのブランドイメージを強固なものにできるかという観点ではいささか弱いように思えた。

■ネックは燃費⁉ 自慢の新開発エンジンの「よさ」をなかなか引き出せない

スバル新世代エンジン「CB18」。世界最高ランクの燃焼効率(40%)を実現したエンジンだけに燃費向上を期待したが、車重や4輪駆動などがエンジンのおいしいところをフルに活かせない状況に陥っているようだ

 最大の理由は燃費である。テストドライブ時の燃費は実測15.1km/L。おおまかに市街地200km、高速300km、平坦な郊外路300km、若干の圧雪路と凍結路を含む山岳区間200kmを走行してのこのスコアをいいとみるか悪いとみるかは人によるだろうが、先代型レヴォーグの1.6Lターボに対して実測燃費で差を付けられなかったのはいただけない。

 普通なら少々の燃費差など気持ちの問題ということですますのもありなのだが、ステーションワゴンの復権というファクターを思うとそうはいかない。SUVに比べて車高が低く、空気抵抗が小さいというステーションワゴンのメリットを数字で裏付ける必要があったのだ。

 古いエンジンで頑張りましたというならまだわかるのだが、テスト車に搭載されていた1.8Lターボエンジンはレヴォーグがデビューという最新鋭モデル。ターボ過給でありながら低負荷時には希薄燃焼制御がなされ、スバルの技術陣がピーク熱効率40%と豪語していた。この40%という数字はすごいもので、非ハイブリッド用ガソリンエンジンとしては自然吸気を含め世界最高峰レベルだ。

■さまざまなシーンをこなしてもよくも悪くも「安定」、環境面はもうひと頑張りを期待!!

 ところが、ドライブ序盤で早くもその数値のわりには燃費を思うように伸ばせないことがわかってきた。リーン領域もあるのだからエンジンの使い方次第でガーンと燃費を稼げなければおかしいと、スロットルペダルの踏み方を変えたり、CVTの疑似MTを使ってみたりと、ドライブ終盤まであれこれ工夫した。

 ワインディングのごく一部の区間を除いては子猫のようにおとなしい走りに終始して、この程度の燃費なのだ。普通に楽しんでいたら13km/L台だったろう。

 実際にはピーク熱効率が40%出ていないのか、熱効率の高い領域がピンポイントすぎてほとんど使えないのか、はたまたエンジンの熱効率は高くともCVTの伝達効率が低いのか理由は定かではないが、スバル渾身の最新鋭が泣くというのが正直な感想。

 スバルのクルマ作りは空力やAWDシステムなど理系マニア的な色彩が濃い。ストロングハイブリッドのような驚異的な燃費でなくとも「想像より断然すごい燃費。さすが新エンジン」と感心させるようでないと、旧来のスバルのブランドイメージを保つのも覚束ないだろう。

■SUV全盛のなか、ワゴンのよさを極めつつさらなる飛躍をして欲しい!!

 走りの面では低車高、低重心の特徴を充分に生かしているレヴォーグ。だが、CO2低減や燃料価格高騰などの圧力が日に日に高まっている今日の世相を考えると、走りや利便性だけに頼っていてはニッチマーケットを通り越して本物のマイノリティになってしまう。

 この1.8Lターボエンジン搭載車はトラブル続きで4月26日現在は対策のため、レヴォーグ以外にフォレスターとレガシィアウトバックも出荷停止中だ。出荷再開までは2カ月半かかるとみられている。

 実用的設計や走りのチューニングと同じようにエンジン開発に情熱を注ぎ、モデルライフ途中でガッチリ改良して素晴らしいエンジンに仕立ててほしい。それができればSUVでなくステーションワゴンに乗る意味をもっと多くのユーザーが見い出すようになるだろうし、レヴォーグの販売が好調に推移すれば他社もグローバルコンパクトクラスのワゴンもまだまだイケるのかと競合モデルを出すというサイクルが生まれないともかぎらない。

 スバルは業績低迷で苦境に立たされているが、ステーションワゴンの老舗として今一度、意地を見せていただきたいものである。

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みんなのコメント

24件
  • もうちょいデザインがスマートやったらレガシィの流れって感じやけど、さすがに今のやつはゴツすぎん?
  • 1000キロ走る前にEGRセンサーを交換しましょう。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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